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川村元気監督「映画館で没入して楽しめる作品を作りました」
「百花」完成披露試写会舞台挨拶

2022年07月31日

「百花」完成披露試写会舞台挨拶

<左から、川村元気監督、長澤まさみさん、菅田将暉さん、原田美枝子さん、永瀬正敏さん>


映画プロデューサー・脚本家として「告白」(2010年公開/主演:松たか子)「悪人」(2010年公開/出演:妻夫木聡 深津絵里 他)「モテキ」(2011年公開/主演:森山未來)「君の名は。」(2016年公開/主演(声の出演):神木隆之介 白石萌音)を送り出してきた川村元気さんが、初めて長編映画の監督を務めた「百花」。川村監督自身の体験から誕生した、記憶と愛の物語を綴る小説をベースに、菅田将暉さんと原田美枝子さんをW主演に迎えて映像化しました。
同作の完成披露試写会が7月31日にイイノホールにて開催され、菅田将暉さん、原田美枝子さん、長澤まさみさん、永瀬正敏さん、川村元気監督が登壇しました。女性陣は花柄のワンピース姿で来場し、登壇者たちはざっくばらんなトークに花を咲かせました。こちらのイベントの様子を詳しくレポートします。


菅田将暉さん(葛西 泉役)

今日はよろしくお願いします。
原田美枝子さん(葛西百合子役)

初めて一般の方に観ていただくので緊張しております。どうぞ、映画を最後まで楽しんでください。
長澤まさみさん(葛西香織役)

本日はよろしくお願いいたします。
永瀬正敏さん(浅葉洋平役)

皆さん、ありがとうございます!
川村元気監督

本日は暑い中お越しいただきありがとうございます。最後まで楽しんでもらえたらと思います。

MC: まずは川村監督、本日は初めて一般のお客さんにこの作品を観てもらうことになります。初監督作のお披露目をする今のお気持ちをお聞かせください。

川村監督:
最初に、自分で小説を書くところから始めて、取材を経て七年ぐらいかけてここにたどり着きましたので感慨深いです。その七年の間に映像の見られ方が急激に変わりまして、インターネットで言えばYouTubeのようなもの、テレビ番組も配信サイトでいろいろなものが見られるようになりました。スマートフォンを見ることなく、映画館のスクリーンで集中して観ていただける醍醐味を体験してもらいたくて、没入して楽しめるように作ったつもりです。お楽しみいただければと思います。

MC: 大ヒット映画のプロデュースをしたことで業界では有名ですけれど、監督としてはいかがでしたか。

川村監督:
監督としては、とにかく新人だったので、後で話そうと思っていたんですけれど、原田さんから怒られたり、菅田さんには言うことを聞いてもらえなかったり、いろいろとつらい思い出もありました。

菅田さん:
(吹き出して笑う)。

MC: 菅田さんと原田さんは、初共演にして親子役を演じられました。

菅田さん:
対峙した時は、毎回どうなるか分からない現場でした。映画を観てもらうと分かりますが、僕は日々原田さんの人間力を受けていくので、すごく贅沢な時間でした。

原田さん:
撮影中は大変過ぎて、菅田さんがどういう方なのか見る余裕がまったくありませんでした。一年が経ちまして、先日一緒に取材を受けたところ、菅田さんは大きな人だなと感じました。そして、この人と仕事ができて良かったと思ったことが、一年後の感想です。

MC: 菅田さんは、原田さんの意外な一面に気づいたりしましたか。

菅田さん:
意外と先入観なく、カメラの前で......というスタートでした。とあるシーンで、カットがかかった瞬間に、僕の胸で号泣している原田さん、というのがあったんです。もちろん、そういうシーンではあったんですが、原田さんの嗚咽が止まらなくなって......気がついたら僕は、制御不能になっている原田さんの頭を撫でていました。大先輩の泣きじゃくる姿を、こんなピュアな状態を見せてもらえることが、ちょっと忘れられないです。

MC: 原田さん、その時のことは覚えていますか?

原田さん:
もちろんです。監督のオーケーが全然出なくて、どうしたら良いのか分からないぐらい本当に大変でした。最後に監督が「オーケー」と言ってくれた時に、泣くシーンではないんですが、涙が......。そうしたら菅田さんが、まるでお母さんが子どもをなだめるように「よしよし」って......。

菅田さん:
失礼しました。

原田さん:
でも、それはとっても良い、忘れられない思い出ですね。

MC: 役としての感情の高ぶりからですか?それとも、オーケーが出た喜びからですか?

原田さん:
全部ですね(笑)!

