「沈黙の艦隊」完成報告会&完成披露舞台挨拶

2023.08.24
  • 完成披露

完成報告会&完成披露舞台挨拶

1988年から1996年まで週刊漫画雑誌「モーニング」(講談社)にて連載され、累計発行部数3200万部(紙・電子)を誇る大ヒットコミックを実写映画化した「沈黙の艦隊」が、いよいよ9月29日に劇場公開を迎えます。8月24日には東京都内で完成報告会と完成披露舞台挨拶が開催され、大沢たかおさん、玉木宏さん、水川あさみさん、ユースケ・サンタマリアさん、中村倫也さん、中村蒼さん、笹野高史さん(完成披露舞台挨拶のみ)、夏川結衣さん、江口洋介さん、吉野耕平監督、原作者のかわぐちかいじさん(完成報告会のみ)、Amazon スタジオのダナエ・コキノスさんが出席し、作品に込めた熱い思いを語りました。この日の模様を詳しくレポートします!

海江田四郎役

大沢たかおさん

海江田四郎役

深町洋役

玉木宏さん

深町洋役

速水貴子役

水川あさみさん

速水貴子役

南波栄一役

ユースケ・サンタマリアさん

南波栄一役

入江蒼士役

中村倫也さん

入江蒼士役

山中栄治役

中村蒼さん

山中栄治役

竹上登志雄役

笹野高史さん

竹上登志雄役

曽根崎仁美役

夏川結衣さん

曽根崎仁美役

海原渉役

江口洋介さん

海原渉役

吉野耕平監督

原作者

かわぐちかいじさん

原作者

Amazon スタジオ ローカルコンテンツディレクター

ダナエ・コキノスさん

Amazon スタジオ ローカルコンテンツディレクター

【完成報告会】

大沢さん

本日はご来場頂き、ありがとうございます。短い時間ではありますが、少しでもこの作品の魅力が伝われば良いなと思っております。

玉木さん

僕も二、三日前に完成した本作を観たんですが、台本で読んでいた以上に非常に素晴らしい作品に仕上がっていると思います。

水川さん

(会見の幕開けに会場に流れた)予告編を観ただけでも重低音が体に響くようで、ものすごい迫力が今もまだ体に残っています。今日は短い間ですが、よろしくお願いいたします。

ユースケさん

皆さん、今日はようこそいらっしゃいました。海軍ナンバーワン、ソナーマン。“みんなの南(なん)さん”こと南波栄一役を演じました、ユースケ・サンタマリアです。今、初めて最新の予告を観たんですが、僕が一切映っていないことにびっくりしました。(登壇者の皆さん&会場:笑) その代わり、大沢さんの船に乗っていたソナーマンの彼がいっぱい映っていました。僕は劇中でメガネをかけているんですが、彼もメガネをかけていました。彼の方が有能に見える。(登壇者の皆さん&会場:笑) それがちょっとショックでした。
僕もつい先日、完成した本作を観たんですが、本当に面白かったので、早く皆さんに観てほしくて、うずうずしています。

中村倫也さん

先ほどから皆さんもおっしゃっていることではあるんですが、自分が関わっている作品ですが、僕も完成作を観た時に鳥肌が立ちました。予告を観て「面白そうだな」と期待して観に行ったとしても、予告の期待値を遥かに超えてきます。ぜひ早く皆さんに同じ興奮と驚きと感動を届けたいと、楽しみに公開を待っています。

中村蒼さん

壮大なスケールの作品に参加できて、そして大沢さんと共に撮影することができて、すごく嬉しく思っていました。潜水艦での話なので、撮影中は暗い中での撮影でした。
今日はついに一足先にお客さんに観てもらえるということで、とても嬉しく思っています。

夏川さん

私も先日本作を観ました。私は政治部(のキャラクター)を演じましたが、「潜水艦の中はこうなっているんだ」と一観客として十分に楽しんでしまいました。これから観るたくさんの方々にも大満足していただけると思います。

江口さん

僕は、海原という内閣官房長官を演じました。現場でもプロデューサー、大沢くん、スタッフとかなり長い間をかけて、準備をしました。大沢くんと玉木くんの二人がツートップで進むこの物語の中で「自分はどういう立ち位置か」と思いながら、脚本を読みましたが、予想をかなり超える大エンターテインメントでした。今は配信などいろいろとありますが、「劇場で観る大きな価値がある」作品が完成したと思っています。ぜひIMAXで、深海を感じてもらいたいと思っています。ぜひ感想を世の中に広めてください。よろしくお願いいたします。

