「スオミの話をしよう」初日舞台挨拶
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初日舞台挨拶
国民的脚本家・演出家・映画監督として、これまで日本中にたくさんの笑いと感動を届けてきた三谷幸喜監督の映画最新作「スオミの話をしよう」が、9月13日に公開となりました。
初日舞台挨拶が公開初日の9月13日にTOHOシネマズ 六本木にて開催され、長澤まさみさん、西島秀俊さん、松坂桃李さん、瀬戸康史さん、遠藤憲一さん、小林隆さん、坂東彌十郎さん、戸塚純貴さん、宮澤エマさん、三谷監督が出席しました。公開初日を迎えた喜びや、初日だからこそできる撮影の裏側を語り、笑顔の絶えないイベントとなりました。この日の模様を詳しくレポートします!
長澤まさみさん
スオミ役
西島秀俊さん
草野圭吾役
松坂桃李さん
十勝左衛門役
瀬戸康史さん
小磯杜夫役
遠藤憲一さん
魚山大吉役
小林隆さん
宇賀神守役
坂東彌十郎さん
寒川しずお役
戸塚純貴さん
乙骨直虎役
宮澤エマさん
薊役
三谷幸喜監督
長澤さん
本日は、初日に駆けつけてくださり本当にありがとうございます。去年の今頃、本作の撮影をしていました。すごく暑い中の撮影でしたが、あっという間に終わってしまいました。でも、「本当に良い時間を過ごしたな」という思い出に今はひたっています。それと同時に、本作が皆さんの元に届いて、ちょっとホッとしているところでもあります。本作をたくさんの方に観てもらいたいと思っています。
西島さん
撮影は楽しかったです。この幸せな作品が、皆さんの元に届いて、劇場で本作を観て皆さんが笑うことで、作品がもっともっと豊かに膨らんでいくと思っています。本当に本作は、とにかく幸せになる作品なので、ぜひたくさんの方に観ていただきたいと思っています。
松坂さん
本日は、初日に駆けつけてくださり、本当にありがとうございます。 上映後ということで、皆さんの表情を見ることができて、ほっとしています。「ようやく皆さんに届けることができた」という思いと、すごくうれしい気持ちでいっぱいです。さらにたくさんの人に観てほしいので、引き続きよろしくお願いします。
瀬戸さん
小磯と、ミュージカルシーンでは不思議な髪型をした人物を演じた瀬戸康史です。(登壇者の皆さん:笑) 内容を知っていても楽しいし面白い作品です。この楽しさを多くの人に届けることができたら良いなと思います。そして、少しでも皆さんの不安な気持ちやストレスが、本作を観て、少なくなればと思っております。たくさんの方に観ていただけるように、我々も頑張ります。
遠藤さん
やりがいのある楽しい作品でした。そして、楽しいメンバーでした。お世話になりました。(登壇者の皆さん:笑)
松坂さん
毎回、それ言いますよね(笑)。
遠藤さん
お世話になっているからね。お世話になりました(笑)。他に言葉が出てこなくてすみませんね。
MC
遠藤さん、初日を迎えてどんなお気持ちですか?
