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原作者からの支持率100%の映画「累 -かさね-」
実写映画ブームについて、監督と原作者が語る
「累 -かさね-」ファンミ―ティング

2018年09月05日

「累 -かさね-」ファンミ―ティング

<左から、佐藤祐市監督、原作者 松浦だるまさん>


土屋太鳳×芳根京子をW主演に迎え、累計発行部数230万部突破の大人気コミックを「キサラギ」、「ストロベリーナイト」の佐藤祐市監督が映画化した「累 -かさね-」がいよいよ9月7日より公開! これに先立ち9月5日、ファンの希望にお応えしてのファンミーティングが開催され、原作者の松浦だるまさんと佐藤監督が登壇しました。自身の作品の実写化の出来栄えについて、先生の本音は...!? こちらのイベントの模様をレポートいたします!


松浦だるまさん(原作者)
よろしくお願いいたします。
佐藤祐市監督

(客席を見やり)近いですね。キスしたら顔変わっちゃいますね。

Twitterで募集した先生に聞きたい質問

Q:「累 -かさね-」は表現がとても繊細で、実写化が難しい作品だと思います。その中で松浦先生は、映画のどの描写を観てほしいと思いましたか?

松浦さん:
企画の段階では、こちらからこだわりを伝えずに、ほとんどお任せしようと考えていました。試写を観て、「これは観てほしいな」ってシーンはたくさんありました。いっぱいあり過ぎて、具体的な場面というよりも、どの場面にも「画面いっぱいに原作同様の累の想いが満ちているな」と思いました。原作をお読みになった方にも、まだ読まれていない方にも観ていただきたいと思いました。

佐藤監督:
ちょっと思い出したのですが、映画製作の初期段階で、まだ(原作の)連載が終わっていないから「映画で(原作の)どこまでの物語を作るか?」と練っているときに、先生が「累の物語をちゃんと見たい」とおっしゃっていたとプロデューサーから聞きました。

松浦さん:
覚えていないです(笑)。

佐藤監督:
「タイトル『累 -かさね-』だし、ちゃんと見たいよね」と、初期段階にそう思ったんです。累という女の子の生きざまを、映画をご覧になった皆さんがどう思われたのかは、わかりません。でも、僕はこの映画を"あそこ"で切ることになったけれど、彼女が修羅の道へのスタートを切ってこの映画は終わっていると思っています。これからも累という女の子は、映画の後も「原作通りに生きていくのか?」それとも「違う人生になるのか」皆さんの想像の中で楽しんでいただければいいと思います。そういえば、原作も先日やっと...。

松浦さん:
おかげさまで連載が終わりました。

佐藤監督:
これが9月7日に発売となる最終巻です!

松浦さん:
映画公開と同時に発売となるのでよろしくお願いします。

佐藤監督:
最終巻には、連載には載っていない部分があるんですよね。僕、読みました。無理やり読ませてもらいました。深かったです。皆さん、買いましょう!

松浦さん:
本当ですか? ありがとうございます。

佐藤監督:
ありがとうございました。お疲れ様でした。

松浦さん:
九ページの書き足しがあります!

Q:このシーンの再現率が高い! と感じたのはどのシーンでしたか?

松浦さん:
ちゃんとこの質問にお答えできる「答え」かどうか分からないですが、私は、映画に対して「原作の再現」を求めていません。他の方の手に渡って映画が作られるので、その方の創作性が見たいんです。再現ではなく「再構築」という言葉を使ってTwitterでも書きました。そういう意味で、今日、映画の公式Twitterがアップしてくれた、私のおススメシーンですが、まごうことなき芳根さんであり、土屋さんなんです。

佐藤監督:
先生がオススメとして挙げられたのは、どちらも車のシーンでしたね。土屋さんは、五カ月が経って「ひどいですよね」って外を見ながら言うシーン。芳根さんは、烏合と別れて車に飛び乗って羽生田に「どうだった?」と言われるシーンですね。車好きなんですか?

