「秒速5センチメートル」完成報告会
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完成報告会
「君の名は。」(2016年公開)、「天気の子」(2019年公開)、「すずめの戸締まり」(2022年公開)など、記録的な大ヒット作を生み出してきた新海誠の劇場アニメーションを実写映画化する「秒速5センチメートル」が、10月10日に公開となります。主人公・遠野貴樹の18年間にわたる人生の旅を、幼少期、高校生、社会人の3つの時代で描き出す本作。
8月27日にはTODAホール&カンファレンス東京で完成報告会が行われ、松村北斗さん、高畑充希さん、森七菜さん、上田悠斗さん、白山乃愛さん、宮﨑あおいさん、吉岡秀隆さん、奥山由之監督が出席しました。ついに完成を迎えた本作の感想や役にかける想いなどを明かしたこの日の模様を、詳しくレポートします!
松村北斗さん
遠野貴樹役
高畑充希さん
篠原明里役
森七菜さん
澄田花苗役
上田悠斗さん
幼少期の貴樹役
白山乃愛さん
幼少期の明里役
宮﨑あおいさん
輿水美鳥役
吉岡秀隆さん
小川龍一役
奥山由之監督
松村さん
今日は足をお運びいただき、本当にありがとうございます。奥山さんの手によって、素晴らしい作品が出来上がりました。ぜひ皆さんのお力を借りつつ、たくさんの方の元へお届けできればと思います。今日はよろしくお願いします。
高畑さん
こんなに美しい物語に参加できたことを、とても幸せに思っています。
森さん
「秒速5センチメートル」という偉大な作品の前で、この時代に新しい風が吹くことを楽しみにしてもらえるように今日を過ごせたらと思います。
上田さん
今日はすごく緊張しています。よろしくお願いします。
白山さん
今日はたくさんの方にお越しいただき、本当にうれしいです。少し緊張していますが、少しでもこの作品の良さを伝えられるように頑張りますので、よろしくお願いします。
宮﨑さん
本日はお集まりいただき、ありがとうございます。奥山組の仲間に入れていただけて、本当に幸せだと思っています。今日は短い時間ですが、よろしくお願いいたします。
吉岡さん
(上田さんと白山さんを和ませるように)とても緊張しています。(会場:笑) 毎日、暑いですねぇ。
こうやって奥山作品が生まれたことを、本当にうれしく思っています。
奥山監督
この作品は、皆さんが温かい気持ちで愛情を持って、丁寧に作られた映画だと思います。無事に完成して、こうして皆さんに報告できることをとてもうれしく思っています。
MC
先日初号試写を終えて、無事に完成いたしました。映画の完成おめでとうございます。
新海誠さんから、初号試写をご覧になった感想をいただいております。
【新海誠さんのコメント】
自分でも驚いたことに、泣きながら観ていた。
「秒速5センチメートル」を作っておいて良かったと、心から思えた。
MC
奥山監督にとって本作は、初めての大型長編商業映画作品となりました。完成した作品の手応えはいかがでしょうか。
奥山監督
皆さんが切実さと誠実さを持って、本当に真摯に向き合ってくださったので、これ以上の手応えはないだろうというぐらい自信を持って送り出せる作品になりました。先日、新海さんとお会いした時に「自分が一体、何に泣かされているのか分からなくなるような、まるで現象的な感動があった」とおっしゃっていました。言語化できないぐらい、心から湧き上がるような身体的な感動のある作品に仕上がったということだと感じ、すごく自信になりました。
MC
多くの原作ファンがいる作品ですが、松村さんもそのうちの一人だったとうかがっています。主人公の遠野貴樹を演じるという話を初めて聞いた時には、どのように受け止めましたか?