遠藤さん
うれしいです!(登壇者の皆さん:笑)
小林さん
皆さん、本日はようこそおいでくださいました。ここにおいでの皆さんや、他の劇場にお越しくださった全ての皆さんのおかげで、「スオミの話をしよう」が無事に船出することができました。 この航海ができるだけ長く続きますことをお祈りしております。
彌十郎さん
皆さんはもう、本作を観ていただいた後ということで、反応が非常に怖いです。僕のことを嫌いにならないでくださいね(笑)。でも、最低でわがままな男の役は楽しかったです。これからももっともっと観ていただけるように、皆さんも本作の宣伝をよろしくお願いいたします。
戸塚さん
本当にこの日を楽しみにしていました。改めて、こうして皆さんの前に立って、素晴らしい作品に参加したんだなと実感しています。寒川さんには、こき使われて、僕はすごく楽しかったです(笑)。
宮澤さん
一年前に、愛すべきこのキャストの皆さんと、わちゃわちゃしながら撮影をしていた時は、他の作品の時もそうですが、「一体どんな作品になるのか」「お客さんにはどういう風に受け取られるんだろう」と、不安な部分も多かったです。でも、今日は上映後なので、私たちキャストは、会場のお客さんと大きな秘密をシェアしているような気持ちです。皆さんの感想を聞くのが楽しみです。一体皆さんがどんなスオミの話をしてくださるのか、今からすごく心待ちにしています。
三谷監督
僕は、今回脚本と監督とBGMのピアニカを担当しました。(登壇者の皆さん&会場:笑)
瀬戸さん
本当ですか?
三谷監督
本当なんですよ! 僕がピアニカを弾いたんです。
今回、宣伝活動ではいろんな番組に出ました。僕だけじゃなくて、登壇者の皆さんも本当に頑張ってくれて、たくさん宣伝をしました。おかげで、今日も全国でたくさんのお客さんが来てくださり、本当にうれしく思っております。
いろんな方が観てくれて、例えば谷原章介さんが「すごく面白かった」って言ってくれたし、 軽部さん(フジテレビアナウンサー)も「面白かった」って言ってくれました。バナナマンの設楽さんは、たぶん観ていないと思います。(登壇者の皆さん&会場:笑) 先日、中居正広さんが感想をくれたんです。その中で、「この作品はとっても手に汗握らないですね。」 という言葉が印象に残っています。(登壇者の皆さん&会場:笑)
「嫌なこと言うな」と思ったんですが、でも確かにそうなんですよね。一応ミステリーっていうことにはなっていますが、僕の作品なので、スオミが悲惨な結末をたどるわけがないんですよね。「絶対にこんな感じで終わるんだろうな」と、皆さんが思っていると思うんです。それでも、何となく楽しくて、ワクワクして、手に汗を握らないんだけれども、握りそうになりながら、二時間楽しい時間を過ごせるような作品になったと思います。とても僕は満足しています。そして、たくさんの方に観ていただいて、本当に感謝しています。
MC
長澤さん、スオミは非常に難しいチャレンジングな役どころで、三谷監督は「挑戦状のような台本」だとおっしゃっていました。挑戦を終え、仕上がりを観て、ご自身はどのように受け止めていらっしゃいますか。
長澤さん
まだ冷静に本作を観ていないので、映画館に観に行こうと思っています。私が、今できることはやれたと思っています。撮影が終わった後も、「スオミはもしかしたらこうだったかもしれない」「ああだったかもしれない」って、まだまだ可能性を見いだせるようなすごく楽しくて面白い役を演じられたなと思っています。
MC
三谷監督は「長澤さんの引き出しを全部引き出したい」というお気持ちだったとうかがいました。
三谷監督
たくさんの引き出しを持っている方だから、まだあと八つぐらいは残っているんじゃんないですか? でも、僕が気づいた引き出しは全部開けました。でも、なんか奥にまだありそうな気もします。
MC
長澤さん、クライマックスシーンの集中力・緊迫感はすごいものがあったとうかがっています。
長澤さん
あのシーンの撮影日は、とにかく皆さんの足を引っ張らないように「頑張らなくちゃ」と、一人ですごく緊張していました。でも、本当に夫たちの目が優しくて、見守るように一緒にいてくださりました。私と薊ちゃんがいない間に、夫たちはとても結束力を固めて、良い時間を過ごしていたんだなと感じました。本当に温かい時間でした。自分のことに集中することができて、本当に感謝しています。ありがとうございました。
MC
西島さん、クライマックスのシーンは四分半以上とうかがっています。あのシーンで、OKが出た瞬間に思わず声をおかけになったそうですね。
西島さん
すごかったですね。目が離せなかったです。何だか綱渡りを全速力で駆け抜けているような感じでした。僕は、手に汗を握りましたよ。役だから握っちゃいけないんですが、心の奥では「うわっ。これどうなるの。いけるのかな。」って、目が離せなかったですね。引き込まれました。
