「果てしなきスカーレット」公開記念舞台挨拶

2025.12.16
  • 公開後舞台挨拶

公開記念舞台挨拶

細田守監督最新長編アニメーション映画「果てしなきスカーレット」の公開を記念して12月16日に、東京・六本木のTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて舞台挨拶が開催されました。
舞台挨拶には、声優を務めた芦田愛菜さん、岡田将生さん、細田守監督がそろって登壇しました。映画公開後だからこその、シーンの解釈や意味についてのトークも繰り広げられ、会場は大きな盛り上がりを見せました。こちらの舞台挨拶の模様をレポートします!

スカーレット役

芦田愛菜さん

スカーレット役

聖役

岡田将生さん

聖役

細田守監督

芦田さん

皆さんこんばんは。今日は短い間ですが、よろしくお願いします。

岡田さん

短い時間ですが、ラフなトークで楽しみたいなと思っています。どうぞよろしくお願いします。

細田監督

皆さんこんばんは。どうぞよろしくお願いします。

MC

皆さんは、アニメーション映画においては異例と言っても良い長さの時間を共有されたと思います。アフレコに始まり、様々な宣伝イベントがありましたが、久しぶりの再会はいかがですか?

芦田さん

そうですね。やっぱり、アフレコから始まって、夏から皆さんと一緒にプロモーションをたくさんやっていたので、会えなくなってちょっとした寂しさもありました。でも、こうして久しぶりにお会いできて良かったです。

岡田さん

そうですね。寂しかったですよ、めちゃくちゃ寂しかったです。でも、(芦田さんが)そう言ってくれるとは思っていなかったので、ちょっとびっくりしています(笑)。
本当に、こんなに長い期間プロモーション活動をしたり、プレスコから考えると、ものすごく長い期間を監督ともご一緒してきました。こういう経験はなかなかないので、本当うれしく思います。

MC

アフレコ、ヴェネツィア国際映画祭、そして国内での宣伝キャンペーンなど、まさに果てしない旅路だったと思います。様々な瞬間を振り返って芦田さん、最も印象的なことはどんなことでしたか?

芦田さん

そうですね、やっぱりヴェネツィア国際映画祭の雰囲気は、忘れられない思い出です。私自身、初めてお客さんと一緒に本作を観たので、すごく印象に残っていますね。

MC

改めて芦田さんにとって、この作品はどんな作品になりましたか?

芦田さん

作品の主題である「生きる」ということや、「愛」について、私自身すごく深く考えるきっかけをもらえました。頭で考えることも大事ですが、体当たりでお芝居をすることもすごく大事なんだということを教えてもらいましたね。

MC

岡田さんは、最も印象的だったことはどんなことですか?

岡田さん

もちろん本作には、いろいろな場所に連れていってもらいました。
でも、僕は、長編のアニメーション映画の声優というお仕事は、初めてでした。なので、プレスコやアフレコで監督とは濃密な時間を過ごしました。“聖”のこともそうですし、作品についても話しながら、声を当てていくあの時間は、僕にとっては貴重な時間でした。何事も初めてというのは二度とないので、監督との時間は、本当に貴重な時間だったと思っています。

MC

実写映画との違いや、驚いたところはございましたか?

岡田さん

えぇ? 愛菜ちゃん、どう(笑)?

芦田さん

えぇっ(笑)!? でも、今回はプレスコだったので、ちょっと実写に近い部分もあって、良いとこ取りができた気がしましたね。

岡田さん

実写作品との大きな差があったかと言われると、役作りと言いますか…。監督とお話しながら作っていく作業は、基本的に変わらないし、キャラクターに気持ちを作って声を当てていくという作業は、僕の中では実写と変わらなかったので、すごく楽しい時間でしたね。

MC

戦闘シーンなども、非常に迫力があり、観応えがありました。気持ちの入れ方などで意識されたことはありましたか?

芦田さん

戦闘シーンは、それこそアフレコブースの中で立ってやりました。そのままだとなかなかイメージがしづらいし、声も出しにくかったので、ちょっと体を動かしたりして演じました。それはすごく良かったと思います。

MC

本日で、果てしなき旅路が一つの区切りになると思います。細田監督は、改めて芦田さん、岡田さんにどのような印象をお持ちでしょうか?

