「すずめの戸締まり」完成報告会見&完成披露試写会舞台挨拶

2022.10.25
  • 完成披露

完成報告会見&完成披露試写会舞台挨拶

「君の名は。」(2016年公開/主演:神木隆之介・上白石萌音)「天気の子」(2019年公開/主演:醍醐虎汰朗・森七菜)の新海誠監督の最新アニメーション映画「すずめの戸締まり」がついに完成しました。 10月25日に東京・有楽町の東京国際フォーラムにて完成報告会見、および完成披露試写会が開催され、新海誠監督、声優を務めた原菜乃華さん、松村北斗さん、染谷将太さん、伊藤沙莉さん、花瀬琴音さん、音楽を担当したRADWIMPSの野田洋次郎さん、同じく音楽を担当した陣内一真さんが出席しました。上映後、本作を観終えた会場のお客さんはスタンディングオベーションで新海監督らを迎え入れ、ヒロイン・鈴芽の声を担当した原さんが、感激のあまり声を詰まらせる一幕も! こちらのイベントの模様をレポートいたします。

【完成報告会見】

新海誠監督

原菜乃華さん

岩戸鈴芽役

松村北斗さん

宗像草太役

染谷将太さん

岡部稔役

伊藤沙莉さん

二ノ宮ルミ役

花瀬琴音さん

海部千果役

野田洋次郎さん(RADWIMPS)

音楽

陣内一真さん

音楽

新海監督

本日はお忙しいところ、足を運んでいただけてとても幸せです。楽しいお話がたくさんできればと思います。

原さん

私自身、昨日、完成した作品を観せていただいて、余韻に浸ったままここに立っている状態なんです。今日は短い時間ですが楽しんでいきたいです。

松村さん

僕も昨日、初号で観せていただきました。作品の持つ力でいまだに熱が抜けていません。ここで話さなくてはいけないので、一度落ち着かせてと思ったのですが、その熱が残っていることが心地よい作品なので、そういう作品の魅力が少しでも伝わるイベントにできたらと思います。

染谷さん

僕はさっき観せていただいて、ちょっと胸に突き刺さり過ぎて「帰ろうかな」って思うくらいグッときました(笑)。まだ余韻に浸っている状態です。

伊藤さん

スナックのママを演じられて、大変光栄です(笑)。新海さんの作品にまさか自分が参加できるなんて思ってもいなかったので、今ここに立っていることが不思議です。私も染谷さんと同じタイミングで午前中に観せていただいたんですけれど、本当に面白くて、気づいたら普通に泣いていて、なんて素敵な作品なんだろうと。改めて関われたことがとても幸福です。

花瀬さん

今回、初めて声優を務めたのですが、私は女優としても舞台挨拶をするのが初めてで、ちょっと会場がすごく大きくてびっくりしています。

野田さん

陣内さんも僕も数日前まで新海監督と一緒にダビングステージという仕上げをやっていて、「まだまだ明日もあるんじゃないか?ー」 とソワソワしているんですが(笑)。完成披露ということで皆さんに披露できること、届けられるのが心から嬉しいです。

陣内さん

今回、新海監督とご一緒して、RADWIMPSの野田さんをはじめ、皆さんとスリリングな制作を楽しみながらやりました。作品も、先ほど洋次郎さんがおっしゃったように、ダビングをつい先日までやっていたので、まだ客観的に見られるところまでいけていないですが、今日は皆さんに作品を楽しんでいただけたらと思います。

MC

新海監督、ついに最新作「すずめの戸締まり」が完成しました。おめでとうございます。

新海監督

ありがとうございます。洋次郎さん、陣内さんがおっしゃったように、つい最近まで作っていて、そのまま完成会見みたいな感じで連続感の中にいるので、ちょっと気を失っていた内に時間が経ってしまったような、戸惑ったような気持ちなんですけど…。でも今日、この後、5000人の観客に観ていただいたら「終わったのかな」と思えるのかなと思います。

MC

物語の着想について伺います。今回のテーマにはどのようにたどり着かれたのでしょうか?

新海監督

きっかけとなったのが、「君の名は。」(2016年公開/出演:神木隆之介、上白石萌音)や「天気の子」(2019年公開/出演:醍醐虎汰朗、森七菜)を作り終えて、その後、日本全国を舞台挨拶のために回ったんですが、その時に感じたことがきっかけになったと思います。それは、人がずいぶん少なくなった、寂しくなったと感じてしまう場所が増えたなということです。その実感がここ何年かでありました。人が少なくなってしまった場所、消滅集落と呼ばれたり、僕の田舎もそうですが、限界集落と呼ばれる場所も、かつてはにぎやかだった記憶が自分の中にあるんですね。僕は団塊ジュニア世代なので、地鎮祭をやって、家の仮組みから華やかにお餅をまいて、家を作って、人が増えていくという記憶があります。にぎやかだった街から人が減って、「このまま人がいなくなったら、人は何をするんだろうか? 」「家を建てる時は地鎮祭のようなことをやったけど、このままどうやって終わっていくんだろう? 」と思うことが増えたんですね。そんなことをきっかけに、「場所を悼むような職業があったとしたら?」「 日本全国で人が消えていってしまった場所を悼んでいく職業のキャラクターをアニメキャラクターにできないか?」 と思ったのが最初のアイディアでした。

MC

本作では“災い”の存在が描かれますが、この災いというものを監督はどのように捉えられているんでしょうか?