松浦さん:
そうではないのですが(笑)、どちらも車のシーンですね。土屋さんにも芳根さんにも、女優さんが役を演じられる上で当たり前かもしれないけれど、「累やニナではない人間が、どういう形で累やニナになってくれるのか?」ということを気にしていました。原作と違う顔の作りをしているし、デザインは漫画とは全然違うけれど、そのシーンを観た時に「累とニナだな」って思ったんです。「魂が同じ」とか言うとくさいけれど、「血液が同じ」というか、すごくいい「再構築をしていただいた」と思いました。試写を最初に観た段階で、まだ最終話を描いていなかったのですが、描く上ですごく刺激になりました。ありがとうございました。再現より再構築ということですね。

Q:監督に質問です。物語の大事な部分となる、キスで顔を入れ替えるシーンですが、土屋さんと芳根さんが実際にキスするし、土屋さんと横山裕さんもキスをします。そのシーンの演出について教えてください。

佐藤監督:
原作の先生がお描きになった第一巻の表紙の画を台本の表紙にお借りしました。上から重なって美しくキスしている画なんですが、当然、それをイメージしながら現場に行って、キスシーンをやってみました。でも、生身の人間がやると、「キスが美しい」ってお互いに相手を求め合っているからこそ美しいんですね。この物語の場合、日常の「おはよう、じゃあ変えようか?」って感じなので、色っぽくしようとすると変な芝居になっちゃったんです。逆に横山くんと土屋さんのキスシーンは、「一回やってみよう」と、やってもらったら、意外とサラッとしていたので「いや、もうちょっと行くでしょ? なんでこっちから行くの? こっちからじゃダメなの?」とか言うと、彼も「あぁ、そうですね。考えてみたら」と...これ以上言うと事務所が...(苦笑)。でも、横山くんに"相手を求めるキス"をやってくれと言ったら、「俺、こういうキスするんだ!」と、何か発見があったみたいです。これ、あとでエイター(関ジャニ∞のファン)のTwitterで総攻撃を食らわないでしょうか(笑)? 横山くんには「何か言いたいことある?」と聞いたら「監督にお任せします。全権委任です」と任されたので、きっと大丈夫かな?

松浦さん:
面白くて聞き入ってしまいますね(笑)。

MC:演出家の烏合を横山さんが演じたことに関しては、いかがでしたか?

松浦さん:
原作より若々しいですし、カッコいいなって思いました(笑)。

佐藤監督:
横山くんは、意外と若くはないんですがね、実際の年齢は...。肌が白いからね、本人も完成披露で言っていたけれど「肌が白くて照明さんがざわつく」から(笑)。

松浦さん:
美しい方だなって思いましたよ。

佐藤監督:
白いんです、白い! 僕、大丈夫かな(苦笑)?

Q:漫画原作の実写映画化について賛否がありますが、本作は原作者の先生が絶賛されています。絶賛の一番のポイントはどんなところですか?

松浦さん:
一番と言われると答えづらいのですが、企画の始めから試写までのプロセスで、信頼できたということがあります。基本はお任せというスタンスですが、どうしても譲れない部分もあるので、「それをどうお伝えしようか?」と思っていたのですが、上原プロデューサーの方から聞いてくださったんです。「曲げたくないこと」だったり、「美醜についてどう思うか?」など、脚本を練る上でこちらに逐一連絡してくださいました。「ちょっと気遣い過ぎじゃないか?」と思うくらい(笑)。企画段階でそうしたプロセスがあって、初号試写を観た時には「すごいものできたな」と思いました。最初に観た時、その時点で言葉にならず、今も一言で言い表せる映画じゃないです。私は累やニナをこういった形で描いていただけたこと、演じていただけたことをすごく幸せなことだと思っています。試写で最初に観た瞬間のことは、一生忘れられないです。

Q:先生が原稿を描く時に、よく音楽があったら教えてください。

松浦さん:
常に原稿作成中はいろんな方の音楽を聴いています。私は能天気な方なので、「累」のどシリアルな世界に入り込むのが大変な時があるんです。アシスタントさんから薦められて、Aimerさんの曲も聴いていたので、今回の映画の主題歌はAimerさんの曲というお話を聞いて、ビックリしました。そのアシスタントさんとハイタッチして万歳して喜びました。

佐藤監督:
先生のハイタッチは結構「うぁーい!」って感じに行くんですか(笑)? それともちょっと控えめに...?

松浦さん:
「うぁーい!」って行きますよ(笑)。

佐藤監督:
結構行くんですね。安心しました。

MC:実際にAimerさんの「Black Bird」を聴いて、いかがでしたか?

松浦さん:
鳥肌が立ちました。「黒い鳥」だからではないですが...ってすごくスベりましたね...(苦笑)。もう帰りたいです...。

佐藤監督:
大丈夫ですよ! みんな、味方ですから!