吉野監督

僕がずっと憧れてきた物語を、この素晴らしいキャスト、スタッフと一緒にチャレンジできたことに、今幸運をすごく感じています。

かわぐちさん

一足先に試写を観ました。いかにこの作品が面白かったかということを、この場で皆さんに伝えたいと思います。期待して待っていてください。

コキノスさん

「沈黙の艦隊」の完成をお祝いするために、アメリカのシアトルから来日しました。私もこの日を大変楽しみにしていました。

MC

コキノスさんに伺います。Amazonスタジオが満を持して、日本の実写映画を世に送り出します。マスコミの皆さんに向けてメッセージをお願いいたします。

コキノスさん

世界的に人気の漫画であり、実写化が不可能だと言われてきた「沈黙の艦隊」の映画化の製作として携われたことを大変光栄に思います。それと同時に、レガシーであるこの漫画をしっかりと実写化しなければいけないという責任を感じてまいりました。素晴らしいキャストの皆さん、関わってくださった全ての方々のおかげで、大変素晴らしい作品になったと思います。
まず、この映画の成り立ちからお話をいたします。かわぐちかいじ先生が描かれた作品に感銘を受けた松橋真三プロデューサーがプロジェクトを立ち上げて、才能あふれる大沢たかおさんとAmazonスタジオに声をかけてくださいました。こちらにいらっしゃる皆さんをはじめ、素晴らしい俳優の皆さん、日本の才能あふれるクリエイターたちと共にこのプロジェクトに関われたことを嬉しく思います。そしてもう一つ、プロジェクトの開始当初から多大な支援をしてくださった防衛省、海上自衛隊の皆さんにも感謝いたします。これだけの壮大なスケールで実現できたことに、非常に感謝しています。
Amazonスタジオは日本ではまだ新しいと言っても良いかもしれませんが、世界的にはこれまでも、ベン・アフレックとマット・デイモン主演の映画「AIR/エア」(2023年4月公開)や、アカデミー賞を受賞した映画「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」(2021年10月公開)など数々の世界的な映画を劇場公開してきました。そして私たちとして初の日本での劇場映画が、「沈黙の艦隊」のような野心的なプロジェクトであることを大変誇りに思います。

MC

大沢さんは本作では主演だけではなく、プロデューサーとしても参加しています。本作には、どのように携わられたのでしょうか。

大沢さん

最初に企画が立ち上がった時に、松橋プロデューサーから「こういうものにトライできないか」と声をかけていただきました。この原作を知っている人から見れば、とても(実写化するには)ハードルの高い作品だと思います。スケールもありますし、もう一つには核の問題などタブーに真っ直ぐ切り込んでいく作品だということです。また、防衛省や海上自衛隊の協力を得ることができるのかという二つの大きな課題があるところからのスタートでした。
「実現するのは難しいかな」と思いながらも、時間を掛けて、ゆっくり一つ一つ進めていきました。その中でAmazonさんや、ここにいる皆さんに協力していただいて、まずスケールが確保できて、そして防衛省、海上自衛隊の皆さんに「(「沈黙の艦隊」を実写映画化するのは)今だからこそ良いんじゃないか」「協力したい」と快い言葉をいただいたことで、プロジェクトが始動しました。自分がメインでやるところは、そこまで辿り着くことだったので、あとは俳優としての仕事をメインで行いました。この場に来ると「すごく長い道のりだったな」と思いつつも、今日はようやくスタートラインに立っているので、ワクワクドキドキしている最中です。

MC

吉野監督に伺います。潜水艦映画という、エンタメ大作に挑戦された感想を教えてください。

吉野監督

潜水艦の中というのは、窓が一つもなく、周りは真っ暗闇というかなり特殊な環境です。そういった中での非常にスリリングな物語になります。また地上でも同じように、非常にスリリングなやり取りが続いていくという原作を脚本化して、映画として「どのような形にしていこうか」と非常に悩みました。キャストの方々の熱いエネルギーにも背中を押され、そして、技術・CGのスタッフたちの中にも「これを形にしたい」という原作を愛している方々が非常に多かったということもあり、公開まで結びつけてくれたのかなと思っています。ぜひ多くの人に楽しんでもらいたいと思います。

MC

かわぐち先生は、完成された作品をご覧になっていかがでしたでしょうか。感想を教えてください。

かわぐちさん

漫画も映画も、登場人物や人間が生きていないと、その世界が嘘八百に見えてしまいます。そういう世界なんですね。海江田艦長を映画の中で観た時に、「海江田艦長が生きている」という力を感じました。そして彼が動くと、その周りの登場人物たちもみんな生き生きとしてくるんです。それは海江田艦長が、力を持って物語を引っ張っていき、皆さんが、この物語を生き生きと作り上げているんだと感じました。また本物の潜水艦が登場するという、本物の力、圧力のようなものを本作を観てひしひしと感じました。原作では物語の要素があちこちに散らばっているんですが、そういった枝葉をきちんとそぎ落として、テーマにピシッと焦点を合わせた演出をしている、監督の力にも感動しました。「自分の漫画の面白さを再確認させていただけた」という気持ちでいっぱいです。

MC

海江田を演じる大沢さんと、深町を演じる玉木さんをご覧になっていかがでしたでしょうか。

かわぐちさん

漫画の原作では、「海江田艦長と深町艦長はライバル」ということしか描いていないんです。ライバルだから、彼らは角を突き合わせる(仲が悪くて、何かにつけて争っている)し、お互いを認め、お互いを許さないという関係になっているんだと説明をしています。でも、映画でそれを描くとなると「その関係はどういうところから生まれているのか」ということをきちんとストーリーで説明しないと、よく分からないものになってしまうんですね。本作を拝見してみると、「なぜ深町は海江田を追いかけるのか。なぜ許せないのか。なぜ認めるのか」ということが、きちんと説明されています。漫画とは違って、映画は二時間ぐらいの間に、きちんと観客の皆さんにも分かってもらえるようにすることが条件になりますが、そういったシナリオがきちんとできていたと思います。本作を観て、非常に「あ、そうだな」と納得しました。

MC

ご出演者の皆さんにも、撮影中のエピソードや役作りについて伺いたいと思います。
まずは潜水艦<シーバット>の乗組員を演じた皆さんからお聞きします。大沢さんは、海江田という人物をどのように捉えて演じていましたか?

