「ラストマイル」大ヒット御礼舞台挨拶
- 公開後舞台挨拶
「ラストマイル」大ヒット御礼舞台挨拶
人気ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」を手がけた、塚原あゆ子監督×脚本・野木亜紀子×新井順子プロデューサー、そして、主題歌・米津玄師という最強チームが新たに描く、映画「ラストマイル」が8月23日より公開されました。
9月19日、大ヒット御礼の舞台挨拶をTOHOシネマズ 日比谷にて実施し、満島ひかりさん、岡田将生さん、脚本家・野木亜紀子さんが登壇しました。質問コーナーや、全国から“配達”された感想コメントを抜粋した特大パネルをバックに、大ヒットへの万感の思いを語りました。こちらのイベントの模様を詳しくレポートします。
満島ひかりさん
舟渡エレナ役
岡田将生さん
梨本孔役
野木亜紀子さん
脚本
MC
ここで最新の数字を発表いたします。8月23日の公開から本日までの28日間で、興行収入40億円、観客動員数280万人を突破しております。(会場:拍手)
満島さん
すごく多くの方に本作を観ていただいているようで、本当にうれしく思っています。1マイル、2マイル、3マイル、4マイル、5マイルと、たくさんのマイルを重ねている方がいると聞きました。今日は質問に答えたりして、あたたかな時間にしたいと思っております。
岡田さん
僕も、毎日自分の元にたくさんの声が届いています。こんなにもたくさんの方に観ていただき、反響が大きく、「届いているんだなぁ」と感じています。すごくうれしいです。今日またこうして皆さんと集まれて、お話をする機会が得られて、本当にありがとうございます。楽しい時間にしようと思っております。
野木さん
本日は、塚原あゆ子監督が地方で日曜劇場(「海に眠るダイヤモンド」)の撮影をしており、来られないため、代理で私が来ました。ついでに宣伝しますと、日曜劇場の脚本を私が書いております。良ければ観ていただければと思います。(満島さん&岡田さん:笑)今日は「ラストマイル」ですよね。たくさんの人に観に来ていただけていること、大変喜んでおります。今日は、皆さん本作を観終わった後ということで、ほんの少しお付き合いいただけたらと思います。
MC
公開から本日で約一カ月を迎え、本当に多くの反響をいただいております。こちらのパネルには、映画の公式SNSの「感想“配達”キャンペーン」に寄せられました皆さんからの感想を記しております。満島さん、なんと何万通も寄せられたコメントの中から、選ばれた60通ぐらいのコメントをこちらに抜粋しています。
満島さん
何万通も来たんですか?!
MC
そうらしいですよ!
満島さん
すごいですね! 何が起きているんですかね。岡田さんに、一度「何かすごいことが起こっていますね」って連絡をしましたよね。
岡田さん
はい、本当にうれしいですね。
野木さん
ちょうど満島さんの後ろ(のコメント)に、「震える満島ひかりに震える」って書いてありますね! (満島さん:笑)
MC
皆さんの元にはどのような声が届いているのか、具体的な反響などを教えてください。
満島さん
反響は、めちゃくちゃあります。意外にも小学生からの反響もありました。小学六年生の友人のお子さんが、普段は私に会うと「おっ、芸能人」とか言うんです(笑)。でも、本作を観て、「あんなに面白い映画に出る人だったんだ」と言ってくれて、「あんな態度を取るべきじゃなかった」と思ってくれたようで、リスペクトしてくれるようになったことがうれしかったですね(笑)。
後、先日甥っ子二人と「クレヨンしんちゃん」の映画を鹿児島の映画館に観に行ったんですが、観終わって外に出たら、映画館のスタッフの方が八人ぐらい出迎えてくれました。
岡田さん
えー、そんなことがあるんですか!?
満島さん
スタッフの方が本作を「すごく面白かった」と言ってくれました。宣伝してくださっている映画館の方に直接お礼を言うことができて、うれしかったです。
野木さん
すごいですね!
