『ゴジラ-0.0』世界同時期公開の舞台裏──製作・宣伝・海外展開の担当者が語る

『ゴジラ-0.0』世界同時期公開の舞台裏──製作・宣伝・海外展開の担当者が語る

2026年11月04日

2026年11月3日、『ゴジラ-0.0』が日本で公開。そしてほぼ時を同じくして、世界約100カ国のスクリーンにも──!
邦画を海外公開する場合、字幕制作に時間を要するうえ、国ごとで競合作品の公開スケジュールが異なるため、日本より数カ月遅れて公開されるのが一般的。その常識を、今、『ゴジラ-0.0』が踏み越えようとしています。「日本映画が世界で当たり前のように選ばれる時代をつくる」という決意のもと、部門も国境も越えた東宝グループの社員がワンチームとなり、前例のない挑戦に向き合っています。
彼らは、地図にない道をどう切り開いてきたのか。製作の指揮を執るプロデューサーの岸田一晃さん、宣伝担当の林原祥一さん、海外展開を担う亀井玲雅さんが、その舞台裏と東宝グループで働くやりがいを語ります。

『ゴジラ-0.0』に携わる3人。左から、海外展開担当の亀井 玲雅さん(TOHO Global)、プロデューサーの岸田 一晃さん(東宝)、宣伝担当の林原 祥一さん(東宝)

すべてが想定外! 『ゴジラ-1.0』が開いた世界への扉

――前作『ゴジラ-1.0』(2023)が世界的な大ヒット。2024年には第96回アカデミー賞®視覚効果賞を受賞しましたね。この歴史的な快挙を、当事者である皆さんはどう受け止めていましたか?

岸田:「まさか、あそこまでいくとは……!」というのが正直なところです。国内での反響に加え、アメリカやメキシコ、ヨーロッパでの支持は予想をはるかに超えていました。

亀井:実写邦画の興行が海外のさまざまな地域で成功した例は少なく、当初は、厳しい戦いになるだろうと思っていました。それが、いざ北米公開してみると目標を2日ほどで達成し、公開の2週間後には「オスカーのロングリスト(一次選考の約20作品)に残っている」と連絡がきました。ですが、実写邦画のVFX(視覚効果)でオスカーにチャレンジした経験者が周囲におらず……。出品申請のルールブックを読み込むところからのスタートでしたね(笑)。

林原:昭和から続いてきたゴジラの流れを『シン・ゴジラ』(2016)が変え、次の『ゴジラ-1.0』がまた歴史を塗り替えた。オスカーまで獲ったことで、ゴジラの位置づけも、東宝の歴史も大きく変わったと感じます。

「いけるのか……? いっちゃえ!」 前例なき世界同時期公開へ

――『ゴジラ-1.0』に続く今回の『ゴジラ-0.0』は、世界同時期公開ですね。

岸田:東宝としても前例のない取り組みです。通常、邦画はまず国内で公開し、その評価や反響を踏まえて海外展開します。対して今回は、企画段階から海外展開を決めていました。本当は11月3日の「ゴジラの日」に全世界同時公開を狙っていたのですが、新作を公開する曜日が国ごとに違うため、日本公開から1週間内に各国で公開することにしました。各国の映画の文化・慣習においても初めて知ることが多かったです。

世界同時期公開を前提とする場合、製作にはどのような作業が必要か。亀井さんをはじめとした海外チームにアドバイスを受けながら、撮影スケジュールを組んでいきました。すべてが初めての挑戦だったので、「本当にこれでいけるのだろうか……でも、いってしまおう!」と、自分たちを奮い立たせながら進めたことを覚えています。

また、今回は日本映画として初めて、高解像度の映画上映システムであるIMAXの「Filmed For IMAX」※認定作品として製作しています。撮影前から、海外展開を担うTOHO Globalのスタッフと一緒にIMAX社とやり取りをして、「こう撮るんだ」「こんなアイデアがある」などと話し合いながら進めました。現場で何をすべきかを海外チームと詰めてから撮影に臨むのも、初めての経験だったと思います。

IMAX社が認定したデジタルカメラなどを使い、1.43:1、1.90:1などの拡張画角での撮影を行う。企画段階からIMAXスクリーンでの上映を前提に制作・最適化する公式パートナーシップ・プログラム。

東宝株式会社 映画調整部 岸田 一晃 : 2013年、東宝入社。アシスタントプロデューサーとして『君の膵臓をたべたい』『アルキメデスの大戦』、企画・プロデュースとして『今夜、世界からこの恋が消えても』『ディア・ファミリー』などを担当。『ゴジラ-1.0』に続き、『ゴジラ-0.0』でも製作の指揮を執った。