新海監督

そうですね、難しいんですけれど…。最近「災いばかりだなぁ」と僕だけでなく、きっと多くの方が思っているかと思います。この作品を作り始めて、企画書を書き始めた頃が2020年の1月くらいで、ちょうどその一カ月後くらいにコロナ禍が始まったんです。緊急事態宣言が東京に下りたくらいに企画書を東宝に提出して「今回はこの作品にしましょう」という話をしたんですね。“災い”というのは、その後に起こった戦争も含めて、僕たちを不自由な場所に閉じ込めてしまうものだという感覚が強くあります。そういう感覚が椅子に閉じ込められてしまう、北斗くんに演じてもらった草太というキャラクターなのかなと。理不尽に窮屈な場所に閉じ込められてしまう感覚が草太になっていった気がしますね。そういう風に、日々、生きていて感じることが作品に少しずつ材料として入っているんじゃないかと思います。

MC

昨年の製作発表会見では「映画館に足を運ぶような作品作りをしたい」とおっしゃっていました。作品が完成した今、その想いについてどのようにお考えでしょうか?

新海監督

映像の体験という点について、今日、僕は荻窪のスタジオにいる何百人ものスタッフ、作画監督の土屋堅一さんをはじめとするスタッフの代表としてここにいるんですが、大きな画面で体験するにふさわしい映像ができたんじゃないかと思います。
もう一つは、洋次郎さんとも話していたんですが、「君の名は。」、「天気の子」と二本の作品をやってきて「三本目に何ができるか? 」となった時、「劇場でしか聞けない音をこの作品にたくさん入れていきたい」という話をしました。アクションシーンもありますし、激しい劇伴から深く静かな劇伴までありますが、そういった音の連なりの、劇場でしかで体験できない作品にしたいという思いがありました。
コロナ禍で作り始めた作品でもありましたので、「映画館っていいよね」「人が集まる場所っていいよね」と思って積極的に家から出る理由の一つになればという、大それた望みも抱きながら作ってきたと思います。

MC

本作は「音楽」というのも大きな要素でありますが、野田さん、陣内さんとの制作はいかがでしたか?

新海監督

いつものパターンなんですが、脚本を書き終わった時、「感想を誰かに言ってほしいな」、「この脚本ってどう思われるんだろう?」 と最初に洋次郎さんに脚本を送りました…。

野田さん

そうでしたね。2020年の3~4月だったと思います。

新海監督

洋次郎さんに脚本を送ると、数カ月後に音楽という形で感想が戻ってくるという形が…(笑)。

野田さん

自動的にみたいに言わないでください(笑)。そうですね。三作目でパターンとして出来上がり始めていましたね。

新海監督

スタートはそういう形で「こういう音が聴こえるんだ」と洋次郎さんと確かめつつ、その頃に「僕たちも三本目なので違う人の力も入れていきたいよね」という話は最初の頃にしていましたよね?

野田さん

そうですね、新しい起爆剤というか、「掛け算が増えていくような新しい要素がほしいね」と話していましたね。

新海監督

それで、制作も中盤を過ぎてからかな…? 

野田さん

そうですね、一年半とか過ぎた後でしたね。

新海監督

スケジュールもあまりないねって頃に、陣内さんと巡り合うことができて…。普段、シアトルで活動していらして。

陣内さん

そうです、普段はシアトルをベースに。

新海監督

作曲された音楽を聴かせていただいて、こういう音、今までの映画にないなと…。

野田さん

それで今年に入ってから、川村元気さん(企画プロデューサー)も含めて、みんなで打ち合わせをしましたね。

新海監督

洋次郎さんの作ったメロディをベースに「ここは激しい戦闘なので陣内さんが…」「ここはRADでモチーフを作って…」という感じで…。

野田さん

そうですね、一歩一歩という感じでしたね。

陣内さん

もう皆さんで二作を作られているところに入るのはかなり緊張感があったのと、これまで自分が関わってきた作風とは一味違うテイストの作品でしたので、よくこちらに声をかけていただいたなというのもありました。お話を伺って、アクション要素や劇場の体験というところで、コンテやビデオも見せていただいて、「自分にもできることがあるんじゃないか?」と思えるようになった頃に、皆さんとお会いしてそこからのスタートでした。

野田さん

結構、役割を分担して、夏あたりまではそれぞれ必死に新海誠という鬼コーチの千本ノックを受けるような感じでした。僕は「心強い同志が遠くで同じように作っているんだな」と嬉しくなりながら必死に作っていて、最後にオーケストラの録音をロンドンのアビーロードでした時に、お互いが積み上げて作ってきたものを共有しながら「最終的にこういう音楽にしていきたいね」と対話しました。そこで、実際に陣内さんが作られた音楽の演奏を聴きながら、ものすごく刺激を受けました。「こういうやり方があるんだ」と自分の中の経験値が上がっていくのを感じましたし、自分のメロディの解釈――こんな風に広げて、こんな和音で、こんなコードで作るんだ! 再解釈するんだ!――とものすごく大きな学びがあり、喜びでしたね。