大沢さん

シンプルに言ってしまうと、海江田は主人公なんですが、実はこの人はテロリストで、反旗を翻して、自分の理想を求めて走り出し、仲間を連れて謀反を起こしてしまうという人物です。先生の描かれた原作だと、(海江田は)すごく顔が凛々しくて、男っぽくて、骨っぽいんですが、残念ながら僕は結構真逆だったんですよね。(登壇者の皆さん&会場:笑) そういった中で今の時代、今にしかできない映画作りや映画の構造の中で主人公を演じることができないかと思い、自分なりの解釈を新しく入れながら、演じました。

MC

映画を拝見したところ、海江田という主人公は、必ずしも正義の味方、スーパーヒーローではないと感じました。

大沢さん

おっしゃる通りですね。映画では「主人公が成長していく」というのが、多くの物語のベースになっていると思うんですが、この作品はとても面白くて、全く新しいものになっています。主人公の成長物語というよりも、玉木くんが演じた深町や、江口くんが演じた海原など、周りの人々みんなが実は主人公なんです。海江田が事件を巻き起こして、周りのみんながどんどん「これはどうする」「日本はどうする」と解決していこうとする中で成長していくんです。これは新しい構造の映画だなと思っています。僕が演じる海江田は、事件を引き起こしていきます。そしてここにいるみんなが主人公であり、みんなが成長していく様を描いている映画だと思っているので、バタフライエフェクト(非常に小さな出来事が予想もしていなかったような大きな出来事につながること)のようにみんなに影響していくという、そういったみんなの姿が見どころだと思っています。

MC

玉木さんとの共演はいかがでしたか?

大沢さん

(玉木さんとは)乗っている艦が違うんですね。僕は<シーバット>、玉木くんは<たつなみ>という艦に乗っています。ほとんど一緒にならないので、撮影は一日だけしか一緒になりませんでした。一日だけ、声のみで会話をするシーンがあったんです。そういった場合、通常はスタッフがやったり、録音で対応するんですが、玉木くんに呼び出されまして…(笑)。

玉木さん

呼び出してはいないんですが(笑)、来ていただきました。

大沢さん

そこで<たつなみ>チームを見た時に、みんな本当に集中していたし、「潜水艦乗りのような顔付きだ」と思えるすごく厳しい顔をしていました。我々の部隊も頑張らなきゃなと思わせてくれました。

玉木さん

(オファーをいただいて)大沢さんと共演できるんだなと思いながらも、潜水艦が違うと撮影では一緒にならないんですね。「今回どれくらいご一緒できるのかな」と思っていたところ、大沢さんがわざわざ足を運んでくださって、声のやり取りに付き合っていただきました。(録音ではなくて)大沢さんの生のお芝居で合わせていただくと、非常に緊迫感が上がりますし、それがきちんと画にも表れてくると思うんです。すごく助かりました。ありがとうございました。

大沢さん

ちなみに僕の声の時は、来てくれなかった(笑)。

玉木さん

(笑)。スケジュールを全く把握できておりませんでした。すみません!(登壇者の皆さん&会場:笑)

MC

中村蒼さんにもお伺いします。今回、大沢さんと共演されていかがだったでしょうか。

中村蒼さん

本当に素晴らしかったです。僕たちが乗っている<シーバット>は最先端の潜水艦なんですが、それを生かすも殺すも、僕たちのような潜水艦に乗っている人間です。だからこそ際立つ、海江田さんのすごみのようなものがあったと思います。僕たち乗組員は、そのすごみや海江田さんに魅了されて、相当な覚悟を持って<シーバット>に乗り込んでいるので、そういう気持ちに自然とさせてくれるような存在感を、大沢さんはめちゃくちゃ放っていました。僕たち乗組員は、自然と大沢さんの背中を見て役作りしていました。劇中では<シーバット>で一生懸命に任務をこなすんですが、みんなが「少しでも大沢さんに近づきたい」という気持ちで撮影していました。

MC

潜水艦<たつなみ>のメンバーである玉木さん、水川さん、ユースケさんにお伺いします。オファーを受けた時の感想を教えてください。

玉木さん

僕はこれまでも潜水艦ものを何作かやっていて、もちろんその大変さも分かりつつ、その面白さも分かっているので「すごく楽しみだな」と思ったことを覚えています。かわぐち先生の原作は30年ぐらい前のものではありますが、 今読んでも全く色褪せていない感じがします。今だからこそできる技術もあると思いますし、「今やることの意味を考えながら、撮影に臨もう」と思ったことを覚えています。

MC

水川さん演じる速水は、女性乗組員となります。オファーを受けた時の感想をお聞かせください。

水川さん

原作では、速水という役は男性なんです。今回の劇場版では、私が女性として演じるということになりました。女性の私が速水を演じるということで、「私の役割は何なのかな」と考えた時に、実際に今は艦隊員の中にも女性がすごく増えてきていると伺いました。副長という艦長の右腕として、すごく重要な立ち位置で女性が活躍するという、速水の覚悟や葛藤をしっかりと自分の中で感じることで、女性にも観ていただけるような目線を作れたら良いなと思って、撮影に臨みました。