満島さん
その時に「ラストマイル」のシアターに入っていく方を遠くからちょっと眺めたりもしました。「あー、こんなにたくさんの方が観に来てくれているんだなぁ」と思いました。今お話ししたのは身近な方からの反響ですが、観た後にこんなにも感想が鳴り止まない作品というのも、なかなかないと思います。初体験に近い感じがしています。皆さん、脚本の内容をすごく考察していますよね。野木さんの脚本は深堀りのしがいがあるので、「こうだったんじゃないか、ああだったんじゃないか」と内容を確認するためにもう一回観に行くという話を聞きました。ちょっと面白い現象が起きているなと思っています。
岡田さん
僕のSNSに「10マイル目(10回目の鑑賞)です」みたいな声が届きました。二桁も観ているなら「僕より詳しいんじゃないかな?」って思いました(笑)。それだけ夢中になって考察できる作品もなかなかないと思うので、「こんなにうれしいことはないなぁ」と思っています。
あと、今撮影しているNHKの現場で、(NHK連続テレビ小説「虎に翼」の)息子役の井上祐貴くんが、「これから『ラストマイル』を観てきます!」と言ってくれて、「ありがとうございます!」と返すやりとりをしました。(登壇者の皆さん&会場:笑)役者仲間の方からも「観たよ」と連絡をもらえるので、大変ありがたい気持ちでいっぱいです。うれしいです。
MC
今もお話に出ましたが、ラストマイルを観ることを「1マイル」「2マイル」と回数を「マイル」で表現するんですね。
岡田さん
最初は、意味が全然分からなくて、飛行機のマイレージのことかと思っちゃいました(笑)。
野木さん
私は、友人から、「劇場にパンフレットが売っていない」とか、「(欠品で)グッズが買えなかった」と言われました。たぶん再販されたものが、そろそろ映画館に届いている頃かと思うのですが、今こちらの映画館にはパンフレットはありますか? (スタッフから「あります!」の返答)あるそうです。じゃあ買えていない方は、ぜひ買って帰っていただければと思います。
パンフレットには袋とじもついていますからね。
岡田さん
袋とじがあるんですか?!
満島さん
え! もらっていないんですか? (会場:笑)
岡田さん
もらっていない…はさみでチョキチョキするんですか?
満島さん
あの彼が写っているんですよ!
岡田さん
ああ!ネタバレ厳禁の!
野木さん
でも、もう発表されているから!
その袋とじを、私の友人は乱丁だと思ったみたいで、「乱丁だった」って悲しい顔マークをつけての連絡をくれたんです。なので、「それはね、袋とじなんだよ!切ってみてもらえるかな」って返信しました(笑)。
MC
様々なグッズも売切れになるほど人気なのですね。
では、皆さんの後ろにあるパネルを見て、お三方それぞれ気になる感想をお願いします。
満島さん&岡田さん
「野木先生は絶望と希望を描くのが上手すぎます」
岡田さん
これは本当にそうですよね。
「なにかドキュメンタリーのようなものを見た気分」というのもうれしいですね。僕たちドキュメンタリー的な感覚で撮影していましたよね。
満島さん
撮影中は脚本に翻弄されていましたよね。
野木さん
「岡田将生はかっこいいな…」
満島さん
その前に「火野正平が好きすぎる」ってありますね(笑)。
野木さん
これが一人の方の感想なのが面白いですね(笑)。
岡田さん
火野さんと並べてもらえて本当にうれしいです!