細田監督

スカーレット、聖という役にすごく真摯に取り組んでもらいました。アフレコをやっている姿を見ながら「あぁ、スカーレットってこういう人なんだな」「聖ってこういう人なんだな」と、逆に二人から教えてもらうことが多かったです。そういう中で、一緒にキャラクターを作っていけたのが良かったと思います。だから、すごく二人には感謝しています。ありがとうございます。

MC

ここからは、本作の内容についてもお聞きしていきたいと思います。
本作の公開からしばらく経ちましたが、公開前は話せなかった「本当はここがおすすめだった」「本当はここを観てほしい」といったシーンもあったと思います。今日は、少し内容に踏み込んで、終盤にかけてのシーンも含めてお二人に本当の意味での見どころシーンや、ネタバレなども含めて伝えることができなかったおすすめシーンをうかがいたいと思います。
ちなみに、私(日本テレビアナウンサー・田辺大智)も実は一部出演をしていて、二箇所ほど声を当てています。実際に、細田監督からもいろいろとアドバイスをいただきました。細田監督は、褒め上手なので、どんどんノッてしまいました。
お二人は、細田監督とのアフレコ中のコミュニケーションなどはいかがでしたか?

芦田さん

すごくコミュニケーションをとってくださいますよね?

岡田さん

どんな時でもしてくださるので、こちら側とすると、すごく安心した状態で監督とものづくりをしている時間だと感じていましたね。

MC

大変恐縮なんですが、私は二箇所ほど出演しているので、「ここかな?」というところをぜひこの後、チェックしていただければと思います。

岡田さん

めちゃくちゃそこを推しますね(笑)。

MC

芦田さんは、今だから言える、「ここに注目!おすすめシーン」を教えていただいてもよろしいでしょうか?

芦田さん

そうですね、おすすめシーンはたくさんあるんですが、ふと思いついたのは、スカーレットがだんだん聖と打ち解けていくというか、聖の優しさを受け入れられるようになっていく姿ですね。最初は突っぱねていたのに、「ありがとう」が言えるようになったり、相手のことを心配できるようになって、「こんなに変わっていくんだ!」と思ったのがすごく印象的でした。なので、ぜひ、そんなスカーレットの心の動きも観ていただけたらと思います。

岡田さん

それを言うとですね、僕も聖を演じていて、聖は理想主義者ではあるんですが、スカーレットと出会うことによって、スカーレットも変化するんですが、聖も変化しているんですよね。心情的な部分や、スカーレットに対しての思いなどの愛が、少しずつ溢れてくるのを感じました。終盤にかけて、僕自身も声を当てながら、感情が高ぶってくるところがあったので、スカーレットと聖の関係性は、改めてもう一度観てもらいたいし、注目してほしいと思いますね。

細田監督

まさにそういうところが、本作のポイントで、心の変化っていうのが、本作の大事なところかなと思います。
つまり、復讐から始まる物語なんですが、途中でスカーレットが聖と出会うことによって、「果たしてこのまま復讐の人生を過ごしていいのか?」「もっと別の生き方があるんじゃないか?」と気づくんです。それが本作の大きなポイントです。
要するに、「復讐を果たすというカタルシス」を、その目的をただ達成すれば良いんじゃないんです。そこに気づいて、その「復讐の連鎖」から逃れるには、「個人の気持ちの変化がそれを止めるのではないか?」ということを、非常にうまく芦田さんと岡田くんは表現してくださいました。
スカーレットがヒーローで、世界を救うとかではなくて、その心の変化によって、「自分の生き方をもう一回見つける」というところが、この物語の核の部分なんです。その部分を、お二人のリアリティのあるお芝居や説得力で、表現してくださったのがすごくうれしかったです。

芦田さん

監督にそう言っていただけてうれしいですね。

MC

ここからは、シーンの意味や意図などについてもお聞きできればと思います。
本作の中に、龍が様々なシーンで出てきましたが、「龍」は、どういったものを表しているのでしょうか? または、どういった存在なのでしょうか?

細田監督

いやいや、僕が答えを知っている訳じゃないんです。田辺アナは、どう思いましたか?

MC

私の考察になりますが、「死者の世界にいる絶対に抗えない運命」というか、既に決定付けられているものの中に、絶対的な存在として龍がいるんだと思いました。その上で、「自分たちがどう進んでいくか?」「どう振舞っていくか?」「どう立ち向かっていくか?」を問われているという…。いかがでしょうか?

細田監督

さすが、アドリブもお見事ですね。田辺アナが録音した部分の一箇所は、完全にアドリブなんです。もう、どこのシーンを演じたのか言っちゃったらどうですか?

MC

現代のシーンで、ニュースの音声が流れるんですが、その音声を、私が担当しています。

細田監督

宮益坂が最初に映るところのうしろでね、「今日は着るものを工夫しましょう」みたいなことを言ってくださったあの辺ですね。

MC

30テイクくらい録りました。

細田監督

でも、どのテイクもとっても良かったです。

MC

ありがとうございます。
岡田さん、どうでしょうか? 「このシーンの意味を聞いてみたい」とかありますでしょうか?

