「ラーゲリより愛を込めて」東京国際映画祭ワールドプレミア舞台挨拶

2022.10.24
  • イベント
「ラーゲリより愛を込めて」舞台挨拶舞台挨拶

東京国際映画祭ワールドプレミア舞台挨拶

第35回東京国際映画祭が10月24日(月)に開幕し、オープニング作品として『ラーゲリより愛を込めて』のワールドプレミア上映が東京・日比谷の丸の内ピカデリーで開催されました。上映前の舞台挨拶には、映画祭のレッドカーペットを歩いたばかりの二宮和也さんと瀬々敬久監督が駆けつけ、撮影の様子や本作への思いを語りました。こちらの舞台挨拶の模様をレポートいたします!

二宮和也さん

山本幡男役

瀬々敬久監督

二宮さん

本日は足を運んでいただきありがとうございます。映画を観る前ということで、話す内容はいろいろ限られてくるかと思いますが、できる限りお話しできれと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

瀬々監督

東京国際映画祭オープニングの日にこの作品が選ばれて上映されることを光栄に思っています。ぜひ最後まで楽しんでいってください。

MC

先ほどまで行われていた東京国際映画祭オープニングのレッドカーペットイベントにも登壇されましたが、レッドカーペットはいかがでしたか?

二宮さん

そうですね、最後に歩いたんですけれど、何回隣を見ても瀬々さんしかいなくて(笑)。本当はポスターを見ても分かるように、いろいろな方が出ているんですけれど、今日は瀬々さんと二人だけで160メートル歩きました(笑)。三年ぶりにこういうイベントができて、見ている方や取材されている方がいる光景をだんだん思い出すというか、「戻って来られたのかな」という思いになって熱いものがあります。

瀬々監督

そうですね、やはりまだコロナ禍での開催ですが、その中でもこれからいろいろ工夫して、こういう映画祭もどんどん世界との交流の場としてやっていけたらと、改めて感じる場でした。そういう意味では良かったと思います。

MC

本作は本日がワールドプレミアということになりますが、世界各国から注目される作品になっていると思います。

二宮さん

すごいものに出ちゃったなと思っています。僕はわりと都度都度、戦争映画に呼ばれることがあるんですけれど、結構な激戦地であったり、爆心地であることが多かったんです。でも今回はまた違う――戦争がもたらした「後遺症」の物語だと思っています。戦争が良くないとか、やってはいけないということより、後遺症として、これだけのことが起こるんだというのがちょっとでも伝われば、作った者として嬉しいなと思いますね。実際に起こったことでもあるし、僕らにとっても過去の話ではあるけれど「忘れないように」とこの作品を作りました。それでもやはり戦争は起きるし、僕らがやっていることが合っているのか間違っているのかも分からなくなるような状況ではありましたが、何とかできて、こうしてオープニングにまで呼ばれるというのは感謝だな、運が良いなと思います。

瀬々監督

僕らがこうしている中でもウクライナでは、実際に戦争が今も起こっています。そういう状況が現代にあるし、僕らの日本でもコロナ禍や貧困、いろいろ問題を抱えて皆さん生きていると思います。そういう中で、二宮くんが演じた山本幡男さんという人は、「希望を捨てるな」と言い続けて生きた人なんです。そういう人の生き方が、今の僕らの生活、生きることにヒントを与えてくれたら良いなと思いながら作った作品です。そういうところを感じていただけたらと思います。

MC

山本幡男さんは、シベリアに抑留され、収容所での生活の中でも必ず帰れる日が来るという信念を持って生きた人です。演じられていかがでしたか?

二宮さん

僕はこの作品に対して本当にすごく縁を感じています。山本幡男さんという方に出会って、いろいろなことを作品を通して教えていただいた気持ちになっています。その山本さんを皆さんがこれからご覧になって、どういった感情を抱くのか、人によっては眩しすぎると感じる人もいるかもしれないし、その言葉が刺さる人もいるかもしれないし、温かくジワッとする人もいるかもしれません。過酷な環境で、生き抜いた人間の一人として観ていただけたらと思いますし、「どういう人なのか」というのを作品に残してきたのでそれをじっくり観ていただけたらと思います。

MC

監督から見て、現場での二宮さんはいかがでしたか?