MC

ここからは、完成したばかりの作品を見ての感想を皆さんにお聞きできればと思います。

原さん

本当に言葉にできないくらい素晴らしくて……。寝る間も惜しんで音楽や映像をギリギリまで作ってくださったスタッフの皆さんがいて、本当なら皆さんで一緒に登壇したかったなと思うくらい、本当に素晴らしいものでした。皆さんの熱意を早く大画面、大音量で皆さんに肌で感じてもらいたいし、受け取ってもらいたいと思いました。

松村さん

本編の魅力的なシーンとか、いろいろなところを細かく上げていったらキリがないんです。本編を観ている間に数え切れないくらい何度も笑って、そして何度も涙が出てくるポイントが訪れます。そのたびに笑った理由と種類、涙の理由と種類も違うんです。僕の中で「面白い」と思う笑いの感性に「こんなに幅があったんだ」と思いました。「こんなことに感動したり、救われたりして涙が出るんだ」と、作品を観ているのに何だか自分を見ているような気持ちになる不思議な作品でした。

染谷さん

僕はかなり没入しました。僕もそこで一緒に旅をしている気持ちになってきて、それで何回も心を持っていかれ、最後はもっとこのキャラクターたち、この愛おしい人たちを長く見守っていたい気持ちになり、後ろ髪を引かれながら終わって…。「本当に体験したことのない、観たことのない映画があった!」っていうのが正直な気持ちでした。

伊藤さん

私も本当に、試写で見ている時、知らないうちに前のめりになっていたことに気づき、「ダメだ!背もたれに背をつけなきゃ!」ってくらい入り込んでいました。すごく笑えるところがあって、新幹線のシーンが好きです! 鈴芽ちゃんがかわいくて(笑)。ずいぶん遠くまで来たなってところで、どんどん鈴芽ちゃんが人として強くたくましくなって、成長しているところを応援したくなりました。私自身もおばと一緒に住んでいたことがあり、独特な関係性を踏まえての(鈴芽の叔母の)環さんのセリフが胸に突き刺さりました。出ている人たちがみんなちゃんと人間らしくて、それがすごく素敵で、みんなすごく器用なわけでもなく一生懸命生きているところに胸打たれて、ジワっと熱くなりました。とても面白かったです。

新海監督

嬉しいです。ありがとうございます。染谷さんは、細田(守)さんの作品で大好きだったので、「声かけていいのかな?」って思いつつ(笑)?

花瀬さん

私も染谷さんと一緒で、観たことのないアニメーションを観たなって感覚が強くて、始まってすぐ新海さんを浴びているような感覚というか、世界観に包まれているような…。私も参加しているんですが、私も戸締まりしているように感じられる参加型の作品だなと感じました。

野田さん

さっきもお話したんですけれど、数日前まで作っていて、最後の数カ月、数週間は、観てない人には伝わらないと思いますが、新海さんが一番弱々になった(劇中に登場する)ダイジンのよう、どんどん背中が小っちゃくなっていったんです(笑)。でもそれが戦っている勇者の背中のようにも見えて、「あぁ、この人は本当に振り絞って作っているんだな」というのを僕らは間近で見られて、2年10カ月の間、込めてきた感情がスクリーンに全て出ている気がしました。日本のアニメーションというエンターテインメントのど真ん中にこの作品を届けるという、ものすごい覚悟と信念を感じました。二時間をフルで観た時に、「観た人すべてに絶対に届ける」という気概をありありと感じまして、自信を持って僕もすべての人に観てほしいと言えますし、「必ずあなたは何かを受け取るよ」と言える作品が完成したと誇らしく思っています。ぜひぜひ届いてほしいなと思います。

陣内さん

作品を観て、気が付いたらメッセージに引き込まれているという、本当に引き込まれるつくりだなと思いました。実は、作曲しながらウルッときたこともあって、本当にいろいろなものが込められていて、それでいて観ていて楽しい作品に仕上がっているなと改めて感じました。更に、昨日、初号で観せていただいて「画作りのスタッフの皆さんの底力って本当にすごいな」と思いました。先週までダビングステージで見ていた画とも全然違う、素晴らしい画になっていて、観ても聴いても素晴らしい作品になったと思います。ぜひ劇場で観ていただけたらと思います。

MC

声のお芝居についてもお伺いします。アフレコを振り返っていかがでしたか?

原さん

アフレコは一カ月半くらい、全体で週に2~3回のペースで録りました。本当に右も左もわからないまま現場に入って、新海監督が一から十まで…百まで教えてくださいました。ブロックごとに録ったんですが、一つのパートが終わるごとに「菜乃華さん、素敵でした。ありがとう」と大好きな監督から言葉をいただけました。「なんて夢のような幸せな時間だったんだろう」って思っています。もちろん、自分の声がうまく扱えないことに対し、へこむ瞬間も数え切れないほどあったんですが、アフレコ現場は夢のように幸せで、ひたすら楽しい時間でした。

新海監督

なんかサマーキャンプみたいな感じでしたよね。行くといつもTシャツ姿の二人(原さん&松村さん)がいて、何かおやつを食べていて、楽しい時間でした。二人にとっては楽しいだけの時間じゃなかったと思うんですけれど、僕にとっては色が一枚一枚、鮮やかに塗り直されていくというか、自分が最初に設計したものが、想像もしなかったような感じでどんどんカラフルになっていくのを毎日味わえて、幸せな時間でした。

