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阿修羅のごとく
阿修羅のごとく 公開終了
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◆原作者“向田邦子”について

●向田邦子ふたたび―――
 昭和から平成へ―――没後22年、
 今ふたたび「向田邦子」の世界へ


 「時間ですよ」、「寺内貫太郎一家」、「あ・うん」、そして「阿修羅のごとく」。次々と話題作を書き飛ばす美人で独身の女流作家、向田邦子。売れっ子で超多忙の脚本家時代、彼女は東京・青山のマンションに猫と一緒に暮らしていました。その仕事場兼自宅のマンションには、仕事仲間の演出家、プロデューサー、俳優達がよく訪れ、彼女の手早くつくった、おいしい自慢の料理とお酒を囲んでにぎやかな時間を過ごしていたようです。仕事はとにかく現場泣かせの遅筆でしたが、ひとたびあがってくるホンは、その遅かったことへの恨みを忘れさせるほど面白くて、おおらかで逞しく、時にふてぶてしく、それでもしみじみと愛情をもてる人間たちがいきいきと描かれ、現場は一気に沸いたと思われます。
 好奇心旺盛で、大胆で、せっかちで、おいしい物好き。気に入ったとなったらとことん愛する。おしゃれで、楽しくてにぎやかなことが好きだった半面、自身は孤独を通していた彼女の恋愛は、ごく親しい人にもほとんど語られていませんでした。数々生み出した作品の中で、平凡な生活の中にささやかな幸せを見出した男女や、時に結ばれない男女の機微をきめ細かく描きながら、彼女の心のうちだけにずっとしまわれていた「秘めた恋」。この「秘めた恋」は、「阿修羅のごとく」をはじめ、その後の彼女の生み出した多数の作品にさまざまな「顔」をして現れていたことが、今、あらためて偲ばれます。

●向田邦子の愛したもの

 猫を愛し、食に情熱を傾け、旅をし、スタイルある上質な暮らしを楽しむ、生活の名人だった向田さん。彼女が愛したものたちは、映画「阿修羅のごとく」の中にも小道具として、あちこちに登場します。

▼南青山・菊家 水ようかん
 「新茶の頃に出始めて、団扇を仕舞う頃には姿を消す…」とエッセイにもある、夏だけの美味の水ようかん。口当たりよくさらりとした甘さ。

▼菊家 花氷
 和菓子のほかに、この花氷をはじめとする千菓子もお気に入りでした。彩りも鮮やかな花氷は、寒天を使った上品な甘さが人気の品。

▼日本橋・壽堂 黄金芋
 黄身入りのしっかりとした白あんを、肉柱の香りが効いた皮で包んで棒に差し、焼いたお菓子。煎茶にも番茶にも良く合う、と手軽なお茶うけとして愛用していました。

▼山形・梨屋 庄内小茄子漬
 小粒でまるい形が特徴の「民田なす」は山形の特産のひとつ。それを粕漬けや味噌、しょうゆなどで漬け込み、全部で5種類ある。中でも人気は、向田さんも気に入っていた辛子漬け。

▼京都・永楽屋 一と口椎茸
 乾燥させたどんこを独自のタレでこつこつと煮たもの。濃厚でまろやかなしょうゆ味の、京風佃煮。向田さんが欠かさず取り寄せていたお惣菜のひとつ。

▼萬古焼き
 お茶にはこだわっていた向田さん。愛用していたのは萬古焼きの急須。

▼中川一政の書
 書画骨董にも造詣がありました。現在は、かごしま近代文学館の資料館の中に寄贈されています。劇中では竹沢家の玄関に飾ってあります。

▼藤田嗣治のリトグラフ
 向田さんが一番気に入っていた「猫」。雑誌の取材などで写真を撮る場合は必ずこの前、と決まっていたくらいです。劇中では、竹沢家の居間に飾ってあります。


●秘めた恋

 美人で、独身で、猫と豪邸に暮らしている女流作家といえば、誰でもその恋の話を聞きたくなります。けれど、当時の雑誌やテレビのインタビューで向田さんが自分の恋について語るのは決まって、「男の話はしないことにしてるの。本当のこと言えないでしょう。嘘しか言わないなら黙ってた方がいいから」という答えでした。しかし死後20年近くたって、その“秘めた恋”の輪郭がうかがえる出来事が起こりました。それが、妹の和子さんが出版した著書『向田邦子の恋文』です。

 そこには、遺品として見つかった、向田邦子さんと恋人であったN氏の間の手紙、N氏の日記が記載されています。N氏は記録映画のカメラマンで、当時体をこわし、実家の離れにひとりで暮らしていました。一方、向田さんは駆け出しの作家として締切に追われる、眠る時間も削るような毎日の中、三日とあけずN氏のお宅を訪れ、夜更け近くに向田の家に帰ってゆきます。クリスマスも大晦日もお正月も、時間を作ってはN氏の元へ足しげく通う向田さんと、そんな彼女を気遣うN氏。二人の間には、深く強い絆と信頼がありました。しかし、この時N氏は妻子のある身であり、二人はひとつ屋根の下に暮らしたわけでもなく、籍にも入らず、世間の常識からは外れた関係でした。またそのころ、向田家においても、父親の浮気でほころびが生じ、家族はバラバラになりかけていました。そして、母の悩みや苦しみを知れば知るほど、向田さんは自分の恋を自分の中にしまいこんで、“秘め事”にしてしまったのです。

 ――N氏と生きた時間の中で、姉はどれだけの生きる糧をもらったことだろう。大きな影響と惜しみない言葉、言葉にならないものの中に姉は生きる糧の本質を見たのではないだろうか。そこに姉の“書く”原点があったように思う。(向田和子「向田邦子の恋文」新潮社刊より)

 「阿修羅のごとく」が生まれた背景にも、この“秘めた恋”の体験が大きな影響を及ぼし、その原点となったであろうことは想像に難くないのです。

<作品資料>
向田邦子の仕事
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