菅田さん:
闘い抜いた後の...ですね。

MC: 長澤さん、闘い抜いたということですが、やはり現場は大変でしたか。

長澤さん:
(菅田さんと原田さんの)お二人は、「本当に闘っている」という感じでした。私は本当に数日の参加だったので、割とのんきに現場にいたように思います。お二人は役柄に没頭していて、その姿に圧倒されました。

MC: 菅田さんとは、これまでも共演経験があったと思いますが、今回は夫婦役でした。夫としての菅田さんはいかがでしたか。

長澤さん:
三回目の共演ですが、これまで(ご一緒した撮影)は一日とか数日だったんです。そんなに同じシーンもなくて...でも、なんとなく時間を経て、菅田さんは初めてお会いした時よりも、すごくたくましくなっていました。「この人ならついていける!」という風格がありました。

MC: (長澤さんに)夫婦役としての準備はされましたか。

長澤さん:
この夫婦もちょっと変わっていて、私が演じた香織さんは、「こんな人がいるんだろうか」というぐらい優しくて、他人なんですが母と息子を繋いでいる役でした。そういう大変な役割の中にいるのに、いつも優しくいられるこの人は、「何なんだろう?」と思っていました。でも、監督からの「香織は本当に優しい人なので」という言葉を信じて、まっすぐに演じました。香織が泉のことを本当に好きなんだなという印象です。

菅田さん:
そうですよね。よく泉のことを好きになってくれていますよね。

長澤さん:
ですよね!

菅田さん:
だから、そこは長澤さん自身の包容力というか、愛情だと思います。現場でも、僕がジッと考えている時は、長澤さんが「ご飯行こうよ」など話しかけてくれました。そのおかげで夫婦の距離感が出たのだと思います。

MC: それでは永瀬さん、原田さんとの共演はいかがでしたか。

永瀬さん:
二、三回ご一緒したことはありましたが、これほど密接な関係の役柄は初めてでした。この「密接に」というのが大事です。毎日、すごく楽しかったです。

MC: 永瀬さんは、原田さんのことを「デビューする前から憧れていた」と耳にしました。

永瀬さん:
そうですね。デビュー前というか、僕はデビューしてから映画を観始めたので、拝見して好きだなと思う作品に、原田さんが出演されていました。原田さんは、お若い時から原案・プロデュースをされていましたよね。今の若い俳優たちも監督やプロデュースをしていますが、あの時代に、それをする人はまずいなかったと思います。それに素晴らしい監督ともお仕事をされてきて、そういう面での憧れがありました。

MC: 原田さん、永瀬さんから現場でそういうお話はありましたか。お話を聞いて、どう思われましたか。

原田さん:
嬉しいです、ありがとうございます。
現場では、そういうお話はありませんでした。そのシーンを成立させるために、百パーセント集中していますし、集中している時間が長かったんです。


MC: 撮影は闘いだったということで、菅田さんと原田さん、現場での忘れられないエピソードや印象に残っているシーンについて伺います。

菅田さん:
結構いっぱいありますね。大変だったシーン......。

MC: 諏訪湖で大変だったと伺いました。

菅田さん:
あぁ、諏訪湖、そうですね。言って良いのかなぁ?

MC: 花火のことは話しても良いそうです。

菅田さん:
花火のシーンがあるんですが、観てもらえれば分かるように本当の花火を打ち上げて撮影をしました。花火に合わせて、お芝居をしています。

MC: 最近の映像は、合成の花火が多いですよね。本作では本物の花火なんですね。

菅田さん:
花火の打ち上げ間隔もこのシーンまでは五秒に一発、このシーンからは四秒に一発という感じで決まっていました。そこはみんなでロジックを決めて、用意スタートで撮影をしたんです。いざ本番になると僕らもそんなことは覚えていないので、ぐちゃぐちゃになりながらなんとか撮る感じでした。

原田さん:
(花火とお芝居のタイミングが)うまく合うのかドキドキしましたし、全スタッフがそうだったと思います。花火って音がすごいじゃないですか。その音を感じながらお芝居をするのが大きな要素なので、目の前で打ち上がる花火を身体に感じながら、(お芝居が)できたことは良かったです。

MC: 撮影は一発オーケーでしたか。

川村監督:
悲しいかな、「予算上、三回までしかやれません」と言われて......。

菅田さん:
普通はそうですよね。

川村監督:
一発目でオーケーを出してくれてホッとしています。

MC: その諏訪湖で、湖に入るシーンは苦労されたそうですね。

菅田さん:
そのシーンのクライマックスでオーケーが出た時に、先ほどの原田さんの号泣がありまして......それぐらい大変でしたね。

原田さん:
はい。何度もやったんですが監督の要求するところになかなかたどり着けなくて、最後は気が遠くなりそうになっていました。だけど、夜空を見上げた時に、そこに溝口健二監督、黒澤明監督、増村保造監督が、この大変な現場を見守ってくれている気がして、そう思ったらちょっと勇気が出ました。その後にオーケーが出たので嬉しかったです。