MC
松坂さん、いかがでしたか。
松坂さん
そうですね、見入っちゃいました。でも、本当は役としてそこにいなきゃいけないんです。でも、そのシーンは僕が知らないスオミを初めて目にする瞬間なので「こういう感じなんだ」「次こうなんだ!」と、次々と出てくる長澤さんの引き出しに、思わず僕も心の奥底で手に汗を握りましたね。
三谷監督
僕も握っていました。(登壇者の皆さん:笑)
でも、本作では長澤さんは一回もNGを出していないです。NGといえば、思い出すのは西島さんですね。(会場:笑)
MC
では、西島さんは三谷監督とは意外にも初タッグということですが、いかがでしたか。
西島さん
そうですね。本当は楽しんでいたらダメなんですが、監督の演出の時の言葉がおかしいんです。それがずっと現場に漂っていて、本番中も残っているんです。その現場の楽しさが、きっと本作に残っているんじゃないかと信じています。僕は自分がやったことは間違ってないと思っています(笑)。
三谷監督
間違っています。(登壇者の皆さん:大笑い)
西島さん
そうですよね、間違っていますよね。本当に反省しています(笑)。
MC
現場の空気がそうさせていたのかもしれませんね。
西島さん
皆さんがあまりにも面白いので、とても大変な現場でした。
MC
松坂さんも三谷組は初めてということですが、現場の空気や、三谷演出にはどんなことをお感じになりましたか。
松坂さん
西島さんと同じで、僕も三谷さんの演出の言葉がずっと残っていました。それこそクライマックスシーンの、スオミが中国語以外の言葉をしゃべった時の小林さんのリアクションへの演出が頭に残っています。三谷さんは「自分が飼っている犬が日本語をしゃべった時のような驚き方をしてくれ」と小林さんに言っていました。それがすごく頭に残っていて、「じゃあ本番いきます。よーい」って言われて、「どんな顔をすんだろう。すっごく気になる。でも、スオミの方を見ていなきゃだし…」って、本当に気になっていました。皆さんは小林さんのリアクションをご覧になったんですもんね。いやぁ面白かったですね。
MC
小林さんはその演出を聞いた時のお気持ちはいかがでしたか。
小林さん
このシーンに限らず、いろんなところで三谷監督が来て、こちょこちょっと耳元で言うんです。その回数が多すぎて、いちいち覚えていられなかったというのが正直なところです。あのシーンの時は、犬でしたかね? 僕は、犬を飼ったことがないので、想像力をフル回転させて、必死に演じていたはずです。だって、スオミが初めて日本語を話す姿を目撃したわけですからね。それまでは、中国語だったんですから。(登壇者の皆さん:笑)
これは、(小林さんが演じた)宇賀神にとってはすごく大変な出来事だったんです。結婚生活においても、おそらく夢の中でも大量に降り注ぐスオミの中国語のシャワー…。これに対して、戸惑いながらも、心の中では幸せだった宇賀神でいたかったし、そう演じたつもりです。言葉の意味なんてどれほどのものだっていう感じで、スオミの中国語を極上の音楽だと思って聞いていましたね。ただ、スオミの口調や表情から発する、かすかなSOSのサインだけは逃すまいと思ってやっていました。それが、警察署での対面のシーンですね。あの時の表情は、未だに忘れません。あの顔だけで一年近い結婚生活を過ごしたと言っても良いくらいです。
MC
西島さんは、笑っていますが、小林さんの演技がツボという感じですね。
西島さん
コバさん(小林さん)はこういう人なんですよ(笑)。僕のNGの80%はコバさんの演技で吹いたものですね。
三谷監督
でも、本当に真面目な方だから、今も別にみんなを笑わせようとして言っているわけではないんです。真剣に話しているんですよ。
小林さん
だって、ちょっとありえないですよね。 一年弱結婚していて、言葉が分からないんですよ…。
三谷監督
大体言いたいことは分かりました。もう大丈夫です。
小林さん
以上です(笑)。
MC
西島さんの笑いが止まりませんね。
では、続いて瀬戸さんにうかがいます。やっぱりセスナのシーンは想像のはるか上をいくアクションシーンでしたね。
瀬戸さん
あの大アクションシーンのことですね。僕もあれは想像していなかったです。突然言われたんですよ。
三谷監督
あれは、現場でちょっと思いついたんです。一応設定はあったんですが、どんな風に落ちようかっていうのは決まっていなかったので、「そうだ!浮かび上がってこよう」っていうことになりました。
瀬戸さん
まさかのレジャーシートですからね。ハットリくんみたいですよ。びっくりしました。あそこ、すごかったですよね(笑)?
