「国宝」大ヒット御礼舞台挨拶
- 公開後舞台挨拶
大ヒット御礼舞台挨拶
吉田修一の最高傑作との呼び声も高いベストセラー小説を映画化した「国宝」が公開から17日間で観客動員数152万人、興行収入21.4億円を突破!
この大ヒットを記念して6月23日に東京・新宿のTOHOシネマズ 新宿にて舞台挨拶が開催されました。主演の吉沢亮さんと李相日監督が登壇し、事前に寄せられた質問に回答しました。こちらの舞台挨拶の模様をレポートいたします。
吉沢亮さん
立花喜久雄(花井東一郎)役
李相日監督
吉沢さん
本日は劇場に足を運んでいただき誠にありがとうございます。この作品が、本当にたくさんの方に愛していただけて、うれしい限りでございます。(会場の皆さんに向かって)「もう(本作を)観たよ」って人は?
■会場から多くの手が挙がる。
吉沢さん
すごい! それじゃあ、逆に初めて見るという方はいらっしゃいますか?
■こちらも多くの手が挙がる。
吉沢さん
すごい! ぜひ皆さんが、より本作を楽しんでもらえるようなお話ができればと思っております。
李監督
こんばんは。お越しいただきありがとうございます。ちょっと二人だと緊張するね。
公開初日の時は、ずらっと13人ぐらいの方々が登壇していたから…。あんな風に大勢で並ぶことは、なかなかないんだなと思いました。今更ながら、良い時間だったと思い返しています。
これだけ多くの方がリピートして観ているなら「今日はもうネタバレしても良いのかな」というぐらいの気持ちです(笑)。
吉沢さん
でも、初めてご覧になる方もいるので…。
MC
「国宝」の興行成績ですが、6月22日までの公開から17日間で、観客動員数152万人、興行収入は21.4億円を突破しました。また、驚異的な推移を示しており、二週目には一週目の143%を超えるお客さんがきてくださいました。さらに、土日の前週比は113.1%と、週を追うごとにお客さんの数が増加している状況です。その結果、6月20日から6月22日の週末観客動員数では、ついに第一位を獲得しました。最終興行収入の見込みは50億円突破は確実で60億円も目指せるほどの素晴らしい成績になっています。
李監督
(数字を言われても)何だかピンとこない感じですね(笑)。ただ前の週から観客動員数が伸びるというケースはあまりないことなので、うれしいですよね。
吉沢さん
本当に、今までにないぐらい知り合いから連絡をたくさんいただいています。すごく熱のこもったメッセージをたくさんいただく中で、個人的に一番うれしかったのは、同い年で役者をやっている友人からです。その友人が「やっぱり役者ってカッコ良い仕事なんだなって改めて思った」っていう連絡をくれたんです。その言葉は非常に僕自身にも何かグっと来るものがあって、うれしかったです。
MC
同業者の間でもかなり話題になっているんですね。
吉沢さん
そうですね。表現をやっている人は、観てくださるイメージがあります。
MC
李監督はこの盛り上がりについて、どのように感じていらっしゃいますか?
上海国際映画祭にも参加されていたんですよね?
李監督
はい、昨日戻りました。
日本と同じように熱気があって、1300人ぐらい入る劇場で、何度か上映していたんですが、帰る直前にサプライズで上映後に短い舞台挨拶を行いました。日曜日の朝9時からの上映だったので、「お客さんの数もだいぶ減っているかな?」と、思ったんですが、口コミが広がり、回を重ねるごとに来場者が増えていき、最後の回も1300人の劇場がいっぱいでした。Q&Aでも非常に良い質問をいただきました。それから、歌舞伎のシーンで「ぶっ返り」(一瞬で衣装替えを行なう技法)とかがあるじゃないすか。そのシーンでは歓声が上がったそうです。それぐらいライブ感を持って観ていただけていたんだなと思いました。良かったです。
MC
吉沢さんも海外の反響を受けてどうですか?
吉沢さん
我々のこの作品に込めた思いとか、メッセージをすごくしっかりと受け取ってくださっていると感じます。日本の伝統芸能をベースにした作品で、すごく日本色が強いので、海外の方がどのように受け止めるのかを、カンヌでの最初の公式上映までは、ちょっと不安もありました。でも、本当にすごい熱量で迎えてくださって、観てくださって、本当にうれしかったですし、安心しました。
MC
日本国内でも、実は歌舞伎に触れたことがないという方も多いと思いますが、そんな方が「国宝」を観て、「歌舞伎も観たくなった」という、うれしい声も多いです。
李監督
うれしいです。年齢を問わず、幅広い方に観ていただけていることと、そして何よりうれしいのは「映画館で観て良かった」という声ですね。心のどこかでは「まあ、配信でやるよね」って思いながら、ちょっと距離ができちゃうこともあるんですが、「やっぱりこの作品は映画館で観なきゃ」という流れが生まれているのがうれしいですよね。
■SNSで募集した質問に登壇者のお二人が答える。
【吉沢さんへの質問】
もともと体は柔らかいんですか?
