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ワルシャワ国際映画祭、釜山国際映画祭正式出品作品
「浅田家!」日本外国特派員協会記者会見

2020年09月30日

「浅田家!」日本外国特派員協会記者会見

<左から、浅田政志さん、中野量太監督>


ユニークな家族写真で木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家・浅田政志さんの2冊の写真集とその家族の物語を映画化した「浅田家!」が9月30日、東京・丸の内の日本外国特派員協会にて上映されました。上映後の記者会見に中野量太監督と主人公のモデルとなった浅田さん本人が登壇。映画を観終えたばかりの外国人記者の質問に答えました。こちらの会見の模様をレポートいたします。


Q:浅田さんは、ご家族が映画で描かれ、ご自身を二宮和也さんが演じるということについてどのように感じましたか?

浅田さん:
僕の写真集が原案で映画になることも、二宮さんが僕を演じてくださることも、ただただ信じられないと言いますか...光栄としか言いようがないです。

Q:中野監督にとっては、本作のようなコメディタッチの作品は久しぶりですが、この企画に惹かれた理由は?

中野監督:
ずっと家族の映画を撮ってきました。本作のプロデューサーからコスプレしている家族の写真集を見せられて「これを映画にしてほしい」と言われたんですね。最初にそれを見て「なんだ?この家族は...」と思いました。 普通では絶対にないことなので、家族みんなで一つのものになりきって撮るには、そこには絶対にドラマがあるはずだと思ったんです。だから、「この家族は何だ?」という思いでまず惹かれました。 また、後半で描いている東日本大震災は、クリエイターとして「いつかは描かなきゃ」という思いがありました。でも、僕はどちらかというと明るい作品を撮ってきたので、どうしても東日本大震災を描くことができなかったんです。でも、浅田政志さんというカメラマンと、ユニークな家族に出会って、浅田さんとこの家族を通してなら、僕らしく東日本大震災のことも描けるんじゃないかと思って、やることを決めました。

Q:結末をハッピーエンドにすることは当初から決めていたんでしょうか? それとも作っていく中で決めたのでしょうか?

中野監督:
結論から言うと、最初からハッピーエンドにするつもりでした。東日本大震災を扱いながら、それをハッピーエンドにするっていうのは、なかなか難しいと思ったんです。でも、現地に取材に行くと、もちろん被災者の方々は心に傷を持っているけれど、僕らが思っているよりも前を向いていて、先に進もうとしていたんです。だから、「ハッピーエンドでもこの映画は成立するな」と思えたので、ああいう形にしました。

Q:映画の中に実際のエピソードを取り込んでいますが、面白いと思いつつも入れられなかったエピソードがあれば教えてください。

中野監督:
取材をするといろんな話が出てきて、最初のプロット(ストーリーの要約)を書いた時は、もっともっと長い話でした。削った中で、一つすごく面白いエピソードがありました。被災写真返却活動の中で、京大の天才学生がいました。その学生は、顔認証システムを通して、写真と自分(被災者)の顔を合わせたら、自分(被災者)の顔に似た写真が出てくるシステムを開発したんです。ある人が、その顔認証システムを使ってみたら、(たくさんの写真の中から自分と)一致する写真があったんですが、それは、その人のお父さんの若い頃の写真と一致していたそうです。そういった、いろいろなエピソードもあったんですが、尺の問題で泣く泣く切りました。

Q:浅田さんは映画の撮影でご自身の家族写真をもう一度再現していますが、最も楽しかった家族写真のシチュエーションは?

浅田さん:
映画を観ていただくと分かるんですが、「写真集の中の家族写真」と「映画の中の家族写真」はかなり似ているんですね。まるでコピーしているようで、離れて観ると分からないくらいの完成度です。最初は、そこまで似せて撮っていたわけではなかったんです。たまたま最初に撮った消防士の写真は、監督とお話をしつつ、出演者の皆さんを撮らせていただきました。(写真集を撮った)当時と同じ車で、同じ服で同じ場所で撮ったので、すごく似せて撮ることができるシチュエーションだったんですね。そこで、ちょっとずつ近づけていくうちに全く同じような写真になったんです。 その後も十数枚撮ったんですが、どんどん「今度も同じように撮りたい」という気持ちになっていきました。ほんの10センチ違うと(バランスが)違ってきてしまうので、楽しかったというより、「浅田家がここに現れたような良い写真を撮りたい」という思いで一生懸命やりました。

Q:浅田さん今回の経験を経て、写真家から映画監督に転身するようなモチベーションは湧き上がってはこなかったですか?