松村さん

そうですね、もちろん声は僕の身体から出ているわけで、音が鳴るのはこれ(=自身の身体から)なんです。誤解のないように伝わるといいんですが、新海さんが僕らのことを「楽器」と表してくれたことがあって、そう思うと、僕が演奏するよりも、新海さんが演奏することで草太が完成するということはすごく感じました。「この音じゃないな」、「このメロディじゃないな」とどんどん鍵盤を押し変えていってくれる作業は新海さん、音響監督の山田(陽)さんが筆頭にやってくださいました。アフレコ期間中の変化や苦悩は僕より新海さんのほうが詳しいんじゃないか?ってくらい、僕のすべてを預けた感じでした。

新海監督

そうだね、僕も最初の頃は、北斗くんの身体を使って、作品に必要な声を出してもらうんだという意識があったと思うけれど、自覚的にやっていたわけじゃなく、「一緒に探していこう」って気持ちでやっていました。でもある部分で、北斗くんが「芝居だけど、作品のために自分を丸ごと委ねるんだ」という気持ちに切り替える瞬間があった気がして、そこからより草太になっていくのを感じました。

染谷さん

僕も新海さんと「はじめまして」のまま、収録が始まって、緊張していたんですが、本当に丁寧に優しく、包むように演出してくださいました。細かく的確で、僕はそこにただ乗っていくというか、乗っていくとすごく楽しく、気持ち良くなってきて、「これはもう1回やらせてもらったら良いものが出せる気がする!」って。普段そんなこと思う人間じゃないんですが(笑)、そう思う人間にまでさせてくれて、「もっとやりたい」、「どんどんやりたい」という気持ちにさせてくれました。その気持ちが稔という役をすごく豊かにしてくれて、短い時間でしたたが、充実した時間で、はじけ切った気持ちに最後はなりました。

新海監督

「みんな!エスパーだよ!」の頃から大好きで、「あの声だ!」って思いながら、稔にピッタリだなと思っていました。光栄でした。

染谷さん

こちらこそ光栄です。

伊藤さん

アフレコは、私もとても楽しかったです。私もその日が「はじめまして」でご挨拶して、すぐ録る感じでした。ほしい音だったり、表現がすごく明確にある方で、本当に丁寧で、「こんなに腰の低い人、見たことない!」っていうくらい、「そんな、大丈夫ですよ」ってこちらが言っちゃうくらい、丁寧に優しくしてくださいました。いい緊張感はあったけれど、それ以上に自分がほぐれていい具合になったところで声を入れる作業があって、シンプルに楽しめました。私は何回か声の仕事をやったことがあるんですが、普段やっているお芝居より少し誇張する、キャラクターっぽくするのがアニメをやる際の特徴だと思っていたんです。でもそれが今回覆されたというか、キャラクターに沿った声というのはあるんですけれど、それ以上に「ナチュラルに」ということをお願いされました。普段やっているお芝居と感覚的に変わらないテンションでできて、違和感なくシンプルに楽しくできた上に、カラオケも歌えて、お得な感じで楽しかったです(笑)!

新海監督

「男と女のラブゲーム」を歌っていただきました。音響監督の山田さんが「伊藤沙莉と歌いたいんだ!」と収録しながら、勝手にデュエットしていました(笑)。

伊藤さん

男性パートを歌ってくださって(笑)。

新海監督

そうです、そうです。

伊藤さん

盛り上がりました! ありがとうございました。

花瀬さん

私もお会いして、新海さんが本当に優しい方で驚きました。それがスタジオにいたスタッフの皆さんにも伝染して、優しく温かく、こんな私にも腰が低い方ばかりで、温かく素敵な作品を作る座組って、こういう居心地の良さがあるところからできるんだなと感じました。初めてのアフレコで、難しいところもあったんですけれど、千果という役が、明るく元気な役だったので、その力を借りて緊張することなく、明るく元気にできました。千果ちゃんに感謝しています。

MC

今回、野田さんもアフレコ現場を訪れたそうですね?

野田さん

はい、見学に少し伺いました。原さんがちょうど最後のシーンを録っているときに行きました。クライマックスの本当に重要なシーンで、原さんのしゃべり方などで印象が変化する難しいシーンだったんですけれど、一カ月半積み上げてきた、最後の最後のひと踏ん張り、ふり絞っているんだなというのを感じて、感動しました。ここに音楽も入っていよいよできるんだなというのを感じました。それから、新海さんが、アフレコでは他の現場と比べたらちょっと楽しそうでしたね(笑)。

新海監督

アフレコは楽しいんですよ。画の現場がつらすぎて…。でも実写の世界ってどうなんでしょう? 実写の世界って全部がお芝居じゃないですか? 僕にはイメージできないんですけれど…。僕にとっては、アフレコ現場が逃げ場というか、保健室みたいなもので、休むわけじゃないけれど、リラックスできるというか…。画の現場は職人の集まりでして、僕よりも年上のアニメーターもいて、自分の技とプライドをかけて向き合っているので、「思い通りに描けない」と訴えてきて、泣きながら「もう一日だけ時間をください」、「僕からこの画を引き上げないでください。もう一日だけやらせてください」と訴えながらやり続ける現場が1年8カ月くらい続くので…。

野田さん

アフレコ現場では基本「もう一回、やらせてください」って声に対して優しく対応されていましたけれど、作画の現場はちょっと違うんですか?