MC

ユースケさんは、オファーを受けていかがでしたでしょうか。

ユースケさん

「Amazonスタジオ、分かってるー!」と思いました。(登壇者の皆さん&会場:笑) 僕はもともと原作を読んでいたんですが、実写化する際にまさか自分が参加するなんて思っていなかったし、ソナーマンという役柄も演じたことはありませんでした。ただ僕も昔から潜水艦が主人公の映画というのは、海外のものも含めてよく観ていて、なんとなく馴染みがあったので、勝手に「やれる」と思っていました。今回本当に光栄でした。そしてうちの<たつなみ>にはあさみちゃんをはじめ二名の女性がいるんですが、それが良かったですね。(登壇者の皆さん&会場:笑)
やっぱり(ジュディ・オングさんの楽曲「魅せられて」の歌詞を引き合いに出しながら)「女は海」とはよく言ったもので、<シーバット>の様子を映像で観ていると、全員男性なので「みんな大変そうだな」と思いました。ソナーチームにも一人女性がいますし、それだけで現場がちょっと和むので、緊張感もありながら、現場の雰囲気はとても良かったです。

MC

中村倫也さんは、吉野監督とタッグを重ねています。役どころや監督の印象を教えてください。

中村倫也さん

役どころとしては、どこまで話して良いのかちょっと分からないんですが…(苦笑)。自分の役柄に起きるある出来事が、登場人物たちの行動に影響を与えるといった、 ある種のキーパーソンとなるようなキャラクターです。吉野監督とは三回目になります。ご本人は現場で「緊張している」「悩んでいる」とおっしゃっていたんですが、存在感や、監督としての説得力がどんどん増しているのを感じています。それは完成作を観た時に、なおさら感じました。こんなにもド正面から人や物を撮って、こんなにも説得力と重さと圧力を出せるってすごいことだなと思います。完成作を観て「監督には自信があったんだ」と思いました。画や音響がすごい作品などいろいろとあると思いますが、潜水艦って情報が少ないじゃないですか。本作は潜水艦を舞台として描かれる物語なので、外の景色がないんですよね。だけど完成した作品を観ると、すごく情報に溢れているんです。原作を元に作品を作りながら、なかなかそこまで潜水艦の中で起きる物語をしっかりと描くということは本当に難しいミッションじゃないかと思っていたんですが、見事にそれを成し遂げていたので、僕は鳥肌が立ったんです。また何かやる時は、呼んでください。
(吉野監督の方を向きながら)これだけ褒めたのでお願いします。(登壇者の皆さん&会場:笑)

吉野監督

元気が出ました! またよろしくお願いします。

MC

日本政府のキャラクターを演じた皆さんは、演じる上でどういったことを意識していましたか?

江口さん

撮影パートがすごく分かれていて、僕は最後の方の撮影で、もうお二人(大沢さん、玉木さん)の撮影は終わっていました。海の中の世界が描かれる中、官房長官を演じた僕は陸上にいるんですが、役作りのために今まで撮った映像や、これからCGをつける部分など、監督が丁寧にいろいろと観せてくれました。それを参考に自分の立ち位置を考えながら、やっていきました。海原は、こういう事件が起こった時に、揺れ動く国民の目線のような、動揺を表現する役だったように思います。決して強い男を演じたわけではなく、日常の幸せの裏にある、「何かがこれから起こりうるかもしれない」ということへのディフェンダー(攻撃から自陣を守る人)のような役です。またいろいろな資料を見せてもらったり、監督とやり取りする中で、「海江田はただの狂人ではないだろう」という憶測を持ちながら戦っていく、という役柄を作り上げていきました。すごく楽しく、安心して演じることができました。

夏川さん

私は、閣僚の役をオファーしていただいたことが初めてでした。私には貫禄や説得力など、そういったものが欠けているので(苦笑)、「どうしたものか」と迷いましたが、そんな役をオファーされることはそうそうないことなので、「これから先、もうないかもしれない」と思ったら、「これはやっておかなければ」と自分でも楽しめるようになりました。皆さんとご一緒することで、一つ自分に何か得るものがあるように感じました。監督から撮影初日に話しかけていただいて、曽根崎の立場や派閥、総理大臣との距離感、他の政治家の方たちとの距離感など、曽根崎には曽根崎の立場があるんだという、曽根崎の役割に関して説明をいただきました。それからすごく演じやすくなったというか、その初日の話し合いがとても的を得ていたので、 私の中で「この監督と一緒にやっていくのは楽しそうだ」と思うことができました。

MC

原作の連載から30年の時を経て、豪華なキャストの皆さんによって映画化されました。かわぐち先生は、キャスティングについてどのように感じていらっしゃいますか。

かわぐちさん

この漫画を描いたのは30年前なんですが、その当時は女性自衛官や閣僚の方はほとんどいなかったんですね。だから漫画の世界は、男性だけの社会で描いています。それから30年経って、昨日の試写で映画を観た時に、女性が活躍していました。「これは今なんだ。これは現代の物語である」とすごい力を持ってアピールできていました。良かったなと思いました。