松村さん
まず企画書で知ったんですが、「恐ろしいな」という感情が一番に湧き上がってきました。十八年前に生まれて、ずっと愛され続けている新海さんが作った「秒速5センチメートル」という作品を、実写化する。「この作品の登場人物たちが生身の人間になるんだ」というワクワクする気持ちと、「得体の知れない恐怖」みたいなものが出てきました。もう一枚企画書をめくったら、「遠野貴樹役 松村北斗」と書いてありました。あの憧れていた遠野貴樹を「僕なんかがやるんだ」という恐怖が同時に襲ってきたというのが、最初の印象でした。でも、その後に奥山さんとお話しする時間をいただいて、これ以上にない信頼感と安心感が生まれました。ものすごく熱量のある会話が一時間、いや二時間くらいですかね? 結構時間をいただいて話をしました。だから、僕はこの方と一緒に、この恐ろしいチャレンジに参加させてほしいと思うことができました。そこから一緒に撮影の日々を過ごす中で、信頼が減る瞬間は一度もなかったので、あの話し合いはなんて意味のあるものだったんだろうと今、改めて思っています。
MC
初号試写の際は、新海さんと同じ回でご覧になったそうですが、完成した作品をご覧になった感想はいかがですか?
松村さん
今日はここに多くのキャストの方がいますが、全員が主人公といってもおかしくないぐらいの作品で、全員が特別なキャラクターです。いろいろな方が「自分が出ている作品は冷静に観られない」とよく言っていますが、本作は、自分が出演していないパートがいっぱいあった分、映画作品を普通に観た時のような感想が湧きました。僕は、本作を観た時にすごく良い映画だなと思いました。特に悠斗と乃愛ちゃんのパートでは、自分の失われた十代というか、その頃の感覚や懐かしさがフラッシュバックしてきました。僕も、新海さんも、なぜだか涙を流しているような時間もありました。なので、「すごく良い映画を観た」という思いがあります。観た後に、奥山さんや新海さんと話す時間もあったので、すごく素敵な初号試写でした。
MC
新海さんとは、どのような言葉を交わされましたか?
松村さん
新海さんが皆さんに発表している感想とは別に、僕自身にも感想をくれたんです。本作の撮影に入る前に、新海さんが「北斗くんの貴樹、観たいですね」と言ってくれたことが、チャレンジするきっかけの一つになっていました。だから、「観たかった貴樹は、どうだったんだろう」と、すごく不安でもありました。でも、新海さんが「貴樹がほっくん(松村さん)で本当に良かった」と言ってくれた時に、それまでにかけられていた期待や、怖かったハードルを新海さんが飛び越えさせてくれました。
MC
高畑さんは、貴樹がずっと想い続ける女性である明里を演じました。原作では大人になった明里はほとんど登場しませんが、実写化に際して明里役のオファーがあった時にはどのように受け止めましたか?
高畑さん
私ももちろん、新海さんの作品は拝見していました。明里は、貴樹目線で見ていたキャラクターだったので、女神というか、マドンナみたいな存在だという印象がありました。自分にお話が来た時は、「何かの間違いだろう」と思いました(苦笑)。だから、恐る恐る話し合いに参加させていただいて、台本をいただきました。その台本を見たら、作品へのリスペクトに溢れながらも、それぞれのキャラクターがたくましく、人間らしく浮かび上がっていて、明里さんに少し共感できる部分を見つけることができました。でも、本作に参加することに対しては、恐怖が八、九割くらいありました。ただ、聞いていた座組や、奥山さんとは十年ほど前からの知り合いで、写真を撮っていただいているし、同い年だし、その奥山さんのチャレンジに声をかけてもらえたうれしさが勝って、ぜひ参加したいと思いました。
MC
恐怖が八、九割くらいだったものが、減っていった段階はありますか?