浅田さん:
今回、映画の撮影現場を見たんですが、すごく多くの方が関係しているんですね。僕が写真を撮ったり、写真集を作る時は、関わる人は10人もいなかったりします。でも、その十数倍の規模で、それをまとめ上げている監督の姿を見て、「僕では絶対にできないな」と思ったので、映画を作ることは今後も絶対にないだろうと素直に思いました(笑)。

Q:がれきの山のセットがリアルに見えたんですが、あれはリアルながれきですか? ロケーションも美しかったですが、ロケーションに関し、エピソードがあれば教えてください。

中野監督:
最初に言うと、がれきのシーンは(本物ではなく)再現しています。あれを東北で再現することは心情的にできないので、千葉県で再現しています。政志が、東北に着いて車から降りて見た光景...全てが津波にやられているところは全く何もない空き地にセットを組みました。ちょうど一軒、つぶす家があったので、その一軒分のがれきをもらって敷き詰めています。後ろのほうはCG処理ですが、手前は全て本物のがれきを使っています。 今回「海」が一つのキーワードになっています。政志が育った三重の海は「温かい海」、一方で東北の海は、津波で「たくさんの命を奪った海」で、どっちも「海」なんです。三重の海と東北の海は、実際に現地に行って撮っています。どちらの海もちゃんと「現地で撮らないといけない」という思いがありました。

Q:浅田さんは、現場で二宮さんの役者としての仕事を見てどのように感じましたか? 現場でのエピソードなどがあれば教えてください。

浅田さん:
撮影現場に行った時、二宮さんが演じられているところを間近で拝見しました。スーっと本番に臨まれるんですよね。僕のイメージでは台本をすごく読んだり、イメージを作られてから臨むのかと思っていたら、何気ない形で本番に入るので、その姿にまずびっくりしました。 エピソードは...(写真集の再現)写真を撮っている時に、(写真集を)再現しているので、ほんのちょっとでも違ったら同じにはならないんですよね。でも、カメラもレンズも出演者の皆さんの身長も違うので、どうしても同じにはならない。だから、どこかで無理が生じるんです。パソコンで(撮った写真を)見せつつ、写真集を見せて、僕は完璧だと思っても二宮さんは僕が見つけられない微調整をされていました。「足がもうちょっとこっちだな」とか、本当に細かいところまでやられるんだなと思いました。

Q:私(質問した記者)は昔から浅田さんの写真のファンなのですが、拝見すると被写体のエッセンスが伝わって、「共感できる写真」を撮られるなと感じます。(俳優など)プロを相手に撮る場合と、家族などのプロではない人々を撮る場合での違いはありますか?

浅田さん:
プロの方を撮るのはやはり緊張しますね(笑)。家族や、普段人前に出ない方を撮ることをずっと専門でやってきたので、「(写真を撮られるのは)恥ずかしいんだけど...」という方を盛り上げて、撮るという手法をずっとやってきました。でも、プロの方を撮るってなると逆にこちらが緊張しちゃう部分はありますね。

Q:写真のキャリアで影響を受けた写真家はいますか?

浅田さん:
植田正治さんという、鳥取の方で、日本最大の砂丘である鳥取砂丘でご自身の家族を撮られている方がいます。当時、東京が写真の中心だったんですが、鳥取に居続けて自分のスタイルで写真を撮り続けていました。「Ueda-cho(植田調)」(被写体をまるでオブジェのように配置した演出写真)というスタイルが海外でも通じるくらい、写真を見れば植田さんが撮ったと分かるんですね。そういった植田さんの生きざまが好きですし、尊敬しています。僕も「浅田調」と言われるくらい、頑張っていきたいなと思います。

中野監督:
僕も「中野調」と言われるような映画を撮っていこうと思っています(笑)。

Q:キャスティングについてお聞きします。素晴らしい出演陣で、"家族感"があって楽しそうに撮影されている感じがそのまま映し出されていますが、キャスティングの経緯などについてお聞かせください。

中野監督:
一番大切だったのは、やはり「浅田政志を誰がやるか?」でした。取材して、浅田さんとおしゃべりをして、浅田さんの生き方を聞いていると、ちょっといい加減だったり、だらしないところもあったりして...(笑)。でも、人が寄ってきて「何かしてくれるんじゃないか」と期待したり、愛される感じがあったんですね。そういう部分を持っている役者さんじゃないと、この浅田さんの味は出ないんじゃないかと思いました。二宮さんは飄々としているけれど、人に愛される"人たらし"の部分があるので、「これは浅田政志を演じさせたらすごいんじゃないか」と思って、二宮さんにお願いしました。 家族感をどう作ったかという話をしますと、四人の家族の撮影は、なりきり家族写真の撮影から入ったんですね。あの、なりきり写真を十数枚、四人が一生懸命、笑いながら、二日間で撮りました。つまり、朝から晩まで何回も着替えて、みんなが一つになって撮ることから始めたんですね。一つのことをやって、笑って、苦労して...撮り終えたころには家族の雰囲気が出ていました。それを、狙ってやりました。

Q:本作はワルシャワ国際映画祭でインターナショナルプレミア上映され、さらに釜山国際映画祭にも出品されます。果たして「中野調」が確立されるのか? 海外の観客に期待することを教えてください。

中野監督:
最初から、僕は日本だけではなく海外でも通じる映画を作れればと考えています。今回も、家族の話であり、東日本大震災の話であり、ちゃんと海外の方にも感じてもらえるように作ったつもりです。 今日は、各国の方が来てらっしゃると思うので、言ってみれば「小さな映画祭」のようで、「ここが"インターナショナルプレミア"なんじゃないか?」と皆さんの反応にドキドキしています。

記者席から拍手が沸き起こる。

中野監督:
Thank You(笑)!

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