松浦さん:
これは三日くらい思い返すやつですね...。

佐藤監督:
恥はかき捨てです! いいんです! 僕は56歳まで、そうやって生きてきましたから。そういえば、主題歌は試写で初めて聴いたんですか?

松浦さん:
その前にいただいていました。試写の前に100回以上原稿を描きながら聴いていました。

佐藤監督:
「累 -かさね-」を描きながら? では最終巻に収められている話は「Black Bird」が染み入った先生から出てきたということですか?

松浦さん:
ホントにそうです。聴きながらやっていました。

佐藤監督:
最後、切ない感じの終わりですが...。

松浦さん:
「Black Bird」も「映画」も相互に影響されているというか、私の作品を基に映画化されているんですが、その映画に触発されて描いていることがありました。

佐藤監督:
累やニナを描いていて、土屋さんとか芳根さんのイメージが入っちゃうことがあるんですか?

松浦さん:
ありますね。表情を描いているとき、土屋さん、芳根さんが見えたりします。

佐藤監督:
そうなると「いかんいかん!」って?

松浦さん:
いや、むしろ「わーい!」って思いながら「やったね!」みたいな気持ちでした。

佐藤監督:
でも、作品のタッチが変わったりしないですか?

松浦さん:
自分にしかわからない程度だと思います。

佐藤監督:
勉強になります!

松浦さん:
こちらが勉強させてもらっています。

ここからは、会場にいらっしゃる皆さんからの質問。

Q:原作と違って映画では、累の過去、小学生の話を中盤に持ってきていますが、そうした時系列の変更の意図は?

佐藤監督:
シンプルに言うと、土屋さんと芳根さんのストーリーで始まると、子ども時代を回想で持ってきた方がいいだろうというのと、あのあたりのエピソードが正確に分かってくるのは、五カ月眠っていた後の物語が動いてくる部分なので、情報の見せ方として、映画ではこちらの方がいいのではないかという判断だと思います。脚本家の黒岩さんが勢いを持って、先生の原作に触発されて書いてくださったので、それを信じて撮りました。

Q:いろんな知識の集合でできている映画だと思いましたが、今までに学んだことや学問が影響しているんですか?

佐藤監督:
僕は学問というほど何かを掘り下げてやってきたわけではないです。28歳くらいかな? 助監督をやっていて、早めに結婚をしました。カミさんとサンフランシスコに、一度旅行に行ったんですが、現地で大地震があって、ベイブリッジが落ちたりして大変だったんです。ホテルにも入れず停電で三日くらいロウソクだったのでカミさんはブーブー言っていました。そこで、いろんな人に助けてもらった中で、「こんな人がいるんだ?」と感じることもありました。帰りの飛行機で隣の人が「あなたの仕事は人を見ることで、人を嫌いになったら、その仕事はできないよ」って片言の日本語で言われたのがすごく刺さったんです。 学問というより、いろんな人を見ることが好きだし、話すことが好きだし、苦しんでいる人間には「どうしたの?」ってお酒を飲みながら話を聞いたりします。人の多面性は、誰にもあるものだし、自分にもひどい一面があります。でも「それじゃダメだ」って戒めることもあるし、それでもやっぱり、欲望に駆られてとんでもないことをすることもあります。僕は「人をずっと好きでいた半生」だった気がしますね。今も若い芳根ちゃんとか土屋さんとか、「若さ」という「技術をも凌駕するエネルギーを持っている人たち」と接して、それを近くで感じて、刺激をもらって、「だったらこうしようよ」と、やっていたのが良かったのかな? と思います。勉強とかじゃなく人が好きで、飲み会でも隣の人の話をよく聞いています。

松浦さん:
私の場合、「累」を描く上では、いろいろあるけれど、具体的な演劇の話だと私は本当にちょっとしかやっていないんです。中学の演劇部で初めて舞台に立って、部長さんから少し教わったくらいです。メインでやってきたのは絵とか漫画です。もっと自分の中にある衝動的ものは、累にあるような劣等感だった気がしています。私は、他人よりも能力がないと小学校でも中学校でも思っていました。美大に入るのに三浪して、予備校に行くと若い子が多くて輝かんばかりで、しかも絵がうまい子がたくさんいました。劣等感で一人帰り道で泣いていました。大学も中退してその後、事務の仕事をするんですけれど、それも全然ダメでした。でも、周りの良い人たちに支えていただいて...でも逆に申し訳なくて毎日のように泣いていました。だから、今も信じられないというか、今は運がいいだけだと思っています。そういう思いでやってきたのが一番大きなバックグラウンドですかね。衝動の部分かもしれないです。