西島さん
トム・クルーズもあれはやっていない(笑)。
瀬戸さん
そうですね、もう飛行機に追いついちゃっていますからね。良い感じに上昇気流に乗ったっていう前提ですよね、三谷さん。
三谷監督
ちょっとあれはリアリティを超えてしまったんですね。
瀬戸さん
楽しい撮影でした。
MC
長回しが多い撮影なので、長い稽古をされたともうかがいました。一方で、現場では三谷監督が演出を変えてくることに応えるのは、役者としての面白さみたいなものもありましたか。
瀬戸さん
それはすごくあると思います。だから、「アクションがあります」と突然言われて、ワイヤーアクションをやらされて、ああいう形になりましたね。
三谷監督
最初は、翼にしがみついている設定だったんですよ。
でも、それだとなんか面白くないから、「一回落ちよう」となったんです。でも、「落ちたら何とかして上がってきてもらおう」っていう話にもなりました。(登壇者の皆さん:笑)
瀬戸さん
すごく楽しかったです。
MC
遠藤さんは、何と言ってもやっぱり長澤さんとの初共演ですよね。
遠藤さん
はい。うれしいです。(登壇者の皆さん&会場:笑)
まさみちゃんとは初共演なんです。僕は、雑談が苦手で、しゃべるのとか得意じゃないんです。それでも、話しかけてみたら、まさみちゃんに「絡みづらい」って言われました。でも、その正直なのが面白くて、逆に話しやすくなって、ガンガン話しかけていました。だから会っている時は、ずっとまさみちゃんと話をしていましたね。迷惑だったでしょ?
長澤さん
いやいやいや。うれしかったですよ。
遠藤さん
ありがとうございます(笑)。
MC
長澤さんは遠藤さんを「憲一」と呼ぶようになったとうかがいました。
長澤さん
「憲一」って呼んでって言われたんです。
遠藤さん
僕から頼みました。「憲一」と呼ばれて、芝居では怒鳴られて、幸せでした。(登壇者の皆さん&会場:笑)
MC
長澤さんは遠藤さんとの共演はいかがでしたか。
長澤さん
本当に楽しかったですね。お互いちょっと似たところがあって、 緊張しいとか、自信がないところとか、人見知りなところとかね。なので、私が一生懸命芝居をしている時に、三谷さんからいろんな注文がきて、それを(遠藤さんが)ずっと優しい…濡れた子犬みたいに目をウルウルさせて「分かるよ。一緒だよ。まさみちゃんもそうなんだ」って言ってくるんですよ。
遠藤さん
それ妄想じゃないの(笑)?
長澤さん
言ったじゃないですか(笑)!