歌舞伎のシーンで、後ろにのけぞるシーンがありましたが、もともと柔らかいのか、稽古の賜物なのかを知りたいです。
MC
あれは結構、反っていましたよね。
吉沢さん
反りましたね。今やったら、多分腰がいっちゃいます。もちろん、もともとはできませんでした。稽古を重ねて、寝る前にもベッドの上でちょっとやってみたりして、撮影に入る直前ぐらいにようやくできるようになった感じです。もともとは、メチャクチャ硬いんですよ(苦笑)。だから、基本的に、どんな役をやる時も、必ず苦労するんです。だから、この作品で歌舞伎を成立させるために、いろいろと、やることがたくさんありました。
【吉沢さんと監督への質問】
ビルの屋上で舞うシーンは、ほぼアドリブだったと聞いています。あの時、喜久雄、そして吉沢さんは何を感じていましたか?
あまりにも切なく、儚く、美しすぎて目に焼き付いて、未だに離れません。
監督にはこのシーンの撮影エピソードをぜひ聞きたいです。
MC
これは一番多かった質問です。
李監督
これから観る方もいらっしゃいますが、まあ、予告にも映っているシーンですからね。
吉沢さん
あのシーンは、アドリブというか、セリフが少し書かれている台本はあったんですが、ほとんど関係なくなっていました。頭から終わりまでを、長めのテイクで三回撮りました。本作に使われているのは、たぶん三回目のテイクです。毎回テイクごとに監督が僕に一言だけ何かを伝えるんですよ。三テイク目の時は「とりあえず森七菜ちゃんの顔を見ていて」みたいなことを言われて「分かりました」って感じで撮りました。そして、(森さんの顔を)見ていたら…この先のことは、あんまり言えないですね。
李監督
それまで言っていなかったセリフを言ったんだよね。
吉沢さん
あそこで踊っていたものは、事前に踊りを教えてくださっていた舞踊家の谷口先生と事前に相談して、「こういうのをやろうか」と、何となくは作っていたんです。でも、現場入ったらもう関係なくなって、その場の空気でやりました。
李監督
あのシーンに関して、順序立ててお話をすると、まず谷口先生と「踊りのベースは決めておこう」ということになりました。そこから後は、感情が入ってどうなるか分からないけれど、一旦ベースになる部分は決めたんだよね。
それから、あのシーンは、本来は夜だったんです。だから、日が暮れてから照明を当てて撮る予定で、夕方6時ぐらいから夜中ちょっと過ぎるぐらいまでに撮ろうという設計だったんです。
でも、当日現場でお昼に天気を見た時に「今日はいける」と思って、「スカイラインでやりましょう」って言っちゃったんですね。“スカイライン”っていうのは、日が暮れかかる、日が暮れる直前のちょっと空がブルーになっていく時間のことです。そこを狙おうということになったんですが、そうすると、撮影時間が長くても30分しかないんですよ。だから、ちょっと早めに来てもらって、リハーサルを現場でやったんですね。
普段は、なるべくスタッフも少人数でリハーサルを行い、撮影時に皆が集まるようにしています。でも、このシーンだけは、みんなに来てもらって、大体…30~40人ぐらいで、吉沢さんと森さんのリハーサルを見てもらいました。それで、上は70代から下は20代のスタッフに、感じたことを言ってもらいました。
吉沢さん
あのリハーサルは、結構気まずかったです(苦笑)。僕の周りを40人ぐらいが取り囲んでいる中でやったので…。
李監督
でも、良い意見が出るんですよ。「ちょっと喜久雄の狂気が足りないと思います」「森さんの悲しみが一番見えるところなのに、そこが『あれ?』と思います」とか、ポイントを突いた感想を浴びるわけですよね。そこで、何が必要かということをしっかり共有しました。カメラマンも「手持ちのカメラで演技を切らさないで全部回そう」ってなって、リハーサル中に動きを頭に入れていたんだと思います。いざ撮影に入ってみると時間が30分もなくて、一回目二回目とやって、それまでは振り向いていないんです。次がもうギリギリだなと思いましたが、三回目に賭けたわけじゃないんですが、吉沢くんには「森さんの方を見て。そうしたら、彼女が何か言うからそれに反応して。後は自分の世界に入ってください」と伝えました。そして、森さんには「最後だけ彼がこっちを見てくるから、でも、その目には自分が映っていないなって感じたら、「○○○○」というセリフを言って」と伝えたんです。それが、あのシーンです。もう一か八かですよね。だから、アドリブというか、森さんの芝居に反応して、ああなったんだよね?