MC: 初監督で、(大ベテランの)原田さんにダメ出しをするというのはお気持ち的に......。

川村監督:
(苦笑)ダメ出し......。原田さんは、ワンテイク目から毎回素晴らしいんです。ただ僕は、予想以上のものが出てくるのを、ただ待っている感じなんです。それで一度、「私はワンテイク目から全力をかけているの、何がダメなの?」と怒られました。

原田さん:
(笑)。

川村監督:
僕は、欲張りなので、意味が分からないところまでいってほしいという願いがあって、実際に百合子は夢うつつを行ったり来たりするキャラクターなので、ちょっと回路が切れるのを待っていたところがありました。湖のシーンも、原田さんが向こう岸から戻ってくるようなゆらぎみたいなものが、最後の最後に出ました。衣装の浴衣も七着用意したのですが、「これで使い切ったら(濡れるので)使えません」と言われて......。

菅田さん:
湖の中に入ると濡れてしまうので、(乾かさないといけないので)すぐに使えなくなるんです。

原田さん:
完成した作品を観て、川村監督がやろうとしていたのは、目に見えている以上のもの、心の奥にあるものが、俳優の中から浮上してくるのを待っていたんだなと分かりました。(監督が現場で粘ってくれて、出来上がったので)良かったなと思います。

MC: 若い監督との現場でうまくいかない時のお気持ちとして、「まだ初監督なのに」みたいな複雑な思いを抱くことは?

原田さん:
私は何十年とこの仕事をしていますが、初監督かとかはまったく関係ないです。同じ土壌に立ち、同じことをやろうとする、その同じ目線に立てるかどうかが大事だと思います。ですから監督の求めるものが何か、自分がどうしたら良いのか分からないと困ってしまうんです。川村監督は、理屈ではない面を要求されていたので、余計に分からなくなって、体力勝負のような気力勝負のような......でもそれがすごく良い経験になりました。

MC: 長澤さん、撮影のエピソードや思い出はありますか。

長澤さん:
私は、原田さんがピアノを弾く冒頭のシーンがすごく好きです。あのシーンだけで心を掴まれましたし、すべてを感じられたんです。
撮影現場でもピアノを練習されている姿を見ていて、原田さんから「これぐらい弾けるようになったんだよ」などと聞いていました。でき上がった作品では、ずっとピアノをたしなんできた人として映っていたので、本当に尊敬します。


MC: 原田さん、ピアノのご経験はどのぐらい?

原田さん:
子どもの頃にほんの少しオルガンを弾いたぐらいで、ほとんど経験はないです。ですから昨年、半年ぐらい習いました。(ピアノ教師の役ですから)かなりハードルが高かったです。

川村監督:
これは俳優の方からは怒られると思いますが、原田さんにはスタッフ経由で「同録(同時録音)します」とお伝えしました。この意味は、「原田さんが弾いている音を、そのまま映画の本編で使うので、そのレベルまでお願いします」ということです。

菅田さん:
同録の恐ろしさ! これが皆さんに伝わってほしいです。

川村監督:
音をそのまま使います。(プロの演奏音と)差し替えはしません!

原田さん:
でも、本編の音は違うんですよ(笑)。

川村監督:
映画の本編では同録とそうでないものと両方になっています。

MC: 永瀬さんの思い出やエピソードは何でしょうか。

永瀬さん:
今、(長澤さんに)言われちゃったと思って...。どこまでお話して良いのか分からないですけれど、(百合子さんに)ピアノを習いに行く役でして......僕もピアノの練習をしました。ある時、セットにいると原田さんが練習されているピアノの音色が聞こえました。あまりにお上手だったので、心底「ヤバい」と思いました。「原田さんに教えてもらえば良かった」と思いました。
そして、監督からいただいた台本の最初のページに書かれていたことですが、だいたい「ワンシーン、ワンカット」という撮り方をされました。それはミスがしにくいですし、一発一発が真剣勝負。すごくチャレンジングなことでしたけれど、僕はすごくありがたく思いました。


MC: この映画の特徴の一つとして長回しがあります。長回しの効果で、いろいろなことを訴えています。

菅田さん:
監督の狙っていたもの、普通に生活している中で、全然関係ないことを思い出すこと、興味を覚えること、そういったものがうまく映像で視覚的にも表現されていて、そこはうまくいっていました。(本編を観て)「こういうことになるんだ!」と新鮮でした。

MC: 最後に共通の質問です。この映画は、母と息子の忘れられないできごとが物語の重要な鍵になっています。そこで、皆さんのこれまでの人生の中で「忘れられない思い出やできごと」を教えてください。

菅田さん:
今、「母と息子の思い出」と聞いて、僕が思い出したのは、僕はお祖母ちゃんが作るオムレツが大好きで、お祖母ちゃんの家に行くと食べていたことです。ずーっと食べていましたが、今話そうとしているのは、食べ過ぎて吐いた話です。(会場:笑) それが小学校三年生ぐらいで、僕は英会話を習っていて、その日の授業で外国人の先生を前に、吐きそうになるのを我慢していたんですけれど、少し出ちゃって......。そしたら先生に「ゲットアウト(外に出なさい)!」と言われて、外で吐いたゲロが忘れられないなという思い出です。

MC: オムレツは嫌いになりました?