遠藤さん
そんな感じだったね(笑)。
長澤さん
そんな感じでした。だから、分かってくれるのがすごく安心感になりました。遠藤さんとはとても良い友情関係を築くことができました。
遠藤さん
(長澤さんが)緊張しいで、人見知りには全然思えなかったので、本当びっくりしたんです。自分もそういうところがあるので、他人だとは思えなくなったっていうのはありましたね。
三谷監督
二人とも本当に仲良しでしたね。だから、もう十年ぐらいの知り合いなのかと思っていましたもんね。初めて会ったんでしょ?
遠藤さん
一応、真田丸(2016年放送のNHK大河ドラマ「真田丸」/主演:堺雅人)の打ち上げの時にちょっと会ったことはありますね。打ち上げの一次会でちょっと話しただけです。なので、ちゃんとした共演は生まれて初めてです。(登壇者の皆さん&会場:笑)
MC
彌十郎さんは映画作品への出演が、そんなに多くないとうかがいました。三谷作品へのご出演はいかがでしたか。
彌十郎さん
楽しかったというのが第一ですね。撮影が終わってから、「大丈夫だっただろうか」「これで良かったんだろうか」と、後からじわじわとなってきていました。
MC
三谷監督、彌十郎さんも、三谷作品には欠かせないお一人という印象もありますが。
三谷監督
僕は、歌舞伎を観ていたので、彌十郎さんの面白さは当然分かっていました。でも、知らない方はまだまだ多かった。「こんなにすごい俳優さんがいるんだよ」と、世の中に伝えたいという思いが大きかったです。もともと彌十郎さんのお父さんだって、映画俳優さんでいらっしゃったんですよね。
彌十郎さん
そうですね、結構長い間映画の仕事をしていました。
三谷監督
だから、もう二世俳優になるんですよね。それにしては、かなり成長されていますけれども…。(登壇者の皆さん&会場:笑) 僕は、彌十郎さん今後の日本映画界を背負って立つ人材なんじゃないかなと思っております。
MC
映像作品のお仕事はどうでしょうか。
彌十郎さん
三谷監督は、いつもやっている舞台に近い感じで演出をつけてくれるので、僕としてはすごくやりやすかったですよ。そして、キャストの方も、スタッフの方も本当にいたわってくれました。なので、やりやすかったですね。
MC
冒頭では、「嫌なやつなので嫌われちゃったんじゃないか」とおっしゃっていましたが、彌十郎さんは嫌われないという感じもしますよね。
三谷監督
ちょっと腹立たしいぐらい、憎めないところがあります。何をやってもかわいげがあるんですよ。もしかしたら、皆さんは見逃しているかもしれないですが、最後のダンスシーンで、ちょっとだけ振りを失敗されているんですよ。
彌十郎さん
悔しいんですよ。何であれを使ったんですか(笑)。
三谷監督
うまくいった回もあったんですが、失敗した感じがチャーミングでかわいいんですよ。だから使いました。
彌十郎さん
完成した本作を観たら、「何で?」って感じでした。ちょっと悔しかったです。
三谷監督
皆さん、ぜひもう一回観て確認してください。
MC
戸塚さんは三谷組に出ることが目標だったそうですね。
戸塚さん
あ…はい。
MC
違うんですか?(登壇者の皆さん&会場:笑)
戸塚さん
(登壇者の皆さんに向かって)目標でした! 三谷作品に出たくて、役者をやってきました。(登壇者の皆さん:笑) なので、これからの目標がなくなってしまいました。三谷さんもそうですし、こんな素晴らしい先輩方に囲まれて、僕にとっては本当にご褒美みたいな時間でした。「役者を続けてきて良かったなぁ」って本当に思いました。
ちょっと一つ思い出したことがあります。長澤さんと共演するのは久しぶりなんですが、この作品でご挨拶した時に、スタッフさんに間違えられました。(長澤さんに向かって)覚えていますか?