新海監督

アフレコや音楽はリアルタイムの芸術なので、もう一回やっても、一言分の時間ですが、作画の現場は「もう一カットやらせてください」で一週間だから、「それはちょっと与えられない…」というジャッジもあります。そこはシビアになるところもあるけれど、大人たちが泣いたり悔しがったりしながら、それでもなんとか駆け抜けることはできました。

野田さん

僕も何年も仕事をしてきて、皆さんと同じように、新海さんの感情がかき乱されてワーっとなっている瞬間を見たことがないし、怒鳴りつけている現場とか、ピリピリすることがあってもおかしくないくらいなんだろうけど、でも見たことがなくて…。もしかしたら作画の現場ではとんでもない怒号が飛び交っているかもしれないし、それも見てみたいですけれど(笑)。

新海監督

諸先輩の伝説の監督の話を聞くと、ゴミ箱を蹴るとか描いてくれた画をホッチキスで留めて二度と見られなくするとかは聞くけれど、僕はそういうタイプではないです(笑)そういう意味で言うと、褒め合いみたいで恐縮ですが、洋次郎さんってなんて素敵なんだろうと思うんですね。いつもメールでやりとりをしていて、新しい曲が上がってきて、「すごく良い」と思う時もあれば、「ちょっとこれはこの作品のための曲じゃないな」って時もあるんです。切羽詰まったタイミングで何回も何回もテイクを出している時も「そちらも現場大変だと思うけれど、俺たちも同じ現場を目指してなんとか走っていきますので元気に行きましょう。寒くなってきましたね。風邪を引かないように」とかメッセージをくださるんです。そこを見習って、ニコニコやろうと思っています。

野田さん

僕も新海さんを見習っていつもやっています(笑)!

MC

最後に新海監督から、これから映画を観る皆さん、全世界に向けてメッセージをお願いします。

新海監督

今日は長い時間ありがとうございました。「自分たちがどんな作品を作ったのか?」 それを教えてもらえるのが、今日以降の時間だと思います。良いことであれ、気になったことであれ、できればたくさんの言葉を費やして、何か書いていただけるととても嬉しいです。観客の皆さんに関しては、この後お会いするんですが、エンターテインメントを楽しんでくださいと伝えたいです。もしかしたら今、「すずめの戸締まり」が日本で一番面白い作品かもしれません。全力で楽しんでいただければと思います。今日はありがとうございました。

【完成披露試写会 上映後舞台挨拶】

新海誠監督

原菜乃華さん

岩戸鈴芽役

松村北斗さん

宗像草太役

染谷将太さん

岡部稔役

伊藤沙莉さん

二ノ宮ルミ役

花瀬琴音さん

海部千果役

野田洋次郎さん(RADWIMPS)

音楽

■本作の上映が終わると、会場のお客さんが総立ちで拍手! スタンディングオベーションの中を新海監督らが登場し、ランウェイの先頭へ。

新海監督

この後、みんなで楽しくいろんなお話ができればと思います。ただ、とても疲れる長い作品を二時間観ていただいた直後なので、トイレに行きたいとかちょっと休みたいという方は自由に出入りしていただければと思います。僕らはしばらく話をしていますので(笑)。リラックスしてこの後の時間を過ごしていただければと思います。今日は本当に観ていただいてありがとうございました。

原さん

本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。
私自身、昨日完成した本作を観て、興奮が収まらず、まだ余韻が残っている中、今ここに立っています。本当にこの作品は、映像や音楽など、たくさんの方が寝る間を惜しんで、すごく熱意を持って完成させてくださった、皆さんに観てもらいたい作品です。今こうしてたくさんの方に観ていただけてとても嬉しいです。この場所に立っていることが、本当に…(声を詰まらせながら)感謝しかないです。

松村さん

僕自身も、新海誠監督の元に集った一人です。「すずめの戸締まり」史の中で言うと、ごく一部の決して長いとは言えない時間ですが関わって、その短い時間でも十分すぎるくらいの魅力を受け取りました。アフレコが終わる頃には、「1ミリでも深く届くものであってほしい」と、図々しいですが、愛着がわいていました。「(皆さんに)どう愛してもらえるんだろう?」 と思っていましたが、こうやってこの場に5000人の方が集ったことに、今感動しています。何より、先ほど新海監督に向けられた拍手が、「新海監督が届けたかった作品への皆さんの返事かな」と思います。
これから、公開に向けてそういう拍手を送ってくださった皆さんのような気持ちになる方が一人でも増えるように、まずはこのイベントから楽しく素敵なイベントにできたらと心から思っています。

染谷さん

僕も今日の午前中に本作を観て、ちょっとまだ脱け出せていないです。観たこともないものを観せてもらい、感じたことのない感動を感じさせてもらいました。(本作で)演じられたこと、一観客としてこの作品に出会えたことに感謝しております。

伊藤さん

こんな規模の舞台挨拶は、初めてなんじゃないかってくらい、こんなにたくさんの方が集まってくださってすごく嬉しいです。私も今日の午前中に染谷さんと同じタイミングで本作を観ました。みんな一緒かは分からないですが、今の皆さんの余韻の感じ…「知っています!」っていう感覚です。観終わって間もないですし、突然現実に引き戻されて申し訳ないですが、この時間を楽しんでいただけたら嬉しいです。私もこの作品は、本当に素敵で大好きなので、皆さんとそれを共有できる時間になったらと思います。