満島さん
「『アンナチュラル』『MIU404』に続いて『生きろ!』と言われている。」
岡田さん
「Wしょうへいさんが影の主役!」って、本当にその通りですね。
野木さん
「満島さんが話していた“おじさん達がかわいい”の意味がよく分かった」というのもちょっと面白いですね(笑)。
満島さん
「おじさん、いちゃいちゃ映画。」おじさんバディがいっぱいいますよね(笑)。
岡田さん
これいいんじゃないですか? 「映画の副音声聴きたい。」って。
満島さん
ここにはないですが「舟渡エレナの下で、働きたくない」っていう感想を読みました。(岡田さん&野木さん:大笑い)
後は、「岡田さんの足が長すぎて、パソコンを覗き込む場面で体勢がキツそうだった」って感想も読みましたよ(笑)。
岡田さん
そこまでだったかな(笑)。
満島さん
「これを誰かと論じたい。」
「玄関先に荷物が届く世の中で、我が家は今日も荷物が届いた。ありがとうって気持ちになった。」私も、今日配達の方が来てくれて、「もし本作を観られていたらどうしよう」ってドキドキしながら(荷物を)受け取りました。
MC
ここからはラストマイル公式Xで募った質問を読ませていただきます。
■質問1
満島さん、岡田さんへ
脚本を読んで、特に気合を入れたシーンやセリフなどはありますか?
野木さんへ
満島さん、岡田さんの演技で、ここの演技にしびれたというポイントはありますか?
満島さん
私は、自分が今やっている仕事の中でありえない出来事が目の前で起きて、自分がその責任者になってしまったらという脚本を読んで、ずっと気合が入らなかったんです。私の役柄は、脚本の内容に準じていると、中ぶらりんなんですよね。「目の前に起きていることを時間をかけて把握しようとする自分」と、「具体的に目の前のことを進めなければいけない自分」と、「口から出ていることが本心なのか、自分すらも疑ってしまう自分」みたいなものを、ずっと同時に抱えながら最後まで走っていたような感じがしています。だから本気の気合いが入らないというか、ずっと身体がふわふわとした状態でいました。
ただ、爆発物処理班の小田島さん(丸山智己さん)が出て来た時に、「小田島さん!」ってなって、気合いとは違いますが、気持ちに一番油が乗った瞬間だったと思います(笑)。
野木さん
あのシーンは一気に泣いていましたね。
満島さん
泣いていましたよね! 小田島さんが体を触ってくれるんですが、誰かに触られたことがうれしかったです。
岡田さん
(スネ気味に)これはちょっと、一言言いたいんですが! 僕(=梨本孔)はその前に触れているんですよ!
野木さん
そうだよね!
岡田さん
ずっと思っていたんですよ! なんか、(エレナが)すっごいキュンとした顔をしていて! (会場:笑)
もちろん助けてくださる方なので、すごくありがたいっていうのは分かるんですが、ずっと梨本孔として隣にいるのに、何一つキュンがなかったなと思っていました。
満島さん
(笑)なかったですよね!
岡田さん
何なら触れられたくないみたいな。あれはショックだったんだよなぁ。
満島さん
ごめんなさい…。
岡田さん
お気持ちは分かります…。
満島さん
なので、気合いが入らなかったという答えが一番合っているかなと思います。決して悪い意味で言っているわけではなくて、気合いを入れたくても空回りしてしまうような、そういう役だったと思います。
岡田さん
僕も満島さんと同じで、ずっとフルスイングができない役というか、原点に戻る感じがありましたね。当たり前のことなんですが、ちゃんとあの空間で役として、一つ一つの瞬間をちゃんと生きて、存在していれば、そしてエレナさんをちゃんと見ていれば成立するだろうと思っていました。
クランクインしてからは、あまり考えすぎてしまうと良くない方向に行ってしまうことが分かったので、それだけは意識して現場で立っていようと思っていました。
野木さん
(お二人の演技が)全部良かったので、選ぶのが難しいのですが、敢えて言うのならば、満島さんは、阿部サダヲさんが演じた羊急便の八木さんとのシーンがすごく好きです。あそこはグッときちゃいました。自分で脚本を書いている時は全然そこまでグッとくるシーンとは思っていなかったんです。でも、実際に出来上がったものを観たらすごくて、どっちにもグッときました。階段を上がるシーンも、塚原さんの場所の使い方がすごくうまいし、あそこで止めるところもとても好きです。