長澤さん
ミュージカルシーンの稽古で、私は一人で稽古をしていたんです。私の稽古の後に、小林さんと戸塚さんの稽古でした。久しぶりに小林さんに会って「まさみちゃん」って声をかけられて、話をしていました。そのまま小林さんとの会話に夢中になっていたら、(戸塚さんの前を)通り過ぎようとしていました(笑)。
戸塚さん
(長澤さんの真似をして)「あ、おはようございます」みたいな感じでしたよ。「あれあれあれ?」と思っていたら、「小林さんのマネージャーさんかと思った」って言われました。(登壇者の皆さん&会場:笑) でも、この最初のこのやり取りで、乙骨の人生がちょっと決まった気がして、何だかぐっときました!(登壇者の皆さん:笑)
MC
西島さん、ミュージカルシーンの決めポーズは、男性陣は各々が決めるような感じだったそうですね。
西島さん
いや、そんなことないですよ。人によりますね。
MC
小林さんは?
小林さん
僕は、初めてのダンス稽古の日に遅刻したので、その振り付けは終わっていました。だから、「ここは自分で考えるのか」と思っていました。あれって、決まっていたんですね? ナレーションが入っているところで、一人ずつポーズを決めていくんですが、僕の場合は、いい人か悪い人か分からないようなナレーションだったので、カッコ良いポーズにしようと思いました。だから、宝塚の二枚目のような(手を拳銃のような形にする)ポーズから、拳銃の煙をフッと消すポーズに落ち着きました。
三谷監督
あれは宝塚だったんですか?(登壇者の皆さん&会場:笑)
小林さん
手の形が拳銃にも見えるし、僕は刑事役なので煙を消すようなポーズにしました。
西島さん
そういうことだったんですね。マイケル・ジャクソンの(ムーンウォークの)ポーズをやっていた時もありましたよね。
小林さん
でも、それだとよく分からないかなと思って、あれに落ち着きました。
MC
宮澤さんは、そのミュージカルシーンでは、リードする立場でもあったとうかがいました。本作では長澤さんとの共演が軸だったと思いますが、いかがでしたか。
宮澤さん
三谷監督の演出を受けた人たちは、同志というか、試練を乗り越えた方々だと思っています。その中でも、今回いただいた脚本は、自分が演じる薊は、常にスオミと一緒にいるんです。二人の関係性が何なのかは明確に書かれていないし、何者なのかについても謎が多くて、すごく悩みました。これをどう演じることが良いのかがすごく分かりませんでした。現場に来てみたら、長澤さんも同じように悩んでいたので、いろいろ相談もしました。
プライベートでは「まさみちゃん」って呼んでいるんですが、こういう場では「長澤さん」って呼びたくなるような、凛とした軸がしっかりあって、まっすぐ立っている姿が印象的でした。
「こうだよね、ああだよね」って悩んでいても、最終的にカメラの前に立つと、決めてくれました。「このスオミがあっての薊だな」っていう、私の指針でいてくれたので、付いていくだけでした。ありがとうございました。
MC
スオミと共に薊も変化する作品だと思いますが、長澤さんも宮澤さんと一緒に作り上げる部分がありましたか。
長澤さん
本当に二人で毎回違う関係性を演じなくてはいけなかったので、 悩みは一緒だったと思います。でも、そういったところも含めて、親友の役なのかなって思いました。
MC
三谷監督、この二人の女性の輝きはいかがでしたか。
三谷監督
長澤さんは、以前舞台を一緒にやりましたが、映画は本作が初でした。宮澤さんは、僕の映画作品では、今回が二回目になります。(「記憶にございません!」(2019年公開)/主演:中井貴一)これからも「出オチ女優」として、僕の作品には欠かせない人になるのかなと思います。(登壇者の皆さん&会場:笑)
宮澤さん
ひどいですよね。何だか私の扱いが雑なんですよね。
三谷監督
何か面白いですよね。
宮澤さん