「絶対に負けられない」 ハリウッドの主戦場、シネマコンへ

――世界同時期公開に向けて、どのようにプロジェクトを進めたのでしょうか。

岸田:撮影を進め、宣伝のフェーズが見えてきた2026年1月、宣伝部や営業部、ゴジラ部、さらにはTOHO Global(TG)、米州の地域統括会社であるToho International(TI)、北米配給を担うGKIDSといった東宝グループ各社・各部のスタッフが集結しました。以降、製作チームと宣伝チーム、TI・TG・GKIDSは毎週、国をまたいで国内外のプロモーションに向けた情報共有や議論を重ねていきました。

チームメンバーとは常々、「『ゴジラ-0.0』でしかできないことをやろう!」と話していました。
世界でヒットした『ゴジラ-1.0』の続編で失敗は許されないだろう、おこがましいかもしれないがこの後に続く日本映画に残せるものは何かということも考え、やれることは全部やらなければいけない。これはエンタテインメントの主戦場であるハリウッドで実写邦画が当たり前のように観客から選ばれるような、そんな状況をつくる二度とないチャンスであり、『ゴジラ-1.0』『ゴジラ-0.0』の「マイナス」シリーズの取り組みが点で終わることなく線でつながるように、絶対に負けられない戦いになるという共通認識がありました。

林原:前作にはなかったどんな大きな一手を打てるのかを考えた時に、最初の勝負どころになったのが、毎年春にラスベガスで開催される「CinemaCon」(シネマコン)でしたね。

岸田:シネマコンは、世界中の興行主が集まるBtoBのイベント。ハリウッドのそうそうたるスタジオがその年の注目作をプレゼンする、映画業界最大級のイベントです。今年、『ゴジラ-0.0』はそこでプレゼンの場をいただき、山崎貴監督がスピーチをするとともに、ファーストティザー映像を世界で初めて上映しました。

シネマコンの直後、日本で解禁された『ゴジラ-0.0』のビジュアル  © 2026 TOHO

林原:参加するにあたって頭を悩ませたのが、情報の出し方です。プロモーションは「生もの」なので、同じ情報でも、時期や表現の仕方で、受け取られ方がまったく違ってきます。長年ゴジラを支えてくださっている国内ファンにも届けつつ、世界規模の作品としても打ち出さなければいけない。どんな情報を、どこで、いつ出すのか──。

亀井:その悩みは、海外各地でも同じでした。シネマコンは北米で開かれるイベントなので、そこで大きな発表をしても、それだけで各国の興行に弾みがつくとは限りません。それぞれの国の配給チームから届く「こんな宣伝をしたい」という提案を、その地域の興行目標に照らして現地と話し合ったうえで、岸田さんに相談する。林原さんとも、「ここまでの情報は出すけど、ここからはまだやめておこう」などと、毎回議論しながら決めていきました。

岸田:それが今回は、同時期公開する約100カ国分あったわけです。タスクがとにかく多くて、ある日、林原さんが私のところに来て、「この仕事量、終わらないよな……」とボソッとつぶやいてきたこともありました(笑)。

林原:でも、未知の世界に挑むからこそ見えてくるものも多くあって。シネマコンでも、世界のメジャースタジオの発表を目の当たりにして、得がたい学びがありました。

東宝株式会社 宣伝部 林原 祥一 : 2010年、東宝入社。2012年より映画宣伝に携わり、劇場版『名探偵コナン』シリーズ、『8番出口』などの宣伝プロデューサーを務める。『ゴジラ-1.0』に続き、『ゴジラ-0.0』でも宣伝プロデュースを担当。

本音をぶつけ合った先に見えた、「日本らしさ」の価値

亀井:予告映像などのクリエイティブに関しても、国によって受け取り方が違うため、その調整や議論にはかなり時間をかけましたよね。

林原:メインの予告映像は当初、日本チームと、北米のGKIDSがまったく違うものをつくっていました。しかし、最終的には、GKIDSのみんなが日本チームのクリエイティブに賛同してくれることに。結果、日本のみならず世界で好評を博しました。ただ、そこに至るまでには「胸ぐらをつかみ合う」ではないですが(笑)、侃々諤々の議論がありました。

亀井:そうでしたね。でも、本音で議論を重ねられることは、チームとしてすごくいいと思っています。

岸田:前作は戦後日本を舞台にしたからこそ、海外では「ハリウッド映画にはない世界」として異彩を放つことができたので、今作も予告編から「ドメスティック」を追求しています。プロジェクトを進めるほどに、日本のゴジラの味は、世界に伝わるんだという実感が強まっています。

TOHO Global株式会社 コンテンツ戦略グループ 亀井 玲雅 : 2015年、東宝入社。IT部門、海外事業管理を経て、海外セールスの道へ。欧州・中東・アフリカ、アジア地域の担当を務めた後、『ゴジラ-1.0』では海外配給とアカデミー賞のキャンペーンを担った。現在はTOHO Globalに出向し、チームリーダーとして海外展開を推進。

若さ、スピード、圧倒的なコミュニケーションの量と質

――プロジェクトを進めるなかで、どんなところに東宝グループの「強み」を感じていますか?