岡田さんは、ソファーの上のシーンです。そのシーンは二人とも良いですよね。あそこで二人ともほどけるじゃないですか。それまではお互いに、特に孔はエレナに対して警戒心MAXで様子をうかがっていたし、問い詰めることもしたんだけど、その後でソファーの上でリラックスして、そこで初めて二人の素が見えましたよね。あの時の岡田さんのほどけ方が、「良いものを観たなぁ」という感じがして、すごく好きです。
岡田さん
あそこは撮り直しをしましたよね。
満島さん
最初はソファーのシーンの後に爆弾のシーンを撮影していたんです。でも何かが違う気がしていて…。なので監督と「チャレンジできる日があったら(もう一度)やってみようか?」って話になってね。
野木さん
実際にその(爆弾の)シーンをやった直後の撮影の方が、臨場感が出ますよね。ああいうリラックスした場所だから、余計に二人の距離感が急に近づいた感じがすごいと思いました。
岡田さん
撮り直して、本当に良かったです。
満島さん
(孔とエレナにとって)初めてお仕事ではない一瞬の隙間の時間ということでいいですね。
■質問2
満島さん、岡田さんへ
映像を観て、「さすが!塚原あゆ子監督」と、うなったカットはありますか?
野木さんへ
脚本を書いた時に想像していた以上に印象に残るシーンになったところがあればお聞きしたいです。
満島さん
冒頭です!
岡田さん
やっぱり! 作品の始まりの見せ方が!
満島さん
ですよね。いろいろなものが集約されているなと感じました。自分たちの体の中を血液が流れているように、社会にも街の光の中にも血液が流れていくみたいな描写は「あぁ塚原さんだなぁ」と思いました。後、冒頭は撮影もすごかったです。電車が通ってバスが通ってそれをタクシーが追い抜いて、何百人も雇用者の方が並んでいる中で、エレナは一人だけタクシーで気楽にすっと通っていくというところは、ドローンで長回しをしていました。そして孔と初めて会うエレナが描かれているんですが、撮影もすごかったし映像になってからもすごかったです。
岡田さん
全く同じです! 撮影ではドローンが全然来なくてですね、「来た?」「まだ?」「エレナさんはいつくるの?」とずっと待っていました(笑)。じらされている瞬間も孔として生きていて、そこが個人的にも思い出があるシーンです。たくさんのエキストラの方が協力してくれたおかげで成立しているシーンですし、「塚原監督すごいな」「この方についていきたい」と思った瞬間です。
満島さん
(MCの)杉山さんのヘリのシーンもすごく良かったですよ!
野木さん
うまかったですよね! 「会社名言っちゃダメなの?」ってところ。
MC
塚原さんのオープニングに並んでしまうんですか? (登壇者の皆さん:笑)
満島さん
臨場感がすごくありました!
MC
「演技していたね」とか反響がものすごくありました。塚原監督には一緒にヘリコプターに乗っていただいて、それこそオープニングのカットに使われているのかもしれませんが、夜の街の空撮も一緒に撮影をしました。
(満島さんに)満島さんはいつもそのことに触れてくださって、ありがとうございます。
満島さん
本当に見た時に「すごい!」と思ったので、「アドリブかなぁ?」とか思いながら、普段見られないアナウンサーさんの裏の姿が見られた感じがします。
MC
あんな感じでがんばっています。
野木さん
私は、先ほど話したこともですが、違うことを言うとすれば、あの(ショッピングサイト「DAILY FAST」)デリファスの空間です。あの倉庫自体は存在しないので、存在しない倉庫をいかにして見せるかということで、美術チームと監督が全部で八カ所のいろいろな倉庫を寄せ集めて作っています。メインの棚が並んでいるところは、実際に棚を作ってはいるのですが、その空間で、それを最大限まで生かしているというところが、塚原さんは空間の撮り方が本当にうまいと思います。出来うる限りで、あの空間をあれだけ出現させたことが、やっぱりすごいと思いました。
■質問3
満島さん、岡田さんへ
シェアードユニバースの中で、エレナや孔として会ってみたい、もしくはもっと絡みたいメンバー、もしくは他に演じてみたい役は誰ですか?