高畑さん
今日まで減ってはないです(苦笑)。
でも、チームの熱量が最初から最後まで変わらないのを目の当たりにしていますし、新海さんが観て、とても喜んでくださったというお話を聞いて、自分自身に対してというよりは、自分自身がこのチームに入れたことが最高に良い選択だったと思っています。
MC
森さんは、貴樹を一途に想い続ける高校生の花苗を演じました。どのような気持ちで撮影に臨みましたか。
森さん
やっぱり、ドキドキしました。しかも、自分が撮影に参加した種子島は、独立したパートで、私たちは夏パートのみでした。だから、皆さんの空気感を掴むことができないまま、クランクインしました。ここで、自分がこれまでの空気を台無しにする可能性もあるかもしれないという恐怖を抱きながら臨みました。
でも、原作に対する愛と、自分が好きなものを体現できる喜び、お芝居できる喜びを大事にすれば、きっと新海さんもファンの方にも、喜んでもらえるものができるんじゃないかという希望を大事にしながら撮影をしていました。
MC
全体を通して、完成した作品をご覧になった感想はいかがでしたか?
森さん
私のパートだけしか知らないので、「全体的にこういう作品だったんだ」と思うところもあります。人の悩みや誰かに対する想いがそれぞれのパートでしっかりと描かれていて、観た人にとって薬になる作品だろうと予感できる作品になっていました。そこに参加できたことが喜びですし、早く皆さんに観ていただきたいと思います。
MC
上田さんは、およそ五百人のオーディションから、物語の中でも非常に重要なキャラクターである幼少期の貴樹役を射止めました。本作で初演技、しかも、もともと松村さんの大ファンだったとうかがっています。松村さんと同じ役を演じた感想を聞かせてください。
上田さん
すごく怖くて、演技が初めてなのに、「僕がやっても良いのかな」という不安と同時に、楽しいとか、この役をやれてうれしいという感情が込み上げてきました。
MC
松村さんは、上田さんがご自身の大ファンだというのは知っていましたか?
松村さん
僕たちは貴樹の幼少期と社会人時代を演じているので、もちろん同じシーンはありませんでした。でも、(上田さんが)現場にちょっと早く来てくれた時に、会えたことがありました。(上田さんをやさしく見つめながら)でも、あの時は緊張していたのかな? 「そんなに会話はしなくて良いです」みたいな雰囲気がありました。(登壇者の皆さん:笑)
上田さん
緊張していました。
松村さん
雑誌の取材などもいくつか一緒にやったんですが、「そういう場も慣れていないから」と、わざわざ見学に来てくれたこともありました。その後に、会話もたくさんしたんですが、その中でも一回も「好きです」という言葉は聞けていないですね…。(登壇者の皆さん&会場:笑) むしろ、「せっかく来てくれたんだから、椅子を横に持ってきて座ったら良いじゃない」と言うと「僕はここで結構です」って、そこそこ離れた位置にいました。(登壇者の皆さん&会場:笑)
高畑さん
好きすぎるんだ。
松村さん
好きすぎるからですか?
上田さん
(うなずく)。
松村さん
僕は、雑誌の取材などの際に、そんなに声量が大きい方ではないので、多分(自分の声が)聞こえていないと思うんですよね。あの時、聞こえていた?
上田さん
はい。
松村さん
あ、聞こえていたんだね。耳が良いんですね。(登壇者の皆さん&会場:笑)
MC
松村さんのことは、お好きですよね?
上田さん
はい、好きです。(淡々とした言い方に、登壇者の皆さん&会場:笑)
松村さん
その感じって、「お母さん、好きですか?」に対する答えと、同じ感じの「好きです」だよね。(登壇者の皆さん&会場:笑) でも、うれしいですね、聞けて良かったです。
MC
白山さんもおよそ五百人のオーディションを経て、幼少期の明里役を演じることになりました。どのような気持ちで撮影に臨みましたか?