花瀬さん

寒い中お越しいただいてありがとうございます。素敵な作品に関われたことに本当に感謝しています。もう少しの時間、楽しんでいってください。

野田さん

今日はこんなにたくさんの方にお集まりいただき、ありがとうございます。五日ほど前の早朝まで、この作品の完成に向けて、新海監督、陣内一真さんを含め、たくさんの方と作業をしていました。だから、ずっと実感がわかなくて、朝起きるたびに「今日は何の作業だっけ?」と思うような不思議な気持ちでこの五日間を過ごしていた気がします。でも、今日起きた時に、「5000人の方にこの作品を観てもらうんだ」と思うと、とても嬉しいと同時に僕たちの手を離れて違うところに行ってしまう寂しい気持ちもどこかにありました。でも、皆さんの心に何かが届いたのだとしたら、僕たちの手を離れてどこまでも遠く遠く、今皆さんが感じている感動があったとしたら、一人でも多くの人に、皆さんの大切な人に届きますようにと心から願っております。

MC

長きにわたる映画製作が終わり、本編が皆さんに届く日が来ました。熱いスタンディングオベーションもありましたが、ここまでの旅を振り返っていかがですか?

新海監督

そうですね、エンターテインメントではあるんですが、なかなか重いところも含んだ作品なので、「どんな風に皆さんに届くのか?」 すごく不安で、一刻も早く関係者じゃない方の感想が聞きたいと思っています。今日はおうちに帰ったらエゴサ―チをして(笑)、どういう風に思われたのかを見ていきたいと思っております。でも、この日が来たことは幸せです。せっかく、今日5000人の方に観ていただいたので、公開まではまだ少し時間がありますが、この場ではあまりネタバレを気にせず、自分たちの好きなシーンなどについて語れればと思います。ただまだ観ていない方がいますので、メディアの方も含めてネタバレは避けていただいて、本作の楽しみを損なうようなことを僕たちがしゃべっちゃっても、そこは書かないでいただけるとありがたいです。ご協力いただければ嬉しいです。よろしくお願いします。

MC

先ほど、皆さんから一言ずつご挨拶をいただきましたが、思いがこもっていましたね。

新海監督

そうですね。本作は岩戸鈴芽の物語であり、「すずめの戸締まり」という、鈴芽の名を冠したタイトルを付けました。そのヒロインを19歳の菜乃華さんに担っていただきました。僕にとっては自信のある”すずめ”になりましたが、皆さんは、いかがでしたか?

■客席からは大きな拍手!

新海監督

ありがとうございます。菜乃華さんは演じられていかがでしたか?

原さん

鈴芽ちゃんの自分で人生を切り拓いていく強さには私もアフレコ中に助けてもらいました。自分の中で憧れるような女の子の声を当てられるのはプレッシャーでもあり、同時に光栄でもあり本当に夢のような時間でした。

新海監督

嬉しいです。菜乃華さんがいたから、鈴芽という役は完成したんだと思います。ありがとうございます。
そして、イスになってしまうイケメン役、北斗くんの草太は皆さん、いかがだったでしょうか?

■客席から再び大きな拍手!

新海監督

ありがとうございます。北斗くん、草太を演じてみていかがでしたか?

松村さん

いざやると、思っていたよりほとんどイスだったなって…。でも、すごく面白いのが、イスになってからの方が草太の人間としての本番というか、イスになってやっと自分と向き合える瞬間が訪れたり、鈴芽との関係性なんかも…。見かけが人間だった冒頭の草太のほうが、人間らしくないんですよね。特に登場シーンって、「何だあの男は?」と思わせるために何度もテイクを重ねたじゃないですか?

新海監督

そうでしたね。「ねぇ、キミ。このあたりに廃墟はない?」って。何度録ったか…。

松村さん

三度くらい、時期を変えてやりましたかね。

新海監督

たぶん、ここにいる北斗くんを熱心に見てくださっている方は、テイクが変わっていくのも把握していると思います。

松村さん

そうだと思います。だからイスになってからが実はすごく好きで、だからこそ、草太役…ちょっとイス役くらいの気持ちが強いですね(笑)。

新海監督

菜乃華さんも、イスになってからのほうが、緊張しないで北斗くんとお芝居できたとおっしゃっていたのが印象に残っています。

原さん

そうですね。イスになってからは、草太くんの表情が見えないので、やりにくいのかと思いきや、イスのほうが草太くんの表情が見えるような気がする不思議な現象が起きて、すごくコミカルなシーンも多いですし、お気に入りのシーンがたくさんあります。

新海監督

この作品は、前半にたくさん笑って楽しい思いをしてもらおうと作ったんです。僕が脚本を書いていつもの癖で洋次郎さんに送ると、「音楽で感想を返してくれるんじゃないか」という気持ちで洋次郎さんに送ったんですが…。イスの話と受け取った時、何か感じたこと、覚えていらっしゃいますか?

野田さん

確かにイスの話でしたね…。

新海監督

でも、イスと思っていなかった?