今回も、台本を読んで「こういうことなんだな」って思っても、三谷さんの演出は愛だと思って、一回は嫌だなって思いながらも、咀嚼して演じました。
MC
やはり、宮澤さんは三谷監督の演出意図をパッと理解できる女優さんという感じですか。
三谷監督
そうですね。嫌そうな顔は一回されますが、ちゃんとやってくれます。どんどん進めていけるので、とても感謝しています。
MC
「出オチ女優」って、ちょっと強めの言葉だなと思ったので、フォローするチャンスをと思って、もう一度聞いたんですが…。(登壇者の皆さん:笑)
三谷監督
そういう意図があったんですね(笑)。
「最高の出オチ女優」です!(登壇者の皆さん&会場:笑)
MC
三谷監督、本作の宣伝コピーでは、「最高傑作」という言葉が使われていますが、三谷監督にとっては、本作の位置付けはいかがでしょうか。
三谷監督
それは、僕が言っているんじゃないんですよ。僕が新作を作るといつも「最高傑作」って宣伝部の方が付けてくれます。でも、「本作は最低でした」っていうのもひどい話ですしね。(登壇者の皆さん&会場:笑) やっぱり最高のつもりで作品は作っています。特に、僕は、演劇出身の人間なので、「一度演劇のような映画を作ってみたい」とずっと思っていたんです。舞台は大体一カ月稽古をして、一カ月間本番公演をやりますよね。公演の終わりぐらいには、俳優さんと役が同化して本当にすごい境地まで行くんですよ。そういうお芝居を、映画でも観てみたいと思ったんです。
映画は、どうしてもスケジュールのこともあるし、それが悪いとは思わないですが、撮影の日に初めて読み合わせをして、リハーサルをやって、勢いで撮っちゃうみたいな、瞬発力が求められる現場なんですよね。だから、あえて映画を演劇みたいにいっぱい稽古して、みんなでたくさん試行錯誤しながら固めていくと、そこで生まれるものもきっとあると思うんです。そんな作品を一回作りたいなと思っていました。それで、今回やってみましたが、とってもその効果はあったと思います。
僕は、本当に俳優さんが好きで、俳優さんが輝いている作品が一番だと思っている人間です。今回は、長澤さんも、五人の夫も、他の皆さんも、本当に素敵なお芝居をしてくれました。それが映画作品として残ったのは、僕はある種財産だと思うし、本当に最高傑作になったと思っております。
■フォトセッション
三谷監督
「目指せ興行収入30億」というのがあったんですが、皆さんのおかげで、だんだん見えてきたというか、30億がすぐそばまで迫っております。これって、本当にすごいことなんです。本作はオリジナル作品なので、原作もないし、ベストセラーになったものを映画化したわけでもありません。ドラマのスピンオフでもないし、皆さんはお分かりだと思いますが、アニメでもないんですね。(登壇者の皆さん&会場:笑) なのに、もうちょっとで30億にいきそうだというところまで来ている。これは、本当に大変なことだと僕は思っています。
出来れば、もっともっとたくさんの人に観てもらいたいと思っています。オリジナル作品の映画が力を持つことは、日本映画を底上げしていくと思います。皆さんには、何度も観ていただきたいと思います。お友だちも、ご家族も、おじいちゃんおばあちゃんも誘ってください。ファミリーで観ても楽しめる作品になっています。ぜひ、皆さんで「スオミの話をしよう」を映画館で観ていただきたいと思います。
長澤さん
本作は、撮影をする前に一カ月近くみんなで稽古を重ねた、他にはない作品かもしれません。稽古の中で、みんなで作ってきた関係性がとても良いものになって、現場での温かさや、朗らかさがこの作品に詰まって素敵な作品に仕上がったと思っています。今は、たくさんの人に届いたら良いなと思っていますし、私も映画館に足を運ぼうと思っています。ぜひ、皆さんにも気に入ってもらえたらなと思っております。本日はありがとうございました。