白山さん
まずオーディションに受かって、明里を演じられることがとてもうれしかったです。オーディションで明里をやってみて、明里を演じたいという思いがすごく強くなっていました。オーディションで初めて会った奥山監督も、すごくやさしそうな雰囲気が溢れ出ていたので、ご一緒したいと思っていました。だから、受かった時は、本当にたくさん喜びました。
松村さん
本作は、冒頭を社会人パートから入って、そこからすぐに二人の幼少期パートに入るんですが、幼少期パートだけで良いぐらい、ものすごいドラマを含んでいます。多分、誰しもが(幼少期の淡い思い出など)思い当たるところがある話だと思います。いつまでも観ていたい物語であり、二人のお芝居が奥山さんと共鳴して、ものすごくすばらしい作品になっています。「この後に自分が出てくるんだ」と思うと、一瞬凹むぐらい本当にすばらしいお二人でした。
白山さん
ありがとうございます。
MC
宮﨑さんは、貴樹の通う種子島の高校教師・美鳥を演じました。大人になった貴樹と東京で再会して、その後の彼の人生に影響を与える人物でもあります。美鳥役演じてみていかがでしたか。
宮﨑さん
私は種子島の撮影が最初だったんですが、種子島が最高すぎて、(奥山監督と頷き合いながら)本当に楽しかったですよね。
奥山監督
楽しかったですね。
宮﨑さん
インする前に、ヘアメイクさんから「監督が、ちょっと色が黒くなってくれたらうれしい」と言っていますと聞いて、「もちろんです!」と言って、夏の間にちょっと日焼けをしてから種子島に向かいました。(森さんに笑顔を向けながら)すると森さんも、同じように真っ黒になっていました。二人とも肌がこんがりした感じが、種子島とすごくマッチしていたように思います。種子島での撮影によって、美鳥さんというキャラクターが自分にしっくりと来た感じがありました。種子島の自然に助けられ、癒やされながら、撮影が進んでいきました。
MC
完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
宮﨑さん
幼少期のお二人、そして高校生の妹たちが本当にかわいかったです。森さんから「好き」が溢れている感じが良かったです。どのシーンも「貴樹くん、好き!」みたいなものがダダ漏れで、それが姉としては本当に愛しかったです。愛が溢れている素敵な作品になったと思いました。
MC
吉岡さんは、科学館の館長・小川という原作には登場しない、オリジナルキャラクターを演じました。本作に参加するに至ったきっかけをお聞かせください。
吉岡さん
きっかけは、お仕事をいただいたので…。(登壇者の皆さん&会場:笑)
でも、そこ(「秒速5センチメートル」)に手をつけるんだということは、とても怖かったですね。僕自身も大好きな新海監督の作品で、それを実写でやるという恐怖、そこに自分も参加するのは、とても怖くもありました。でも、北斗くんと監督と初めて会った時に、北斗くんは、すでに貴樹が歳を取ってそこにいる感じでいてくれたので、これはもう極力邪魔をしないで、監督の繊細さと貴樹になっている北斗くんに任せれば良いと思いました。なので、極力邪魔をしないようにと心がけていました。
MC
完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
吉岡さん
観終わってすぐに新海監督がいらっしゃって、「ありがとうございました」と言ってくださいました。それは、「ようやく終わった」「新海作品ではなく、奥山作品になった」という瞬間だったと思います。そこにいられたことは、とてもうれしかったです。原作の方に「ありがとうございました」と言われることほど、うれしいことはないです。(登壇者の皆さん、頷く)
MC
奥山監督にうかがいます。原作アニメーションが公開されたのは、十八年前の2007年。新海さんが、三十三歳から三十四歳になる時に手掛けた作品です。当時とは価値観も大きく変わったこの令和の時代に、当時の新海さんと同じく三十四歳の奥山監督がなぜ実写映画として「秒速5センチメートル」を描こうと思われたのでしょうか。
奥山監督