野田さん

そうですね、言葉尻だけの話で、やはり「鈴芽と草太の話」だと思いました。それ以上に文字から伝わってきたのは「何だこの躍動感は!」というか、日本全国を旅する感じとか、ミミズという得体のしれないファンタジーが全く想像ができませんでした。だから、「これで何か音楽が浮かびますかね?」と聞く新海誠もすごいなと(笑)。あれは二年半前くらいですかね…? 僕の頭の中でこしらえて、想像したミミズやダイジン…、ふつふつと自分の中でわき上がるイメージを音にしていった気がします。

新海監督

最初に「いままでと違う音楽を届けられたら良いですね」って話をして、日本という土地の土の匂い、重さ、土着の何か風土みたいなものがギュッと詰まったものが映画を引っ張ってくれるかなと思って、「すずめ」という曲が出来上がって…。

野田さん

そうですね。今はなくなってしまったような村や町には、僕らのおじいちゃんや、おじいちゃんのおじいちゃん、おばあちゃんたちが語り継いだ、そこだけの音楽、民話、子守歌やメロディがあるんじゃないかと思いました。そんな懐かしい音が作品全体を通じて響いていたら良いですよねって話をしましたね。

新海監督

見事にそういう音楽をいただけたと思っています。ありがとうございました。
キャストの皆さんで言うと、染谷さんと沙莉さんは大好きな声なんです。染谷さんは、業界の大先輩である細田守さんの作品にも出ていて「(「バケモノの子」の)九太の声が良いな」と思いました。沙莉さんも湯浅監督のアニメ「映像研には手を出すな!」に出ていて、声だけで「この人がここにいる!」という世界を作り出してくださいました。当然、オーディションではなく直接オファーをしたんですが、まさか受けていただけると思っていなかったです。出演されてみていかがでしたか?

染谷さん

光栄でした。普通に劇場で特報を見ていたので「あ、新海さんの新作だ。観に行こう」と思っていたその後、お話をいただいて「嘘だ!」と思いました(笑)。
脚本をいただいて、ものすごく思いが伝わってきて、録る時は「逆にこの素敵な作品を絶対に傷つけちゃいけない!」と緊張しました。

新海監督

(染谷さんからは)緊張は感じなかったですが「稔だ!」だと感じました。

染谷さん

豊かな時間を一緒に過ごさせていただきました。

新海監督

沙莉さんは出演されてみていかがでしたか?

伊藤さん

「出ていただけるとは…」というか、まさかお話をいただけるなんて思っていなったので、「こちらこそ!」過ぎるんですが(笑)。
私も染谷さんと一緒で予告を観ていたので、その後にオファーをいただいて、びっくりしたんです。そこから「どういう気持ち、どういう着想でこの作品を?」と思っていたら、結構な長文の企画書みたいなものを新海さんからいただきました。そこには、思いや発想、こういうことを伝えたいからこういう手法を使っているということも含めて書かれていました。すごく気持ちが伝わって、この文章をむしろ世に出してほしいと思うくらいです(笑)。伝わるものがすごくありました。
そこから台本を読んで、現場でも役柄の説明やディレクションなどで、丁寧に優しく細かく教えていただきました。新海誠さんを感じられた期間でした。

新海監督

本当ですか? 北斗くん、僕、優しかったですか?

松村さん

裏があるんじゃないかと思うくらい…。裏がないから、今改めて怖いというか、本当に裏があるんじゃないかって…。

新海監督

ないですよ(笑)。
そして、花瀬さんが演じてくださった千果で、僕が一番好きなセリフが「キスしたら起きるで」ってあのセリフです。とても良いですよね。あのセリフがあって、イスにキスをするシーンがあるんですが、アニメーションになっていかがでしたか?

花瀬さん

すごく光栄です。“世界”の新海さんと…。

新海監督

いやいや(笑)。

花瀬さん

ご一緒させていただいてありがとうございました。

新海監督

北斗くんが皆さんの芝居、草太の芝居も含めて、好きなシーンを聞いても良いですか?

松村さん

一番と言われるとあれですが、戦闘シーンが、特にメインの魅力じゃないですか? 鈴芽の成長とか…。その端々にある、例えば冒頭で鈴芽が環さんと電話していて、ちょっとまだ高校生の反抗期が残った話し方だったり…。「悪い男と…」と言われて…。

新海監督

「違う、健全、大丈夫!」と(笑)。

松村さん

「違う、健全、大丈夫!」ってあの言い方がずっと耳に残っています。シーンの端々がすごく丁寧に描かれていて魅力的でした。

新海監督

菜乃華さんは、一緒に旅をしていて、草太のセリフで「このセリフは…」っていうのはありますか?

原さん

たくさんあります。草太さんが「お返し申す」って隣で何度もアフレコしているのを見て、心底「うらやましい」と思っていました。あの決めゼリフ、カッコ良いなって思っていたので、私も「お返しします」が言えた時は、ガッツポーズでした(笑)。

新海監督

最後は「お返しします」で必殺技を決めますからね。

MC

監督、“あの”もうおひと方についてもお聞きできればと思います!

新海監督

確かに、メガネを掛けた…芹澤。皆さん、芹澤を覚えていらっしゃいますか? 赤いスポーツカーに乗った…。(会場:拍手) 良かった! 芹澤の声、誰だか分かりましたか?
今日はお忙しくてここには来られなかったのですが、神木隆之介さんです。以前、北斗くんと神木くんが並んでいる姿をTVで見て、何だかぴったりなんじゃないかと思って、神木くんに一回オファーを出したら「ちょっと僕は芹澤じゃないと思います」と断られたんですよ。

松村さん

そうなんですか?