野木さんへ
エレナや孔にとって、相性の良さそうな人、もしくは悪そうな人はいますか?
満島さん
難しいねぇ。誰だろう。
野木さん
とりあえず、エレナと伊吹(綾野剛さん/「MIU404」)は、盛り上がりそうだなと思います。
満島さん
一緒に走ったりして(笑)。だから逆に志摩さん(星野源さん/「MIU404」)に会って、ちょっと突っ込まれてみたいなと思いました。
野木さん
割と向こうは常識的な対応をかましてくる感じですね。
満島さん
演じてみたいのは、難しいですね。皆さんぴったりすぎて、そのものだから「演じてみたい」って言えないですね。
質問とはちょっと違うんですが、本作のクライマックスが終わった後に、街の中で孔とばったり会ってみたいなと思いました。「え、元気?ひま?ちょっとお茶行く?」って感じで(笑)。
岡田さん
孔は、「大丈夫です。」と言いそうですね。(登壇者の皆さん&会場:笑)
僕が孔として会ってみたいのは、伊吹さんですかね。伊吹さんとあの曲(「MIU404」伊吹藍のBGM)が流れる中で走ってみたいです。孔も倉庫の中で走るシーンがありましたからね。
野木さん
皆さんキャラクターが濃いですからね。演じている人も濃いんですが。
私は、孔は、本作には出ていないのですが、水上恒司くんが演じていた九重(「MIU404」)とは、普通にお友だちになりそうだと思っています。
満島さん
同級生だったかもしれないぐらいの感じでね。
野木さん
同じくらいの質感でやれそうだし、お互いにイラッとしていそう(笑)。陣馬さん(橋本じゅんさん/「MIU404」)がきて、「こういうオヤジ嫌なんだよな」とか思いそう。
満島さん
ミコト(石原さとみさん/「アンナチュラル」)とエレナも見てみたいな。
野木さん
そうですね! たぶんミコトとエレナはお互いにちょっと警戒しそう(笑)。
■質問4
満島さん、岡田さんへ
演じるにあたって一番悩んだシーンはどこですか?
野木さんへ
一番悩んで書かれたシーンはどこですか?
満島さん
ずっと悩んでいましたが、書かれていることの壮大さと、実際に自分がこういう場所でこの責任者になったらどうするんだろうということにまず悩みました。先ほどもありましたが、デリファスのセットが本当にめちゃくちゃ広くて、倉庫の中にたくさんの商品が並んでいて、自分が本当にちっぽけになった感じになりました。だから役としてというよりは、自分自身の人生を照らし合わせるような感じがすごくありました。なので、一言一言のセリフを言う時に悩みました。
MC
本作をご覧になった方にはエレナのとあるセリフが印象に残っていると思います。
満島さん
「観た後に、未だにあの場面だけがよく分からない」って感想をいくつか読んだことがあります。目の前で事件が起きていると、「助けなきゃいけない」「助けよう」と思うと思うのですが、「現実的にどれだけ多くの人が助けられるのかな」とかいろいろ考えてしまいます。
野木さん
あのエレナが、あの場で言うセリフとしては、私はそんなに不思議だと思わず書いています。結局、ドラマだとやはり主人公がいい人で、共感できることが求められがちではあるのですが、映画はいいじゃないかと思っています。劇場に入れば最後まで観るのだし、ということがあって、あまり良い人である必要は無いし、そういう人間として今回は描いたのが、過去の二作品のドラマとは、だいぶ趣が違うところです。でも、それを満島さんが本当に素晴らしく演じてくれました。いろいろ賛否、好き嫌いは分かれるとは思うのですが、逆にそんなエレナだから最後まで観た時に「あぁ良かったね」って思ってくれる人もいると思うので、そういう気持ちで書いています。
岡田さん