時代も大きく変化していますが、幼少期の純真さや青春の高潔さ、大人になることの惑いなど、そういった普遍性が「秒速5センチメートル」という作品にはあると思います。それを描きたいと思っていました。三十代前後は不安や焦燥感など、精神的に人生のちょうど中間地点にいるような時代です。だからこそ、そういった貴樹の心情に僕もすごく寄り添えた気がしています。おそらく新海さんも、当時貴樹という人物に自分の焦燥感みたいなものを投影していたと思います。僕もそこに重ねるようにしながら描ける確信を持って、本作に向き合っていました。
MC
奥山監督を始め、若いスタッフが集まったとても温かい現場だったとうかがっています。昨年の夏から今年の春にかけて、四季をまたいで東京、種子島と全編オールロケで撮影された本作ですが、現場の雰囲気は、どのような感じでしたか。
松村さん
僕に不安なこと、うまくいかないことがたくさんあった時には、奥山さんは時間も、体力も惜しまず、たくさん言葉を尽くしてくれました。最終的には、話をしすぎて、お互いに「ごめんなさい、何を言ってのるか分からないです」みたいなところまで行きついてしまいました(笑)。お互いに言葉が多く、スタッフの皆さんが待っている状況でも「構いません」という熱量で向き合ってくれました。「どうなるか分からないけれど、実際にやってみましょう」と、やったみた後に駆け寄ってきて、「言葉にならなくても良いんですが、今のです」と太鼓判を押してくれたので、安心した状態で本番を迎えられました。こんなに熱量と体力のある監督はいないんじゃないかと思っています。(奥山監督がいることで)日に日に現場に行くことが安心になっていくと同時に、何て言うんですかね…何と言う言葉で、奥山さんを表現すれば良いんですかね…。
高畑さん
天然ですか? (登壇者の皆さん:笑)
松村さん
天然…。ちょっと変わっている(笑)。
奥山監督
そういえば、先ほど(イベントスタッフから)「正面を向いてください」というカンペを出されていました。そんなに僕、斜めになっていましたか?
松村さん
遠近感がおかしくなるくらい、斜めになっていました。
高畑さん
(奥山監督の面白さが)じわじわ、来る。
松村さん
(高畑さんの言葉に頷きながら)そう、面白くて、じわじわ来る。だから、現場のみんなが奥山さんを愛おしい目で見ているような現場でしたね。
宮﨑さんと食事を摂りながらしゃべるシーンで、別に盛り上がるようなシーンでも何でもないはずなんです。まあ、僕としては楽しくて乗っているシーンではあるんですが、急にどこか遠くから奥山さんの(声を張って)「よーし!良い感じだぞー!」という声が聞こえてきたんです。(登壇者の皆さん:笑) 奥山さんは、すごく盛り上がっているなと思いました。
奥山監督
そうなんですよ。一人だけ大声になっている時があるんです。なぜ、ああなっちゃうんですかね。(登壇者の皆さん:笑) 自分でもちょっと分からないんですが、「おー!」と思えるものが撮れていたからだと思います。なぜ今これが撮れているか分からない、奇跡的な瞬間で、お芝居とは到底思えなくて、お芝居とかそういう次元を超えた「そこで起きている出来事を目の当たりにしている」ような瞬間がたくさんあって、興奮したんですよね。それで、カットをかける前に、「めっちゃ良い!」みたいになってしまう。演じている側からしたら、「それはカットの後に言ってくれよ」となりますよね(笑)。
MC
高畑さん、どうですか?
松村さん
(奥山監督とは)一番、付き合いが長いですからね。
高畑さん
そんなに密な十年じゃなくて、要所要所で会っていたという感じだったので、本作を通してすごく仲良くなれたと勝手に思っています。
奥山監督
こちらこそ、ありがとうございます。準備期間にも、いろいろとお話をさせていただきました。
高畑さん
準備期間でもいっぱいお話をして、「ここが不安だ」と言うと、一緒に悩んでくれたので、私も安心できる時間がどんどん増えていきました。淡々とすごいことをする人なので「すごいな」と思って見ていると、感情の変化の段階が見えない方なので、急に絶叫したり、「やったー!」みたいなポジティブな反応が来たりします。良い意味ですよ(笑)。現場では(奥山監督の)急な感情の爆発がよく見ていたので、後半はあまり驚かなくなりました(笑)。
MC
感情の爆発が頻発していたんですか?