MC

最後に大沢さんから、ご挨拶をお願いいたします。

大沢さん

改めまして、本日はご来場いただきありがとうございました。何度か言葉に出ていますが、「今だから」ということだと思っています。もちろんご存じかと思いますが、原作はかわぐち先生が30年前に描かれた漫画で、「それがなぜ今(実写化)なのか」というのは、自分でも不思議に思っています。実はこの話は二年前ぐらいから、準備を始めていました。当時は、うまくいくか、いかないかという感じもあったんですが、いろいろなご縁があってうまくいって、撮影が終了して、ようやく来月に公開となります。撮影当時には起きるとは思わなかった、ロシア、ウクライナ問題や、潜水艦の悲劇的な事故など、作品のテーマに関連することがいっぱい起きて、複雑な思いの中で、ようやく作品が完成しました。それもこれもタイミングを狙っていたわけでもなく、なぜかこのタイミングになったということは、作ったというよりも「作れ」と言われているのかなと思えてきます。防衛省の皆さん、海上自衛隊の皆さんからも「今だから、ぜひ協力したい」という言葉をいただき、30年前の当時「問題作だ」と話題になった作品が、30年の時を超えて2023年に映画として観ていただいても、おそらく議論を巻き起こすような問題作になるのではないかと思っています。ぜひ皆さんで議論していただきたいと思います。また僕も皆さんの議論を耳にしながら、これから先どのように自分が生きていけば良いのかと、この作品を通して、これからの人生においてもいろいろと参考にさせてもらいたいと思っています。もちろん大エンターテインメントなので、皆さんに楽しんでもらいたいのは前提なんですが、「今だからこそ」ということも思いながら観ると、より楽しんでいただけると思います。来月公開ですが、この後は完成披露もあります。そこで初めて一般の方のリアクションを聞けると思うので、ちょっとドキドキしていますが、ぜひ宣伝にご協力していただければと思います。本日はどうもありがとうございました。

【完成披露舞台挨拶】

■日本で初めて海上自衛隊、潜水艦部隊の映画撮影協力を得て、実際の潜水艦を使用しているという本作。会場に浜田靖一防衛大臣や、制服に身を包んだ海上自衛隊の方々も駆けつける中、舞台挨拶がスタートしました。

MC

日本初の原子力潜水艦に核ミサイルを搭載し、反乱逃亡する海江田四郎役を演じられた、大沢たかおさんです。

大沢さん

急に「逃亡した男」と紹介されるのも 不思議な感じです(笑)。実はこの作品は今週の月曜日に完成した出来たてホヤホヤなので、僕も月曜日に観たばかりです。一般の方に観ていただくのは、もちろん今日が初めてです。そういう意味ではドキドキと不安もたくさんありますが、今すごくワクワクした瞬間を感じております。 上映前の舞台挨拶も少しお付き合いいただき、今日の試写を楽しんでいただければと思います。

玉木さん

台本を読んでいた時以上に、素晴らしい作品が出来上がったと僕も思っております。お客さんに観ていただくのは今日が初めてになります。観ていてハラハラドキドキするような時間が続くと思いますので、ぜひ最後まで楽しんでご覧ください。

水川さん

こんにちは、水川あさみです。速水を演じました、水川あさみです。フフ…(と笑いが込み上げてしまい、登壇者の皆さんからツッコまれながら)ごめんなさい、失礼しました。自己紹介のコメントを間違えました。女性の艦隊員を演じたんですが…(声が震えてしまい、登壇者の皆さんから「頑張れ!」と声がかかる)。一回(ツボに)ハマるとこういうことになってしまいます。失礼しました。
私は女性の艦隊員を演じたんですが、(会場に駆けつけた、女性の海上自衛隊員の姿を見て)目の前に女性の隊員の方がいらっしゃるので、今ホッとしています。

ユースケさん

海軍ナンバーワン、ソナーマン。“みんなの南(なん)さん”こと南波栄一役を演じました、ユースケ・サンタマリアです。(登壇者の皆さん&会場:笑) 僕は新しい予告には出ていませんが、本編にはしっかりと出ています。(登壇者の皆さん&会場:笑) 皆さん、これからご覧になってちゃんと私が出ていることを確認してください。

中村倫也さん

きっとすごく本作を楽しみにしていらっしゃると思いますが、予想を超えてくる興奮を体感できると思います。僕が撮ったわけではないので「何を偉そうに」という感じですが(笑)、楽しんでいただければ嬉しいです。

中村蒼さん

心地の良い緊張感の中で撮影でき、毎日セットの豪華さ、そして出演者の方々のお芝居に圧倒されながら撮影をしました。そんな作品を今日は公開より一足先に皆さんに観てもらえるということで、すごくワクワクしております。

笹野さん

仮にも、総理大臣役をやらせていただきました。ありがとうございます。(念押しをするように)総理大臣でございます。(会場:笑)
ご覧になると分かりますが、本作はとても“密”でございます。気弱な総理大臣を演じたことから私は、非常に息苦しくもありました。(登壇者の皆さん&会場:笑) 覚悟してご覧ください。本作を観ると、まるで潜水艦の中にいるような感じで、「ああ、これが監督のやりたかったテーマなんだ」と思って、改めて監督に拍手を送りたいと思いました。
私、総理大臣役をやらせていただきました。(再びの念押しに、会場:笑) ありがとうございました。

夏川さん

何の貫禄もなく、説得力もない人間が、防衛大臣という大役をいただきました。(オファーを受けて)相当悩みましたが、こんな機会は滅多にないことだと思って臨みました。本当にこのチームに入れて良かったと思っています。私も、二日前に完成作を観ました。想像以上に面白く、内容は分かっているのに、いちいちびっくりしている自分がいました(笑)。本当に楽しんでいただけると思うので、ぜひ皆さん今日は楽しんで帰ってください。