菅田さん:
そのオムレツは、今も大好きで、自分でも作れるようにレシピを教えてもらって作っています。

MC: 長澤さんは?

長澤さん:
(菅田さんを見て)菅田さんと初めて共演した時、京都ロケで夕方にキャストみんなでご飯を食べて、そのあとでカラオケに行きました。楽しかったな~。

菅田さん:
僕もね、その日のこと、ちょっと思い出しました。その次の日は、みんなでラーメンを食べに行ったんですよ。

長澤さん:
そうでしたね! でも、(お忍びのはずが)バレちゃってね!

菅田さん:
おすすめのラーメン屋に行ったんですが、人が集まり過ぎてしまって、食べるのを諦めて退散しました。だからみんなへこんでいて......そうしたら長澤さんが一発ギャグをして笑わせてくれました。

長澤さん:
ちょっと......それは言っちゃダメ!

菅田さん:
大丈夫、どんなギャグかは言わないから! というか言えないから!

MC: ここで、そのギャグをやって! とかは言いませんから大丈夫です。

菅田さん:
(きっぱり)させられないです! でも、そのギャグに救われました。

MC: では、カラオケでは何を歌ったのですか?

長澤さん:
懐メロですね。

菅田さん:
長澤さんは何でも歌いますよね。

MC: 原田さんの忘れられない思い出をお願いします。

原田さん:
この映画の撮影に入る前に、私は自分の母の短編ドキュメンタリーを撮りました。そのきっかけは、認知症になった母が、娘(=原田さん)の人生と自分の人生をすり替えて記憶していることにとても驚いたからです。母が入院して、ある時「私、十五歳の時から女優をやっているの」と自然に言ったんです。母は女優の経験はなくて、十五歳から女優をしていたのは私(=娘)のことなのです。どうして、そういうことを言ったのか、考えました。本当は何を考えていたのかを探るための短編映画にしました。私の母への思いや、(「百花」の物語のきっかけとなった)川村さんのお祖母ちゃんのお話など、女性は生きていく中でいろいろあります。生きていく中で何を思ってきたのかを想像しながら作った短編です。

MC: 短編ドキュメンタリー映画のタイトルは? それを私たちが観る方法はありますか?

原田さん:
タイトルは「女優 原田ヒサ子」で、8月20日からNetflixで日本をはじめ香港や台湾の海外も含めて配信されます。(尺は)25分です。

MC: では、「百花」を観て、そちらも観ると思いが深まりますね。

原田さん:
認知症を病気として捉えると悪いことばかりが情報として入ってきますけれど、お母さんという枠ではなくて、その人そのものを見つめるようにすると良いと思います。

MC: 永瀬さんの思い出は?

永瀬さん:
ここで「ピアノ」と言うべきでした。(少し間をあけて)ピアノです......ピアノ推しで!
(ピアノの練習で)すごく良い先生についていただきました。でも、原田さんの上達と比べると、僕は全然(上達しません)でした。 これをきっかけに原田さんは今もピアノの練習をされているんですよね?


原田さん:
そうなんです! ピアノが好きになって、同じ先生に今も教えてもらっています。

MC: 川村監督の思い出は?

川村監督:
僕は、やはり原田さんに怒られたことです。現場で何回かバトルがありましたが、僕は頑固で、原田さんも一本気なところがおありで、いまだに覚えているのは三回目のバトルです。原田さんがいらして「あなたがやりたいことは分かったわ。私は自分にとってもラストチャンスだと思って本気でやっているの。あなたも本気でやって」と言われたことです。そこまでの思いで取り組んでくださっているのだと感動しました。原田さんはラストチャンス、僕はファーストチャンス。これは本気でやらないといけないと、そこからは何度も相談することにして、何でも分かち合いました。

原田さん:
私は(良い意味で)、ケンカはして良いと思うんです。今の人は気持ちを飲み込んで(他者との衝突を)すり抜けてしまいがちですけれど、その相手と向き合えるのは人生の中でも一時で、そういう出会いは真剣に対峙したほうが良いと思います。

MC: 最後に、菅田さんと原田さんからご挨拶をお願いします。

原田さん:
今日はいろいろなことをお話しましたが、一度頭の中を空にして映画をご覧ください。

菅田さん:
そうですね、原田さんがおっしゃった通り、素直に入って観ていただけたらと思います。今日は、ありがとうございました。

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