高畑さん
一日、一回くらい…。
奥山監督
僕は自覚できていないので、今初めて「そういう感じだったんだ」ということを知りました。
高畑さん
それが、じわじわと来て…(笑)。いつの間にか、奥山さんを見るために現場に行っているんじゃないかって思うくらい夢中になるほど好きになってしまいました(笑)。
MC
森さんは、種子島の撮影現場で印象に残ったエピソードはありますか?
森さん
もっぱら、サーフィンですね。クランクインは夕方だったので、朝からサーフィンに行って練習をしていました。宮﨑さんはサーフィンをするシーンはないんですが、(宮﨑さんと笑顔で顔を見合わせながら)一緒にサーフィンしました。マネージャーさんたちも置いて、遠くまで泳いだりしていました。
MC
宮崎さんは、サーフィンのご経験があるのでしょうか。
宮﨑さん
なかったんです。森さんが練習をされると聞いて、監督と打ち合わせをした時に「良いな、私もサーフィンしたいな」と思ったんです。そうしたら「宮﨑さんも練習されますか?」という連絡が来て、「します!」と言って、ついて行きました。森さんは、東京でも何回かやっていたようですが、私は一度だけやりました。でも、種子島に行ってからは、毎日、海に入っていました。ホテルから波が見えるので、「今日の波は良いなぁ」と思いながら、一人でオールを担いで海に入って行くような、本当に美鳥と同じような生活をしていました。
MC
宮﨑さんは種子島だけでなく、東京でも撮影がありました。
宮﨑さん
東京と種子島とでは、別の作品を撮っていたみたいな感じがありました。自分が知らないシーンもたくさんあるので、客観的に作品を観ることができました。
東京編で、貴樹くんと一緒のシーンの撮影の時に、私が立体パズルを持っていたんです。それを、現場のみんなで一緒にやる時間があったんですが、松村さんがすごくお上手でした。「この形を作りなさい」という課題を、瞬間的にパパッと触って完成させてしまうんです。みんなで「すごい!」と言いながら遊んでいました。
MC
松村さんは、立体パズルがお得意なんですか?
松村さん
いえ、初めて見ましたが、そういうのが好きなんです。すごく面白そうだと思って、(パズルをやっている様子をうかがう再現をしながら)最初はちょっと遠くから見ていたんですが、もうちょっと近づいて…と、やっているうちに(宮﨑さんが)「やります?」と声をかけてくれました(笑)。やってみたら、ものすごく楽しくて、好きになったので、もちろん買いました。ここでまた登場するのが奥山さんです。(登壇者の皆さん:笑)
奥山さんも、「何ですか?」「僕もこういうのが得意なんですよ」と、やり始めるんです。実際にすごく得意だったようで解くのが早いんですよ。問題のレベルが難しくなっていくと「これだ!」「ああ、違うか…」「これで完成だ!」「ああ、違うな…」と熱中して解き始めるんです。そうなると、誰も話しかけられないような状況になってしまうんです。でも、後ろから助監督さんが「もう撮影をしたいのにな」とジーッと見ているんです。それでも終わらないので、「もう撮影に入って、良いですか?」と、ちょっと叱られて、奥山さんが「じゃあ、やりますか…」となったこともありましたね。
奥山監督
本当に面白かったんですよ。プロフェッショナルが集まった現場ではあるんですが、「本番を撮りましょう」と撮影をしていたら、ヘッドホンからカチャカチャという音が聞こえてきたことがありました。演じているお二人のセリフを聞きながら、「この音、聞いたことあるな」と思っていました。多分、僕らがやっているのを見て「やりたい」と思ったスタッフさんが、手元でカチャカチャとパズルをやっていたんです。(登壇者の皆さん:笑)
松村さん
息抜きですね。あくまで休憩時間ですからね。
MC
上田さんと白山さんは撮影が始まる前に、奥山監督とレクリエーションをして仲を深めたと聞きました。
白山さん