江口さん

僕の官房長官という役は、劇中で描かれる大事件が起きた時に、日本国民はどのように右往左往するのかという部分を担っています。官房長官という立場ですが、それを国民と一緒になって目にして、その気分を代弁するような役です。内容としてはいろいろと深いものがたくさんあるんですが、本作のスクリーンのサイズで深海の映像を観たら、「トップガン」で描かれていた空の深海版というような、潜水艦がバーッと水の中を進むシーンにも本当に素晴らしい迫力があると思います。またこれはデートムービーにもなるんじゃないかと思っております。最初に漫画読んだ時に「男臭い内容だな」と思っていたんですが、出来上がった作品を観ると、映像の美意識もすごく高いですし、ハリウッドに負けないような「日本映画もここまで来ているんだ」と感じさせる作品になっています。今日は観た後に、いろいろと宣伝してください。どうぞよろしくお願いします。

吉野監督

自分自身、元々大好きだった原作を、素晴らしいキャスト、スタッフと一緒に夢中になって作れたことが本当に幸せだと思います。今日は初めての試写になりますが、ぜひ楽しんでいただければと思います。

MC

Amazonジャパンを代表し、ローカルコンテンツディレクターのダナエ・コキノスさんがアメリカ・シアトルから来日してくださいました。ご挨拶をお願いいたします。(コキノスさんがステージに上がる)

コキノスさん

皆さん、コンバンハ(日本語で挨拶、会場:拍手)。
本作の始まりとしましては、かわぐちかいじ先生が描かれた作品に感銘を受けた松橋真三プロデューサーがプロジェクトを立ち上げ、大沢たかおさんとAmazonスタジオに声をかけてくださいました。日本の素晴らしいクリエイターたちと共にこのプロジェクトに携われたことを嬉しく思っています。またプロジェクト開始当初から多大な支援をしてくださった防衛省、海上自衛隊の皆さんにも感謝いたします。本作を皆さん、どうぞお楽しみください。
アリガトウゴザイマス。

MC

今日は、本作にご協力いただきました防衛省、海上自衛隊の方もいらっしゃっております。浜田靖一防衛大臣、そして海上自衛隊の皆さんです。

■会場に駆けつけた防衛省、海上自衛隊の方々が立ち上がって挨拶をされました。

大沢さん

この作品は、防衛省、海上自衛隊の協力なくしては、到底完成することができなかったと心から思っています。初めて「映画化したい」とご相談するためにお邪魔した時に、「今だからこそやるべきじゃないか」と笑顔で後押ししていただきました。その後もいろいろな無理難題をお願いしても、いつも笑顔で優しく見守って、支えてくださったことを改めて嬉しく思っています。そして今日この場に来ていただいたこと、今日初めてこの作品を観ていただけることは、嬉しい反面、ちょっと緊張や不安もあります(苦笑)。我々が精一杯力を込めて作った作品を観ていただければ嬉しいです。今日はご来場いただき、ありがとうございました。(会場:拍手)

MC

核ミサイルなどタブーに切り込んだ作品となります。防衛省の方々とお話をされて、印象に残っていることを教えてください。

大沢さん

自分の中では、核の問題だけではなく、我々の安全や国防とか安全保障などいろいろな思いがあったので、そういった自分の中で抱えていた思いを全部正直に伝えました。自分なりの素人の言葉だったんですが、それを笑うこともなく、皆さん一生懸命聞いていただき、そこをご理解くださいました。その上で「これは面白いんじゃないか。協力するからやってみてください」と言っていただいたことを、僕は今でも覚えています。

MC

大沢さんは、プロデューサー、そして主演として本作に携わっています。海江田という役については、どのようなことを意識して演じられましたか。

大沢さん

世の中ではテロリストと言われる形にはなるんですが、彼は彼なりにきっといろいろな問題を抱えていて、それを何とか打破するために、彼の道を歩み出したんだと理解しています。本作を観ていただくと分かるんですが、本作では海江田が主人公ではあるんですが、実は「みんなに何かに気づいてもらうため」のきっかけとなるような役で、周りにいるみんなの成長物語だと思っています。海江田はいろいろな問題、疑問を投げかけると思います。登場するみんなと一緒に、(映画をご覧いただく)皆さんにも何かを感じていただけたら嬉しいです。

MC

玉木さん、水川さん、ユースケさんは、海上自衛隊の潜水艦<たつなみ>の乗組員であるメンバーを演じています。撮影中にあった、印象深い出来事を教えてください。

玉木さん

潜水艦というのは、大変な空間だと思うんです。撮影で擬似体験していても、閉塞的な空間なんです。撮影の合間には外に出て、みんなで談笑しました。それが良いチーム感が生まれるための時間だったと思います。

MC

玉木さんは、これまでも潜水艦が登場する映画に出演されています。

玉木さん

今回で(「真夏のオリオン」2009年公開/主演:玉木宏、「空母いぶき」2019年公開/出演:西島秀俊、佐々木蔵之介、に続いて)三作目になりますね。

MC

本作のオファーを受けた時には、どのように思われましたか?