今考えていたんですが、僕が悩んだのはやはりエレナさんを問い詰めるところが、何かちょっと取り調べの警察官みたいになってしまう瞬間があって悩みました。監督とお話をして少しずつ変えていきました。後、最後のロッカーのシーンは、どういう表情であそこにいるべきなのか、孔としてまだ物語があるので未だに悩んでいる感じです。とても重要なシーンなので、一番悩んだところかもしれません。
野木さん
あそこは、私も「どんな表情をするんだろうなぁ」って楽しみにしていました。監督と岡田くんがなんとかするだろうと思って、脚本は「…」と丸投げしました(笑)。
岡田さん
確かに! 「…」でした(笑)。
塚原監督とは「ずっと水中にいる感覚で、息ができていない状態のまま、あのロッカーの前にいよう」と話をしていたので、どこか溺れてしまう感覚を持ってやりました。「うまくいったんじゃないかなぁ」と思います。
野木さん
実は、書くのに悩んだところはあまりないんです。割と初稿からそのままです。形にするまで「こっちにしよう、あっちにしよう」みたいなことはありましたが、それは普通の作業なので、そんなに悩んだところはないです。でも、今岡田さんが言っていた、孔がエレナを問い詰めるシーンは、初稿ではもう少し平坦だったものを、塚原さんから「もっと盛り上げられないか、もっとガツっとこれないか」と言われたので、「そういう気持ちも分かるなぁ」と言いながら、じゃあどうしたらガツっとなるかちょっと悩みました。
MC
最後に、満島さんからメッセージをお願いします。
満島さん
毎回、私がメッセージを言っていて(笑)。
野木さん
主役なんですもの、それはそうですよ。
満島さん
本作の脚本をいただいて、撮影している間も、ずっと日常と地続きの物語なので、ただただ物語として切り離すことができないでいました。先ほど野木さんもお話をしていましたが、私が演じている「舟渡エレナ」は多くの人に理解しやすい役柄ではないと思います。ただ目の前にいる家族とか、友だちとかの全てを分かるわけじゃないように、自分にとって心の内が分かり得ないたくさんの人たちと私たちは一緒に生活をしていて、「こういう人がいるんだな、こういう考えがあるんだな、こういう思考があるんだな」と感じることってたくさんあると思います。本作もエレナだけではなく、孔とかいろいろなキャラクターにいろいろな考えがあって、いろいろな正義感とか、苦しさとか、幸せのあり方があって、そういうものをすごく感じるような作品です。物語の枠を超えて、本当に私たちの日常とつながってくるような作品だなと思っています。
キャストの皆さんも、本当に豪華で、宣伝をしていてもリッチな感じがするし、宣伝部の方々も本当に魅力を伝えようと頑張っていただいています。「岡田さんが出演するから」とか、多くの方が本作を観るきっかけがあって、今まで私の作品を見たことがなかった方、今まで触れてこなかったお客様ともタッチできたような気持ちです。
何度も観に行ってくださる方も多くて、もう一度知りたくなる、見たくなる脚本、演出って、すごい作品ですよね。私にとっても、撮影した後にこんなにずっと考えなきゃいけない作品は初めてで、「ラストマイル」が日常にずっと迫っていて、「もう違う作品が始まっているのに」と思いながら、ずっと背中にくっついてきて心の中にあるような、不思議な感覚です。
賛否両論、たくさんの人の感想があって、否の感想も意外とおもしろいと思っています。「そうやって見えたんだ」とか、「なるほど確かにその視点から見るとそうかも」という言葉が転がっていて、こんなにお客さんとグルーヴしたのは初めてかもしれないです。
これからも「ラストマイル」のマイルを重ねる方もいるでしょうし、新しく観る方もいらっしゃると思いますが、野木さんの脚本、塚原さんの演出、そして新井順子プロデューサーがいて、その三人の作る作品を、本当に大好きで愛してきたキャストの方がいて、米津玄師さんの主題歌が「アンナチュラル」「MIU404」と続いて三曲あって、お祭りのような作品でしたね。
野木さん
ドラマを観ていなくても、分かる作品になっています!