最初は(奥山監督に)お芝居を見てもらうのかなと考えていたんですが、たくさん遊んでいただきました。鬼ごっことか、スタッフさんと一緒に犬とじゃれあったりして、すごく遊んでくださいました。そのおかげで、緊張がほぐれて、緊張しない環境を作ってくれました。そのおかげで楽しい気持ちに変われたんですが、(たくさん遊んでもらったことに戸惑いもある様子で)本当にたくさん遊んでもらって…。
奥山監督
さっきの話から流れからすると、遊んでばかりいたみたいになってしまう。(登壇者の皆さん:笑)
松村さん
現場の空気を作るのがものすごくうまいんですよ。そこには、悠斗もいたってことだもんね。
上田さん
はい。たくさん遊んだり…遊んでいることしか頭に残っていません。(登壇者の皆さん:笑) ずっと(奥山監督が)和やかになるようにしてくれました。
奥山監督
まずは、信頼関係が大事だと思っています。あと二人はもう忘れてしまったかもしれませんが、二人がオーディションの時に話してもらった映像から脚本にして、その言葉をもう一回同じように覚えて演じてもらった部分がありました。それは覚えている?(上田さんと白山さん、頷く) 二つの映像を並べると、言い方が微妙に違うんですよ。だから、「普段自分たちが、撮られていると気づかずに話す話し方はどういう特徴があるんだろう」と、一緒に考えたり、街で歩いている人たちを観察したりもしました。「あそこで友だち同士が話しているのを、脚本があって演じていると思って見てごらん。どう思う?」と聞いたら、「すごくうまいと思う」という答えが返ってきました。「何がうまいと思う?」と続けて聞くといった対話を積み重ねながら、お芝居の話に入っていきました。遊んでもいましたが、お芝居のこともちゃんとやっていました。
MC
吉岡さんは、松村さんと共演する時間が長かったと思います。吉岡さんからご覧になって、遠野貴樹を演じる松村さんはどのように映っていましたか?
吉岡さん
どういったら良いのかな…。僕の中では謎のままでいてほしいんです。テレビに映っているとつい観ちゃうんですが、僕にとっては北斗くんは、謎のままでいてほしいんです。
彼だけが持っているあの孤独感みたいなものを、現場でチラっと見ることがありました。何気ない会話をしていても、その語尾尻や、ふとした瞬間に、誰も見ていない遠くを見ているような瞬間がありました。
彼に出会えたことは財産でもあるし、松村さんのような存在感の人は、なかなかいないなと思います。トータルで言うと「良い奴だな」としか言えないんですが、そこも含めて「貴樹だな」という感じもしています。
僕や監督にも、そういう時があったのかもしれないです。でも、北斗くんはまだそれを大事に持っている時期なんだという感じがします。だから、あまり覗いたり、「どうなの?」と聞いてはいけない感じがします。知りたいのに、知りたくない、とても魅力的な人なので、僕の中では、大事にしたい人だなと感じています。
松村さん
そうやって、いろいろな姿を見たり、聞いたりしてくれていたんだと思うと、すごくうれしいです。
館長とプラネタリウムで話すシーンがあるんですが、お芝居ではありますが、そこで言葉を掛けてくれた声色を、僕はすごく覚えています。そのおかげでクリアになったこともたくさんあったので、良い思い出がたくさんあります。
吉岡さん
映画の中で、北斗くんと、貴樹くんが一緒になる瞬間があったんです。特に、たこ焼きを食べているところなんて、僕はもう身につまされるようでした。たこ焼きを食べているだけなんですが、泣けてくるんですよ。
演じているのか、本当の彼なのかは分からない感じがして、すごい映画になっているなと思いました。「彼の魅力は、こういうところなんだよ」と思いました。セリフでもない、彼の持つ空気感なのか、それを引き出せる監督のセンスなのか、今村カメラマンの力なのかは分からないですが、映画って良いなと思っていました。
MC
本作は、大人になってからもかつての思い出を大切にして生きている人の物語です。松村さんと高畑さんは、これからも大切にしていきたい思い出はありますか?