佐藤監督:
映画でも原作でも「劣等感」ってすごく大きいですよね。ニナもそうだけれど美人は美人で、何か足りなくて、ニナの場合は演技力が足りず、それが「ほしいという欲望」、それも劣等感。それがエネルギーになるし、新しいものを産む時、そういうエネルギーが必要になります。現場でも累にはマグマのようなエネルギーがあるんだって話をいつも土屋さんとしていて「心の中に、いつでも爆発できる何かを持ってやってないとダメだ」と彼女には言っていました。劣等感がエネルギーになって、それがうまく表現できる時はあるんですよね。

松浦さん:
事務でうまくできない時期に、ちょうど漫画投稿をしていて、できない自分の毎日がある中で「累 -かさね-」の企画を編集者に持って行きました。自信はないのに「累 -かさね-」が生まれたがっているというか...。

佐藤監督:
抑圧されるほど、それをバンっとぶち破るエネルギーが自然と溜まってくるものですよね。それが吐け口になって、人によっては酒とかに走ったりしちゃうけれど、何かドンと動いちゃう衝動ってあるからね。先生が漫画を封印して事務をやっていた時、何かが芽生えて、そのエネルギーが作品になっていったんだなって思います。

松浦さん:
それこそ「マグマのように!」

Q:映画では、羽生田さん(浅野忠信)が原作より気持ち悪い感じでしたが、作るにあたって何か先生からお話はありましたか?

松浦さん:
私は特に何も希望は出していないですね。

佐藤監督:
多分、先生が漫画の中で、前半羽生田という存在を置かれていた時に、羽生田にバランスというか、ちょっとした"かわいらしさ"を入れたくなったのではないかと思います。原作では累やニナに顎で使われるところが羽生田にはあるんですが、映画でやる上で、(累の母である名女優)淵透世の存在を強く感じている人物なのであまり顎で使われるよりも、ちゃんとマネージャーでいてくれたほうが、浮かなくていいんじゃないかなと思ったんです。漫画では、ページをめくると羽生田の「フー!」って怖い顔が出てきたりして、メリハリの付け方があるんだろうけれど、映画は映画のやり方で、それを浅野さんにやってもらいました。ただ、僕は現場で浅野さんのお芝居を見て、大爆笑していました。なぜなら、「業界にいるいる! こういう人!」という感じだったので。僕は羽生田さんのあれが大好きです。「どうしたんだよぉ、ニナ?」とか「だからぁ~」とか、「胡散臭いけど、こういう人いるなぁ」って大笑いしていました。

松浦さん:
胡散臭いですよね(笑)。裏がある感じを演技で出せるってすごいですね。

佐藤監督:
すごいですよ。でも、烏合には本気で頭を下げるところとか...あれは編集が切ろうとしたのを「切っちゃダメ! ここは残して」ってお願いしました。浅野忠信が頭を下げるところはあんまり見たことがないですからね。ハードなイメージの浅野忠信が、腰から曲げて「すみません」って言っているの楽しかったです。

MC:最後にメッセージをお願いいたします。

佐藤監督:
遅くまで本当にありがとうございました。明後日、いよいよ公開でドキドキしています。特に芳根さんと土屋さんの二人がパワーとエネルギーを持ってやっている映画になったので、一人でも多くの人に観てもらえたら嬉しいと心の底から思っています。僕もいろいろTVドラマもやっていますが、若い子のあそこまでのエネルギーに触れることは、あんまりないことなのでワクワクしながら撮影をしました。ぜひ皆さんのお力をお借りして広がってほしいと思っています。今日はありがとうございました。

松浦さん:
私は、すごく映画は素敵だと思っています。感動もしたし、自分の原作なのにすっかり観客の一員になっていました。でも、それは私の意見で、いろんな観方があって、満足いかない方がいてもしょうがないと思っています。ただ、良いと思っていただけたら、お願いですが、それをSNSやご友人、ご家族にお勧めいただけたら嬉しいと思っています。今日はありがとうございました。

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