岸田:圧倒的なコミュニケーションの量です。日頃からとにかくみんなで話しますし、情報共有も速い。例えばゴジラの商品開発一つ取っても、グッズ担当や国内外の宣伝担当など50人ほどがチャットツールを見て、年次に関係なくやりたいことやアイデアなど意見を出し合う。そのなかで私がジャッジをさせてもらう。だから私が疲れてミスすることがあっても、「岸田さん、それ違いますよ」なんてすぐに誰かが指摘してくれます(笑)。各分野の「文殊の知恵」が何十人分も集まっている感じです。本当に救われています。

亀井:海外チームでいえば、もともと取引のあったGKIDSや、英国で劇場配給を手がけるAnime Limitedが東宝グループに加わったことも大きいですね。同じグループの仲間として、現地で何をやりたいのか、なぜそれが必要なのかを、深いところまで話してくれるようになりました。その意図を岸田さんに伝えて相談すると、「やる・やらない」の二択ではなく、「ここは大事だから残そう。ほかの地域との兼ね合いで、ここだけ変えよう」と、一緒に落としどころを探れる。コミュニケーションの量だけでなく、質も格段に上がったと感じます。

林原:あとは、私たち3人も30代ですが、チームに若いメンバーが多いこと。若さゆえの勢いや、連携のスピード感があります。

岸田:さらに、プロデューサーとしてうれしいのは、各部門が高い目標を掲げてくれること。「大変になるよ」と言っても「やれることは全部やるんだ!」と返ってくる。だから困難があっても、みんなで助け合って前に進めるんです。タイアップ担当たちとは、とんでもない目標を最初に打ち立てて、山登りを始めました。

林原:前作の時からチームの全員で共有している「世界が待ってる」という合言葉も大きいですよね。撮影時からみんなが同じ認識を持っていたから、宣伝が始まった時も、前作を超えるには何をすべきかを全員で考えられました。

岸田:実は、その合言葉は撮影現場から生まれたものなんです。前作の制作時、音響チームが「世界が待ってる」と半紙に書いて、監督の前にこっそり貼っていました。その魂を今作にも引き継ぎたくて、今回は監督のディレクターズチェアの背もたれにその言葉を刻印して、撮影に臨みました。

© 2026 TOHO

70年以上続くバトンを手に、すべてを注いで駆け抜ける

――最後に、『ゴジラ-0.0』にかける思いや、観客の皆さんへのメッセージを聞かせてください。

亀井:「世界が待ってる」って、本当にいい言葉ですよね。チームのみんなが本気で成功を信じて、課題を乗り越え、誰も見たことのない景色に一緒にたどり着く。そんなプロジェクトに関われるのは、本当に楽しい。この『ゴジラ-0.0』のテンションを、今後の作品にもつないでいきたいと思っています。

林原:ゴジラという東宝の看板を背負って世界に仕掛けられるのは、責任重大であると同時に、非常にエキサイティングです。シネマコン、ドジャースタジアムでの始球式※、ニューヨーク映画祭への参加など、エンタテインメントの中心で走らせてもらっている感覚があって、宣伝マン冥利に尽きます。一人でも多くの皆さんに、『ゴジラ-0.0』を通して「東宝グループの本気」も感じていただけたらうれしいです。

岸田:ゴジラは70年以上にわたり、多くのつくり手たちがバトンをつないできた作品です。今、偶然そのバトンを手にしている私たちが、力のすべてを注いで駆け抜ける。それは、まさに東宝でしかできない仕事です。

『ゴジラ-1.0』『ゴジラ-0.0』の「マイナス」シリーズは、映画館で体感するべき映画としてつくってきました。家でもスマホでも楽しめる今だからこそ、映画館にこだわりたい。ぜひ世界中の皆さんに、映画館でその真髄に触れていただきたいです。

2026年9月24日(現地時間)、ロサンゼルス・ドジャースとのタッグ企画「Godzilla Minus Zero Night」をドジャースタジアムで開催。『ゴジラ-0.0』の主演を務める神木隆之介さんが、MLB史上初のマイナス表記の背番号「-0.0」をつけて、始球式に登板した。

© 2026 TOHO

『ゴジラ-0.0』の公式Webサイトを見る

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