玉木さん

(潜水艦の登場する作品に何度も出演する俳優は)なかなか俳優の中でもいないと思うんですが(会場:笑)、毎回良いチーム感がなければ乗り越えられない環境だと感じています。今回もユースケさんや水川さんなど、他のメンバーに助けられたと思っています。

MC

水川さんは、深町の右腕である副長役を演じて感じたのはどのようなことでしょうか。

水川さん

原作では、速水という役は男性なんですね。今回は、女性の私が速水を演じています。今の艦隊員の中には女性の方もかなり増えているということは聞いていたんですが、(会場に駆けつけた、女性の海上自衛隊員の姿を見て)今こうして「本当に結構いらっしゃるんだな」ということを目の当たりにして、とても嬉しいです。副長という重要な役割を自分が担っているという覚悟を抱えながら、速水役を演じました。そういった面で、女性にも観ていただける視点を作れたかなとは思っています。

MC

共演された感想はいかがでしょうか。(水川さんとユースケさんのどちらもが自分が話す番だと思い、お互いに譲り合い、周囲も大笑い)

水川さん

(ユースケさんと笑いながら)一緒に喋る(笑)? 
玉木さんがおっしゃっていたように、こんな感じで撮影中も和気あいあいとやっていました。潜水艦の中は狭い空間で、先ほど笹野さんがおっしゃっていたように“密”で距離も近いし、すごく暗いんです。実際の撮影でも、なかなかないぐらい暗くなかったですか?

玉木さん

暗かったね。

水川さん

すごく暗かったんです。その中にいるとすごくシリアスな気持ちにもなるし、緊迫感もあるんですが、外に出て(談笑をすることで)助走を付けて、またその中に入るという、切り替えを上手くやりながら撮影をしていました。談笑の時はずっと「何を食べるか」という話をしていました(笑)。

玉木さん

ずっと同じ場所にいるので、「何が食べたい」とかそういうこともよく話していましたね。

ユースケさん

だんだん弁当では飽き足らなくなってくるんですよ(玉木さん、水川さん:爆笑)。ちょっとでもうまいものを食べたくなって、撮影が休みになったら車でどこかに食べに行ったりとかして「どこ行った」という話をしていましたよね。

玉木さん

ユースケさんは、よく(ご飯を食べに)行かれていましたもんね。

MC

ユースケさんは、弟さんが元々原作の大ファンでいらっしゃると伺っています。

ユースケさん

よく知っていますね! うちの弟って、僕の仕事に全く興味がないんですよ。でも今回は「『沈黙の艦隊』に出ることになった」と言ったら、「『沈黙の艦隊』!?何の役をやるの!?南波!?」と驚いていました。あんな弟は初めて見ました。「良いじゃない!」と言って、弟の方が喜んでいるくらいです。今日(の試写会)は呼んでいませんが、呼べば良かったですね。(登壇者の皆さん&会場:笑)

MC

役柄については、監督とどういったお話をされましたか?

ユースケさん

監督からは別に何も…本当に面白いくらい何も言われていないです。 (登壇者の皆さん&会場:笑) ソナーマンの役を演じたんですが、僕も潜水艦の映画がすごく好きでよく観ています。ソナーマンってとても重要な役なんですが、あまり主軸としては描かれない職種だと思うんです。耳を頼りに(海中の音を聴く役ですが)、目をつぶって音を聴いているだけではなく、思いついたいろいろなことをやりました。すると監督には「OKです」と言われました。プロフェッショナルのソナーマンの方も現場にいらっしゃっていたので「今の大丈夫でしたか?」と尋ねたら、「バッチリです!」とおっしゃっていただきました。いろいろと厳しく指導されるのかと覚悟して現場に入ったんですが、すごく和気あいあいと参加してくださいました。内容的にはシリアスなものもありますが、僕としては本当に楽しく演じました。

MC

吉野監督は、演出する上でこだわったことはありますか。

吉野監督

潜水艦って、窓もないし、窓があったとしても外は真っ暗闇なので、そこには独特な世界が広がっているんです。映画って光で見せるものですが、その中でどのように本作を観る方に真っ暗闇の戦いをイメージしてもらうかということには、いろいろと工夫しています。ユースケさんのいらっしゃる一角はいつも楽しそうで、撮影中も「良いな」と思っていました。

ユースケさん

ありがとうございます。
別にふざけていたわけじゃないんですよ! (登壇者の皆さん&会場:笑)

MC

中村倫也さんは、吹き出してくる水を浴びるシーンもあります。とても過酷なシーンだったと思いますが、撮影で印象に残っていることエピソードがあれば教えてください。

中村倫也さん

大変でしたね。浸水してきたものを止めるというシーンでしたが、視界もないし、息もできない。水を止める作業をするというのは、もちろん生まれて初めてやりました。この辛さを誰かと共有したいなって思っていたんですが、現場には僕しかいなかったんです。非常に寂しかったですね。(登壇者の皆さん&会場:笑)
あのシーンは、とても立派なスタジオで撮っていたんですが、濡れたりした時のために体を温める用の温水プールみたいなものを用意してくださっていました。一人で(撮影まで)待っている間など、体が冷え過ぎないようにそこに入っているんです。でも一人でポツンと入っていたので、寂しかったです。(登壇者の皆さん&会場:笑)