岡田さん

そんな急に…(苦笑)。
三人で舞台挨拶をしたりしたので、監督と過ごす時間が多くて、いろいろなことを聞いてきました。でも、まだ聞けていなかったことが確かにありますね。
映画とかドラマは、タイトルがすごく重要じゃないですか? 果てしなき場所って表現する場所はもちろんありますが、本作の「果てしなきスカーレット」というタイトルは、たくさん候補がある中で、これを選ばれたと思います。それは、どういうところで選ばれたのかな? ということをお聞きしたいです。

細田監督

その話は、岡田くんとはしていないかもしれないですね。
これは、観る人によってタイトルの意味が違って見えるんじゃないかと思います。例えば、本作を観た方が、「“果てしなき”ってどうしてついているんだろう?」って思うかもしれない。そうやって、受け取った気持ちによって意味合いは変化するだろうと思いました。つまり、“果てしなき”っていうのは、「まだまだ遠い」とも言えるし、「ずっと探求は続く」といったポジティブな意味にもとれます。逆に、「まだまだ遠いんだよ」と、ネガティブにも言える。「遠いけど頑張ろう」みたいなポジティブな感じにも取ることができる。だから、観ている人に、ポジティブかネガティブかのどちらだっていうことを印象付けるよりは、観た人が、このタイトルの意味を噛み締めてくれたら良いなと思います。岡田くんは“果てしなき”という言葉にどんな意味を感じます?

岡田さん

そんな返し方をされるとは…(笑)。
今、監督がおっしゃったように、“果てしなき”っていうのは、僕の感覚だと「ずっと追い続けられる場所」っていうか、プラスのイメージだったんです。だから、聖を演じることによって、スカーレットに対しての思いがどんどん膨らんでいくのを、このタイトルから受け取れたので、すごく素敵だなと思ってお聞きしたんです。

細田監督

観た人の中に「こういう方法だったら、また聖とスカーレットって会えるんじゃないですか?」って考えてくれた人が、何人もいるんです。そう考えると、“果てしなく”と言いながら、すごくポジティブに思える。でも、「やっぱりこの二人は会えないんだ」と思うと、すごく遠い気もするんですよ。だから、それはどっちでも良いと思うんです。どちらも一種の映画的な余韻があるんで、その人次第で感じてくだされば良いなって思います。

芦田さん

私も、いろいろと監督に質問をさせていただいたんですが、キャラバンのシーンがすごく好きなんです。でも、そのシーンの前に、盗賊が別の盗賊を襲っているシーンがあるじゃないですか。あれが、何だか「盛者必衰の理」というか、だんだん時代を下っていっている気がしたんです。その中でもキャラバンっていうささやかな暮らしをしながら、その中に幸せを見出している人もいる…。っていうあの雰囲気が、すごく好きだったんです。あの辺のことは、そんな風に観ても良いのでしょうか?

細田監督

もちろんです。
意外とって言うと変ですが、「あのシーンは、ちょっとホッとするシーンなので、すごく好きです」とか、「古代フラという踊りが出てくるので、あれが神様に向けてお祈りをしているような感じがして、すごく好きでした」と言ってくださる方もいます。そういうところも含めて、あのシーンは、どこか殺伐とした中にも、そうじゃない部分を発見することができるので、ホッとしてもらうシーンなのかもしれませんよね。
キャラバンの中に、年寄りたちが何人もいるんですが、一人一人すごく愛情を込めて描きましたが、芦田さんの中で印象に残っている人とか「あの人はどんな人?」とかありますか?

芦田さん

フワーってなるシーンが良いですよね。すごくかわいらしいというか、殺伐とした中でも、見つけようと思えば、意外と近くに小さな幸せって落ちているんだなというか…。そういえば、麦わら帽子をかぶっている方がいるじゃないですか? 砂漠の中での麦わら帽が、かわいくて、印象に残っています。

細田監督

フワーって言うシーンは、看護師さんに直接取材した時に、「お年寄りの方をケアをする時は、背中を拭いてあげることで気持ちも支えてあげたい」という思いを持っていると聞いたので、ぜひそれを劇中でやってみようと思ったんですよね。

MC

最後に芦田愛菜さんよりご挨拶をいただきます。

芦田さん

本作の中で、スカーレットはすごく混沌とした世界を、一生懸命生き抜こうとしています。その姿は、きっと現代に生きる私たちにも通ずるところがあるような気がしています。
皆さんの心の中にいる“スカーレット”を、抱きしめてあげられるような作品になっていると思います。なので、本作を観て温かい気持ちになって、年末・お正月を迎えていただけたらと思います。今日はありがとうございました。