満島さん
映画を観てから、ドラマをご覧になってもいいと思います。私は、ちょっと恐ろしく感じる場面もいくつかありましたが、これからも愛し続けてもらえる作品であるといいなと思います。
(岡田さんに)せっかくだから最後に一言!
岡田さん
いやいやいや。
野木さん
(岡田さんに)今日は、お腹鳴ってないんじゃない? (会場:大笑い)
岡田さん
「絶対に鳴るなよ!」と、今それしか考えていませんでした。「何か話せば」と言われても、僕は今お腹の事しか考えていません。(会場:笑)
野木さん
皆さん待っているんだよ!
満島さん
しゃべりながらずっと待っていたんだよ!
岡田さん
たくさんの方から「今日は絶対に鳴らさないで!」と言われ続けたんですよ。
野木さん
これまでの舞台挨拶の度にね、ニュースのタイトルになっていたから!
岡田さん
あんなに恥ずかしいことはなかった!
満島さん
完成披露も初日舞台挨拶も、岡田さんのお腹の鳴りを聞けたんですがね。もう…さみしいです。
岡田さん
(笑)。いや本当に。鳴れよ、今! (登壇者の皆さん&会場:大笑い)
MC
熱いメッセージでした。岡田さんは?
岡田さん
もうお腹のことで精一杯です。(満島さん:笑)
MC
満島さん、公開から一カ月が経って、早くも40億円を超えて280万人となりました。
満島さん
数字を聞くとドキドキしちゃいます。私まだ劇場で観ていないので。(岡田さんに)観ましたか?
岡田さん
観ていないです。
満島さん
劇場で、1マイル目をしたいなと思っています。(野木さんに)観ましたか?
野木さん
観ました! 2マイル。(皆さんの反応に)なるほど! と思いました。
満島さん
すごい!
野木さん
「二人とも良いお芝居をしているなぁ」と思って観ています。皆さんに観てもらいたいですね。
■フォトセッションのステージ準備の間に、MCが会場の皆さんに「何マイルですか?」と鑑賞回数の聞き取りを実施しました。この日の会場には、「この回で14マイル目」という方がいらっしゃいました。
MC
お二人に報告します。あちらに14マイル目の方がいらっしゃいます!
満島さん&岡田さん
え!
満島さん
全部違う日に? 同じ日もあるの!? 私たちより詳しいんじゃない?
岡田さん
ありがとうございます!
満島さん
え、暇なの? …違うか。ごめんごめん、ごめんね(笑)。(岡田さん:笑い崩れる)(会場:大笑い)
満島さん
(質問攻めで)学生さん? 学校は? あ、行っているの。良かった!
岡田さん
(笑いすぎて、息絶え絶えに)過呼吸になりそう…。
MC
また次、15回目をぜひ!満島さん、一言お願いします!
満島さん
ありがとうございます。14回観ているんですね、すごいね…!
岡田さん
抱きしめたい!
満島さん
抱きしめたい(笑)! 野木亜紀子さんの脚本のファンなんですね。今日は野木さんが来てくれて良かったですね。なかなかのレアキャラだと思うので。
MC
岡田さんからも一言お願いいたします。
岡田さん
(満島さんの真似をして)暇なの? (会場:笑)
ちょっと言いたかったの。ふざけただけだから、ごめんね(笑)!
MC
「ラストマイル」が好きなんですよ! ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。