松村さん
僕が映画を好きになったタイミングは、岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」(2016年公開/主演:黒木華)を観て、「映画って面白い」と思ったことです。それから観ることにハマって、それが今日に繋がっています。その岩井監督の映画(「キリエのうた」2023年公開/主演:アイナ・ジ・エンド)に出演した時は、ものすごく不安でした。正解も分からないし、内容も相まって苦しい日々の連続でした。クランクアップした時に、帰り支度をしていたら、岩井監督が来てくれて、僕が不安に思っていたことや、葛藤していたことを「すばらしかった」と言ってくださいました。そして、岩井監督が自動販売機でビールを二本買って、「すばらしかった、乾杯しよう」と言ってもらって飲んだビールは、とてつもなく人生に染みています。今でもいろいろな作品に参加してうれしい気持ちになった時には思い出します。また、しんどい時やうまくいかない時には「またそういう瞬間、そういう奇跡に巡り会えるように頑張ろう」と何度も思い返す瞬間です。
高畑さん
私は小さい時から舞台に立つ人になりたくて、ミュージカルに憧れてこの世界に入りました。デビューした時から今まで、何度も立っている地元・大阪の劇場があるんですが、そこのエレベーターの匂いが忘れられません。別に、良い匂いとかではないんですが、楽屋から劇場に上がっていくエレベーターの匂いが、十四歳の時から今まで「ああ、この匂いだ」と毎回思うんです。思い出って頭の中に絵で残っていることもありますが、匂いや空気みたいなもので残っていることも結構多いと思っています。本作でも、そういうものを感じました。映画は匂いを感じられないですが、匂いで覚えていることもあるんじゃないかと思いました。
MC
「秒速5センチメートル」は、来月開催される釜山国際映画祭【オープンシネマ部門】に正式出品されることが決定しました。そして、原作人気が高いアジア全域での海外配給もすでに決定しています。日本での公開を前にして、世界から大きな注目を集めているということになります。
奥山監督
本当に光栄なことですし、緊張と高揚感が入り混じっています。釜山の【オープンシネマ部門】は屋外スクリーンで上映されるらしいので、「秒速5センチメートル」は春夏秋冬、四季折々を収めている作品なので、その映像が、釜山の風を感じる中でどのようにお客さんに届くのかと、すごく楽しみです。そして釜山には初めて参加するので、とてもうれしいです。
MC
最後に代表して、松村北斗さんからご挨拶をお願いいたします。
松村さん
改めて今日は足をお運びいただき、本当にありがとうございました。ものすごく切なくて、美しい恋の物語にどっぷり浸っていただきたいと思います。僕自身、原作に出会った時もそうですが、初号試写を観終わって外に出た時に、街がものすごく自分にとって特別な景色に見えたり、空を見れば何か風情を感じた気がしました。それはきっと「秒速5センチメートル」という世界や、キャラクターへの憧れからなるものだと思います。そうやって一歩街へ出たり、窓から外を見たり、携帯の画面を見た時に何かを感じてほしいです。
今は、落ち込むことも、喜ぶこともかなり簡単になってきてしまったがゆえに、誰もが得体の知れないモヤを抱えていると思います。そのモヤと対峙した時に、この映画はそっと寄り添ってくれて「悪くないかもな」「風情があるかもな」と、ちょっと力を貸してくれるような作品なんじゃないかと思います。そうやって、一人でも多くの方の手助けができたらうれしいなと思います。
ぜひ皆さんのお力を借りつつ、一人でも多くの方にこの作品が届くように、我々もこれから頑張っていきますので、どうぞ応援のほどをよろしくお願いします。本日はありがとうございました。(会場:拍手)