MC

中村蒼さんは、海江田の右腕となる役どころを演じています。どういったことを意識して演じられましたか。

中村蒼さん

<たつなみ>の皆さんとちょっと違って、(海江田や山中が乗り込む潜水艦)<シーバット>には、独特な乗組員たちが集まっています。地上に全てを置いてきて<シーバット>に乗り組んでいるという、相当な覚悟を持っている人たちで、会話する内容といったら任務に関することだったり、相手の動きだったりということが多かったです。すごく良い緊張感の中での撮影でした。僕たちは最先端の技術を搭載した潜水艦に乗っているんですが、それを動かす海江田艦長のすごさが際立っていました。そのすごさを自然と感じるようなエネルギーが、大沢さんから発せられていたので、僕たちも背筋が伸びる思いで撮影をしていました。海江田艦長はあまり多くを語らない人なんですが、山中はその意志を汲み取って、乗組員たちにアドバイスをしたり、長い期間、海に潜る上でも、副長としてメンタルケアなどをしながら彼らを支える人間でもありました。山中ならではの乗組員たちに対する優しさみたいなものを、見せることができたら良いなと思いながら演じました。

MC

笹野さんは、内閣総理大臣を演じられました。撮影中に印象に残ったことはありますか。

笹野さん

(気弱な内閣総理大臣を演じたことから)私は、ただただ各大臣の方に満足いただければ、それで良いと思っておりました。(登壇者の皆さん&会場:笑)
私は若い頃、実際に船に乗っていたことがございました。貨物船の船員だったんです。その時に感じたことは、船に乗って海洋を走っていますと、そこだけで逃げることができない。「その船の上が一つの社会なんだ」と思っていました。通信長がいたり、船長がいたりして、けんかもありましたしね。劇中の潜水艦のことを思うと、「あれも一つの社会で、どこにも逃げ出せない社会が、ずっと海の中を動いているんだ」という緊張感を持ちながら、同時に「我々の政治班も日本を背負った大きな船に乗っているんだ」ということが分かりました。「どうしたら止められるのか」「美味しいご飯を食べさせたら良いんだろうか」とか、いろいろなことを考えて、ただただ皆さんが気持ち良くいられるのが大事というような、総理大臣でございました。ただ本当に嬉しかったのは、皆さんが仮にも「総理」「総理」と呼んでくださるので、それが一番の心地良さでした。皆さん、ありがとうございました。(登壇者の皆さん&会場:笑)

MC

同じく日本政府側の役柄を演じられた、夏川さんはいかがでしたでしょうか。

夏川さん

撮影の二日目に、大きな会議室でバシバシと大臣同士が議論するシーンがありました。まだ二日目なんですよ。私は緊張して震えていましたが、それを皆さんに分からないようにしていました。それにしても、(内閣官房長官役の江口さんの方を見つつ)受け入れ体制がすごく深いので、本当にありがとうございました。

江口さん

僕の話(笑)?

夏川さん

(笑顔を見せながら)政治部もなかなかのチームワークで、撮影をしていない時は和気あいあいとしているのに、撮影が始まると「仲が悪いの?」というぐらいビシッと緊張感を持って撮影をしていました。(自分が演じた)曽根崎さんは、厳しい人なんですよね。

吉野監督

そうですね。本人にその気はないけれど、厳しく映る人かもしれないですね。

夏川さん

なので、私を嫌いにならないでください。(登壇者の皆さん&会場:笑)

MC

声のトーンやたたずまいも、今ステージに立たれている夏川さんと全く違います。

夏川さん

役ですので。(登壇者の皆さん&会場:笑)

江口さん

僕が演じた海原は政治側の人間なので、チームワークを得たり、ちょっと議論が激しくなったりはするんですが、海江田の行方を追いながら、日本を背負ってディフェンダーになっているという役でした。官房長官ではありますが、「もし日本にこんなことが起きたら、どういう心境なんだろうな」という、一人の人間としても「こんなに恐ろしいことはないぞ」「自分だったらどういう判断を取るんだろうな」と思いながら演じていました。そこに国を背負う責任もあるので、 考え出すとかなりヘビーな役柄だったんですが、どこかであえてドライにというか、冷静に見ようとする役柄として、海原という役を作っていきました。

MC

吉野監督は、30年前に描かれた原作を現代に送り出す上で、どういったことを大事にしたいと思っていましたか。

吉野監督

30年前の作品なんですが、基本的には今抱えている問題とまったく同じことを描いていた作品なんだなと、本作を撮りながら改めて思っていました。こういった政治や戦いなど、どこか普段生活をしていると他人事と言いますか、「どこかすごく頭の良い人たちが何かをやってくれているんだろうな」と思ってしまうんですが、結局は同じ人間が知恵を絞ったり、その場その場でいろいろなことを判断していると思うんです。そういった意味では我々と変わらない。それは当時、原作を読んだ時も思いましたし、今回作りながらも思いました。もちろんエンターテインメントとして楽しんでいただいて、でも「これはどこかで自分とつながっているんだな」ということを少し感じてもらえるような物語なんじゃないかと思っています。

MC

最後に大沢さんからメッセージをお願いいたします。

大沢さん

改めまして、本日はご来場いただきありがとうございます。実写化不可能と言われたかわぐち先生が描かれた「沈黙の艦隊」が、30年の時を経て、防衛省の皆さん、海上自衛隊の皆さん、Amazonスタジオの皆さん、すべての皆さんの力のおかげで、今日こうしてお披露目することができたことを本当に感謝しています。“たかが映画”なんですが、僕はいつも“されど映画”なんだと、いろいろな思いを込めて作品を作り、参加するようにしています。この作品が願わくば、日本のそして世界の子どもたち、その次の子どもたちのより良い未来になる、一つのきっかけになればすごく嬉しいです。今日はぜひ皆さん、楽しんでください。ありがとうございました。(会場:拍手)