吉沢さん
ありがとうございます(笑)。全て言っていただきました。
李監督
本当に見事でした。
【監督に質問】
撮る前と撮った後では、吉沢亮さんに関して抱いていた印象に変化はありましたか?
李監督
ないですよ。いや「ない」と言うと語弊がありますが、何か隠しているとは言いませんが、「まだ何かあるでしょ?」と常に思わせてくる感じは変わらないですよね。底知れないというか、底が全く見えない感じ――「底かな」と思ったら、また別の扉があるみたいな感じで、非常に面白い人だと思います。
吉沢さん
底が見えない? どうなんでしょうね。僕は別に何も隠してはいないんですけれど…(笑)。
MC
吉沢さんは、出演を熱望していた李監督とご一緒されて印象はいかがですか?
吉沢さん
事前にお話を聞いていた限りだと、同じシーンを何十テイクも撮ったりして、「すごく怖いよ」と聞いていたので、覚悟を決めて現場に入りました。でも、「怖い」というよりは、むしろ逆で、すごく愛情を感じる…。何だろうな、ものすごく目の前にデカい壁を立てられるんですが「お前ならこれは越えられるよね?」っていう、絶大な信頼を寄せながら与えてくれる感じがするんです。なので、ものすごく困惑はするんですが「絶対乗り越えてやろう」っていう気持ちにもなるんです。その安心感みたいなものは半端じゃなかったので、そういう意味ではちょっと印象が違ったかもしれないです。
【吉沢さんへの質問】
喜久雄と重なるところはありますか?
吉沢さん
僕的にはないんですが、やはり「お芝居しかない」感じと言いますか、僕もそこまでとは言わないですが、お芝居をしている時が一番楽しいですから。一番苦しい気持ちにもなるし、「生きている」って実感する瞬間はお芝居をしている時だったりします。そういう部分は似ているというか、理解はできるなって思いました。
MC
李監督は主題歌「Luminance」を井口理さんにお願いした理由を教えてください。作詞の坂本美雨さん、作曲の原摩利彦さんとはどんなお話をされたんでしょうか?
李監督
エンディングになる前までの楽曲に関しては、原さんと細かくディスカッションを重ねて作りました。でも、エンディングに関しては「声が降ってくる」という一点だけをリクエストしました。女性なのか男性なのか判別のつかない声、あるいは両方混じった声が降ってくる…それだけをお願いしました。後はもう原さんの世界観と、本作を観た美雨さんが喜久雄という人間をどう捉えるかという、彼らの感性にお預けしてできた曲です。それこそ井口さんの最初の声を聞いた時、鳥肌が立ちましたよね。自分がイメージしていたものがこうやってイメージを超えて具現化されていく。それは本当に素晴らしかったです。
吉沢さん
本当に素晴らしかったです。この作品においての主題歌っていうのは、すごく難しいだろうなって思っていました。「誰がどういう曲を作っても合わないんじゃないかな?」みたいなことを、この曲を聞く前までは思っていたりもしました。でも、本当にこの世界をスーッと、昇華してくれるかのような美しい歌声と音でした。こんなにも作品にぴったりな曲があるんだなと思って、素晴らしいなと思いました。
MC
最後にお二人からメッセージをお願いします。
李監督
皆さん、この場に来られたということは、本作を広めなければいけない責任があると、十分お分かりだと思います(笑)。でも、そんなことはこちらからお願いすることではなく、末永くこの「国宝」という作品を愛してください。「国宝」というタイトルだからじゃないですが、皆さんにとって宝のようになってくれたらと望んでおります。どうもありがとうございました。
吉沢さん
本日は誠にありがとうございます。公開から二週間くらい経っても、これだけたくさんの方に愛していただいて本当にうれしい限りです。これからもっともっとたくさんの方にこの作品が広まってくれればうれしく思います。「良い作品だな」と思ったら、いろんなところでこの作品を広めていただけたらと思っております。ぜひ皆さんと一緒にこの作品を盛り上げて、長く続く作品にしてほしいと思います。ぜひよろしくお願いします。今日はありがとうございました。