新海監督

そうなんです。あれだけ「出たい」って言っていたのに(笑)。草太役のオーディションしている時に「新海さん、僕はいつでもアップできています!いつでもやります!」と話してくれたんですが…。電話をしたら「このキャラクターは自分ではない気がするし、自分は(「君の名は。」の)瀧をやっているので、芹澤で上書きしてしまったら良くないんじゃないか?」と言ってくれたんです。
でも、その声を聞いた人が、「神木じゃないんじゃないか?」って思えるキャラになれば、芹澤にとって一番良いんじゃないかと思いました。「僕らがものを作っていて、そういうことができれば幸せじゃないか?」という気持ちで、もう一度、神木くんにお願いしたら、最後はご快諾いただいて、「ルージュの伝言」をノリノリで歌って帰っていきました(笑)。

松村さん

あれメッチャ楽しそうでしたよね? 画面からあふれ出る楽しさがありました。

新海監督

そうなんです。今振り返れば、神木くん以外はあり得なかったと思いますけれどね。(原さんに) アフレコをやられてどうでしたか?

原さん

ガッチリご一緒できたのは、一日だけなんですが、「『君の名は。』がすごく好きです」とお伝えしました。あと、好きなアニメのお話を語らせていただいたりもしました。技術的な面もすごくアドバイスをいただけて、ずっと楽しかったし、たくさん勉強させていただきました。

新海監督

北斗くんも神木くんとの関係はありますもんね?

松村さん

以前、というか最近ですが、違う映画(「ホリック xxxHOLiC」2022年公開/出演:神木隆之介・柴咲コウ)でバディのような関係だったので…。それで出ていたTVを見たんですよね?

新海監督

そうです。そのイメージが強くて。

松村さん

ですから、(草太役の)オーディションを受ける時に、(神木さんに)相談をしました。声優というか、「声を当てる仕事って何なのだろうか」と、アバウトな質問でしたが、「コツとなるヒントありませんか」と聞きましたね。

新海監督

神木くんに聞くってことは、結構、答えを知ることに近いね(笑)。

松村さん

ちょっとチートかなって(笑)。

新海監督

そのおかげもあって巡り合うことができて良かったと思います。

MC

野田さんにお伺いしたいことがありますが、主題歌の「すずめ」はTikTokで歌声を届けてきた十明さんが歌っていることでも話題です。さらにエンドロールではもう一つの主題歌「カナタハルカ」の存在も明らかになりました。

野田さん

そうですね、今回、主題歌が二曲流れていますが、「すずめ」という楽曲は2020年の最初に脚本をもらって、新海さんと連絡をとりながら作りました。また、「この作品にはもう一曲必要なんじゃないか?」と新海さんと二年かけて話をしてきました。たぶん、結構な数の楽曲をお渡ししたと思います。

新海監督

そうですね。今までで一番たくさんの歌をいただきました。

野田さん

そして二年が経って、今年の頭くらいに、「いよいよもう何も出てこない気がします」と言いながら、「最後の最後にもうひと絞りをお送りします」とお送りしたのがこの曲だったと思います。「カナタハルカ」という曲で、新海さんが「この曲で行きたい」とおっしゃって、入ることになりました。

新海監督

「カナタハルカ」を「これが精一杯!」とおっしゃいつつ、その後四、五回、上書きして「ちょっとアップデートしました」と…、何回やるんだろうと思っていましたが(笑)。

野田さん

今年になって、ちょっとずつ画ができてきて、二年間見えなかったものが見え始めたんです。最後、監督もふり絞るように作られていた中で、「僕もできることがまだあるんじゃないか? 」とずっと探していて、それをこの楽曲に閉じ込められた気がして、とても有意義な時間だったと思います。

MC

最後に新海監督からメッセージをお願いします。

新海監督

僕はもう十分話したので、菜乃華さんと北斗くんから一言ずついただけますか?

松村さん

このイベントを通して、新海さんという人間を好きになってもらえたんじゃないかと感じています。僕自身、アフレコ中にどんどん好きになっていきました。これからちょっと生意気なことを言っちゃいますが、さっきワーッと幕が開いて、三人で立っていましたが、「どうか、僕の大好きな人の作品が、ものすごい愛され方をしますように!」って思っていました。そう思わせてくれる人物です。その方が指揮をとって、1000人を超えるスタッフさんが、全員同じ思いを抱いて作った作品です。今思えば、あの拍手は当然だったと思える作品です。これから皆さんも、心にグッとくるものをこの作品からもらったら、次の誰かへ、次の誰かへ…と、どんどん渡していってください。この作品が想像を上回る愛され方をする作品になるように、僕もその一員なんですが、一緒に育てていっていただきたいと思います。今日のイベントはいったん、終わりですが、ここから「すずめの戸締まり」が歩み出します。ぜひ皆さんで一緒に愛していってください。

原さん

うまく言葉が紡げるか分からないので、松村さんと同じことになってしまうかもしれません。
初めて完成した作品を観た時、涙が止まらなくて、それが何の涙かも分からなくて…。それは本当にたくさんの方が命を削って、ひたむきに制作してくださったものの積み重ねです。だから、この作品が出来上がっているということに胸にくるものがあります。一つ一つのシーンから、大画面、大音量で観れば観るほど、肌で感じてもらえる本当に素晴らしい作品だと思います。
この作品が皆さんにとって、明日を生きる糧になるような作品になると、心から信じています。