瀬々監督

二宮くんと話して、二宮くんは「この人物を決して偉人やヒーローとしては表現したくない」ということでした。「“普通の人”として生きていたというのをやりたい」と撮影前に話してくれました。そういう二宮くんの生き方、考え方がまさに山本幡男さんらしいなと思いました。「縁がある」と言っていましたが、二宮くんのおじいさんはシベリアの抑留者だったんですね。そういう意味では、二宮くんがここにいるのは、おじいさんが帰ってきてくれたからなんです。そういう意味では二宮くんはこの作品の申し子と言いますか…。

二宮さん

縁を感じずにいられませんよね(笑)。

瀬々監督

そういう二宮くんを観ていただきたいと思います。

MC

松坂桃李さんに中島健人さん、桐谷健太さん、安田顕さん、そして妻・モジミ役の北川景子さんとの共演はいかがでしたか?

二宮さん

北川さんは大変だったんではないかと思いますね。僕はなかなか会う機会がなかったんですが…。日本の内地にいる人にとっては「待つ戦争」という一つの戦争の後遺症があり、それは多くの女性が受けなくてはならないものであって、いろいろな形があったんです。夫婦の形にもいろいろなものがあったにせよ、「待つこと」を選んだモジミさんには「女性なら分かるのかもしれない母性にも近いものがあるのかな?」と僕は思ったし、僕が言うのはおこがましいですが、その演技が本当にお上手でした。夫婦の愛情もそうですが、その愛情を支えるように友人たちの絆があったからこそ流した涙だったのかなと感じましたね。
安田さんや桐谷くんは、ドラマやバラエティでご一緒していますが、中島健人くんとは初めてでした。松坂くんとも初めてですが、松坂くんは僕と雰囲気が近いタイプだったので、なかなか作品で一緒になることがなくて...。どっちかが出ているとどっちかは出ていないという状況で、「大河ドラマとか大きなものじゃないと出会えないのかな?」と思っていたんですが、「そうか、こういう特殊な環境だったらこういうタイプがたくさんいても良いんだ」と、今回共演できる喜びがありました。実際に一緒にやってみて、「上手だな」と思いましたし、「今の良かったね」と素直に思える環境を瀬々さんに作ってもらい、現場でやり取りできることができました。作品は静かに進んでいますけれど、本番前後は盛り上がってやれていたので、その雰囲気の良さを感じていただければと思います。

MC

撮影環境は過酷だったのではないかと思いますがいかがでしたか?

二宮さん

過酷でしたよね?

瀬々監督

そうですね、野球のシーンがあるんですが、そこでは雪が降らないはずだったのに大雪の予報が出て、俳優さんたちもみんな、雪かきをやりました。中島健人くんも桐谷くんも出てきてやったんですけれど、一人だけやらない人がいて…。

二宮さん

信じられない人がいますね? ぶん殴ってやりたいです。誰ですか? そいつ。

瀬々監督

あなたでしょ? (笑)

二宮さん

あぁ、そうでした! 僕でした! 僕はずっと、営倉の扉の陰に隠れていました(笑)。本当にみんな手伝ってくれましたよね。野球場もそうだし、他のシーンでも、誰かが倒れそうになったら支えに行くチーム感が出来上がっていたなと、仕上がりを観ても感じましたね。

MC

監督は撮影で最も印象深いシーンはどこですか?

瀬々監督

いろいろありますけれど、まあやはり苛烈な自然のシーンは印象深かったですね。雪の中の労働とか、本当に一日中、労働して重い木材を運んで…。

二宮さん

しんどかった(苦笑)! すごく(雪が)降ったんですよね、あの年は。その地域でもメチャクチャ降ったねという年でした。いろいろなところで撮影しましたが、メインで撮っているところではどんどん降ってくるので、スタッフの方が雪を降ろしに行ったり、それこそ二十四時間、セットがつぶれないように張り付いている班ができたり、大変でしたよね?

MC

最後にこれからご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。

瀬々監督

これからご覧になる皆さんが、世界で最初にこの作品を観ることになります。気に入ってもらえると思いますので、また劇場で観てやってください。そして、今回この作品を上映していただくことになった東京国際映画祭も良い感じになっていけばと思います。明日からも映画祭はやっていますので、皆さんもぜひ興味がある作品があれば観に来てください。今日はどうもありがとうございました。

二宮さん

僕の近しい人からいろいろな話を聞いて、ずっと忘れられない経験をしているということを知り、戦争がもたらした後遺症というものは、よほど強いものなんだなと感じざるを得なかったし、それを背負って生きていたんだなと思いました。重たくするつもりはないけれど、「なんでこういうことが起きちゃいけないのか?ー 」ということも同時に感じていただきたいですし、そこを乗り越えたからこその希望や愛、仲間たちとの友情が見えてくると思うのでどうか楽しんで…いや、楽しんでいただくというより、観て心が温かくなればと思います。